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第二話 転生


※『アレクストリア』→『アクリア』

と略称しました。

俺が転生して早くも三年が経った。

俺の名前はアレス・レイグニル。両親の名前はカトレア・レイグニルとジェイド・レイグニル。家は裕福な方らしい。この世界はラヴィウェルと言って、魔法と剣の世界だ。世界は四つの大陸に分かれていて一つは俺達、人間が住む大陸。二つ目は獣人が大陸。三つ目は精霊が住む大陸。そして四つ目は魔族が住む大陸だ。



人間が住む大陸も二つに分かれている。魔法使いと共存を望む人達と、そうでない人達。共存を望まない人達を『アレクストリア』、略称は『アクリア』と呼び、望む人達は『ラピスリー』と呼んだ。俺が住んでる所は共存を望む、『ラピスリー』だ。



「あらあら、こんな所に居たの? アレスは絵本が好きねぇ~」

「うん、だいちゅき」



母親であるカトレアが帰ってきたらしい。カトレアはここ、『リュグネス』の学校の先生をしていて今は昼という事で戻って来たのだろう。それにしても母親は大変だな。



「うふふ。アレスは将来、立派な魔法使いになれそうね」

「まほうちゅかいになるっ」

「期待しているわ。それじゃあ、学校に戻るけど……大人しくお留守番よろしくね」

「は~い」



返事に満足したのか、名残惜しそうにギュッと抱きしめると行ってしまった。

魔法使い、それはこの世界にとって当たり前に存在する力だ。だが、魔法使いになれる人は限られている。生まれ持っての素質と魔力量、それに努力。まぁ、俺に素質があるかは分からないが。



「さて、誰も居なくなった所でやるか…」



俺はまだ三歳児。歩けはするが、ちゃんと喋れない。しかもこんな大人びてないだろう。家や外をウロウロしてカトレアやジェイドに注意されたら次から動きにくくなってしまう。



「……よしっ」



不思議とこの世界の言葉やこの世界の事、勉強してもないのに頭の中に知識として入っていた。それが多分、チートというやつだと思う。今カトレアの部屋の本棚にある魔法書を読んでいる最中だ。やっぱり一度読んだだけで呪文が頭に入ってくる。今ならできる気がする。



「……ディ・エルディオ・ウォーレン」



意識を集中させてさっき読んだばかりの呪文を唱える。この魔法は水属性だ。俺の手のひらには水で出来た球がある。しばらくすると消えた。



「ふぅ……魔法って結構簡単だな」



魔法の素質があると分かって少し嬉しい。今使った魔法は初級だ。次は上級を試してみよう! きっと出来る筈だ。



「ただいま、帰ったぞ」

「あ、ヤバっ」



父親の声が聞こえて俺は慌てて部屋を出る。階段の所で父親に見つかってしまった。



「アレス、歩けるようになったのはいい事だが階段は危険だ。気を付けるんだぞ」

「はい…」

「よし。いい子だ」



父さんに頭を撫でて貰ったのは何年ぶりだろう。まぁ、父親が違うけどただ頭撫でられただけで嬉しい。



「おとうさま、きょうはどんなおしごとしたのぉ?」

「ん? あはは、いつも通り王都に行って仕事だよ。父さんは暫く仕事があるから気を付けて遊ぶんだぞ」

「はぁい」



父さんは凄腕の剣士でよく王都に行っている。王国騎士団の団長らしい。

母さんも父さんも仕事で忙しく、俺は一人で家に居る事が多いがその分愛情を持って育ててくれている。それだけでも嬉しい。












ーーーーーー…




それから三年の月日が流れ、俺は六歳となっていた。



「アレス、遊ぼ~」

「うん!」



六歳ともなれば身体も心もだいぶ成長して外で遊ぶ事も出来る。同じ村の友達と毎日のように外で遊んだ。外に出るようになって分かった事もある。俺が住む村は『リュグネス』と言って約五十人が住む。学校やら病院やらの施設は揃っていてこの『リュグネス』の領主をしているのが父さん。俺の住む家というよりは屋敷かは広い。



「アレス。いつもみたいに秘密の特訓、見せて」

「いいよ! エリゼもやってみなよ。楽しいから」

「う、うん」



エリゼという少女は四歳の頃から一緒に遊んでる幼馴染み。まさか俺に幼馴染みが出来るなんて感動したものだ。エリゼは朱色の髪をリボンで後ろに結んでいる。明るく、元気で村での人気も高い。そんなエリゼと一緒に森深くまで歩いていく。秘密の特訓をするには人がいない所じゃないといけない。



「ここでいいかな。じゃあ、行くよエリゼ…………ディ・レボルト・リ・ドリバース」



三歳の時、魔法の素質があると分かってから俺は両親に見付からないように、ひっそりと魔法の練習をしていた。六歳になった今も変わらず、上級魔法の練習をエリゼとしている。

この魔法は上級の攻撃魔法。杖の変わりとなる木の枝を使って練習する。属性は雷で威力も結構、強い。



呪文を唱えると魔法陣が現れる。

よし、成功だ! やっぱり魔法は簡単だ。



「凄い! やったね、アレス」

「うん……あ、あれっ」



おかしい。

ちゃんと制御してる筈の魔法陣がグニャグニャと歪な形へと変わっていく。これは…失敗!?



「あ、アレス!?」

「どうしよ、エリゼ! 制御できないよっ」



歪な形となった魔法陣。これは明らかな失敗だ。俺としたことが、調子に乗って上級魔法を使うからこんな事になったんだ…。馬鹿だ…俺。



「待ってて、アレス。ディ・エルディオ・ウォーレン!」

「エリゼ?」



エリゼは木の枝を拾うと呪文を唱えた。魔法陣が展開して勢いよく水が飛び出す。向かう先は歪な魔法陣。そして気が付くとエリゼは俺を突き飛ばしていた。次の瞬間。




ーーーーーーバァーーン




物凄い爆発が起こった。

耳を劈くような爆音と雨のように降り落ちる水魔法。上半身を起こすと頭にズキッという痛みが走った。どうやら突き飛ばされた時に頭を打ったらしい。それよりエリゼは!

辺りを見回すと倒れているエリゼを見付けた。俺は急いで駆け寄る。



「…エリゼ? あ、どうしよ! 返事してよ……ねぇ、エリゼ!?」



エリゼは傷だらけで倒れていた。気を失ってるだけか、それとも……。

嫌だ、嫌だ! これ以上、また俺の大切な人が死ぬ所なんか見たくないのに…。



「…俺が調子に乗ったから………ごめん、エリゼ…」

「あーあ。君、やっちゃったね」

「………え?」



第三者の声が聞こえて辺りを見渡す、が誰もいない。



「クスクス。そっちじゃないよ……上さ、上」

「え!」



言われて上を向くと赤いフードを被った人が木の上に立っていた。顔が少しだけ見える…でもどこかで?



「そのエリゼという子、もう助からないよ」

「な……」



まるで自分が死の宣告を受けたかのようなショックが身体を貫く感じがした。大切な幼馴染みで、大切な存在のエリゼ…。俺の勝手でエリゼが死ぬなんて……そんな事は許されない。



「…でも助ける方法はあるよ」

「ほ、ほんと?」

「…クスクス。ただ、悪魔と契約するなら…ね」




俺が出会った悪魔は狂ったようにケタケタと笑う。



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