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プロローグ




異世界。

多分それは誰もが一度、行きたいと思う場所である。でもこの場所に行くにはかなり難しい………筈だった。でもなんだよこれ…。



「おやおや〜? 君、暗いよ〜」

「…………」



なんで目の前のおっさんは踊ってる? しかも頭には輪っか、白の服。これじゃまるで神様みたいじゃないか!!

いや、落ち着け俺。これは夢だ、夢。そう、夢に違いない。俺は自分の頬を思いっきりつねってみる。



「いででででっ!?………ゆ、夢じゃ…ない?」

「あははは! 君、面白いねぇ」

「…っ、ここはどこだ!」

「ん〜? ここは天国、君は死んだんだよ」



…し、死んだ!?

そう…だ。確か俺は、トラックに轢かれて………そっか。死んだのか…。



「困るなぁ、勝手に死なれちゃ」

「…は?」

「君の寿命は決まってる訳。あと八十年は生きれたんだよ〜」

「……そ、そんな長生き出来たのか…」

「そう、それなのに君は死んだ。神様は非常〜〜〜〜に困るのです」



…でもあんな事を抱えて生きるよりは死んで忘れた方が楽に決まってる。



「君には罰を与えなくてはいけないね〜」

「え…ば、罰?」



神様はうーんと唸っている。

というか罰ってなんだよ。トイレ掃除? それともゴミ広い? 出来れば簡単なやつがいい。



「うん、決めた。君には異世界へ転生してもらおう」

「…転生!?」

「ちょうどさっき寿命を終えて亡くなった老人が来たから、一人空いたんだ」

「ちょっ、その老人に変わって俺が転生すんのかよ!」

「そう。それが罰だよ」



異世界へ行けるのは嬉しいけど、転生って……不安だ。



「じゃ、早速だけど行って貰おうかな」

「ちょい待ち!!」

「ん〜?」

「まだ心の準備が出来てない、というか。怖いというか、だから待ってくれ」

「ふふふーん……ダーーメ。それ〜」



言い返す前に神様が杖を人振りした。俺はと言うと、何の抵抗も出来ずに黒い穴、ブラックホールみたいなのに吸い込まれた。










俺がなんで死んだか、と言うとそれは数時間に遡る。










カチカチカチカチ…



キーボードを叩く音が部屋中に響く。もう朝だというのに部屋の中は暗い。そりゃそうだ。カーテンは閉め、電気も消してるのだから。不登校になって二週間。両親は俺に関心がない為、無視。よって親にガミガミ言われる事なく不登校三昧なのだ。



「……ん、このアニメ…打ち切りなのか…」



一日の大半はずっとパソコンと向かい合っている。あとは、飯食って風呂入って寝るの繰り返し。つまらない人生を送っている。



「るっぴーさんからチャットか……『なになに、こんな短時間でよくクリア出来ましたね!』…か」



るっぴーさんとはネットで知り合った人だ。あ、実際に会った事はない。チャットで話をしてるだけで…。



「…いや、暇なもんで…カッコ、わら」



独り言を言いながらパソコンに打っていく。そういや、るっぴーさんこの時間から居るって事は…不登校かフリーターか?



「おっ…返信速いな。なになに、『こんな時間から家ですか? あ、もしかして不登校だったり?』…」



何だコイツ!

お互い、性別も年齢も知らないからって言って悪い事とかあるだろっ!



適当に返事を返してパソコンの電源を落とす。パソコンの光が消えてより真っ暗になった部屋の中で俺はまだ幸せだった頃の事を思い出していた。











高校一年生。

今年、俺は近所の高校に入学した。成績は平凡だが、友達はいっぱいできた。あぁ、この時はまだ幸せだったな。



あっという間に月日が流れ、半年が経つと俺のクラスではイジメが流行っていた。大人しくて優しい川口さんという女子がイジメの標的となった。



次第にエスカレートするイジメに耐えきれず、俺は言ってしまった。「もう止めろ」と。なんで言ってしまったのか分からない。ただ、イジメを止めてヒーローになりたかっただけかもしれない。



俺の一言でイジメは止まり、川口さんと仲良くなった。心を開いてくれたのか、よく笑うようになった。そして一年が経って俺達は二年になる。川口さんとは違うクラスになってしまったがもうイジメはないだろう、と勝手に自己完結してた。



俺が気付いた時には川口さんはまたボロボロになっていた。去年より酷いイジメになっているのは明白だった。



屋上、一人佇む川口さんにそっと声を掛けた。川口さんはゆっくりと振り向く…と、涙を流したまま川口さんは「…これ以上、踏み込まないで。余計な事言わないで!」 「もう疲れたよ…さよなら」。それが彼女の最期だった。俺があの時、止めろと言わなければ彼女は死なずに済んだだろうか?



「……これ以上踏み込まないで…か。あ、もう昼か!」



どうやら眠ってたらしい。昔の嫌な夢のせいで後味が悪い。しかも気付けばお昼だ。

俺は簡単な服に着替えてカバンを持ち、警戒しながら部屋を出る。



「……うわ、あっつー」



季節は七月。まだ夏には早いというのに暑い。これは速く済ませた方が懸命だな。近所のコンビニに早足で向かった。







ーーーーーーーーーー

ーーーーー



「ふぅ。早いとこさっさと帰るか…」

「さ、沙耶ちゃん!?」



悲鳴にも似た声が側で聞こえた。すぐに状況は確認できた。沙耶という子が横断歩道の真ん中で転んでいる。母親らしき人が行こうとするもどうやら妊婦でしかもお腹押さえて苦しそうだ。



「さ、沙耶ちゃ……うぅ…」

「痛いよ〜ぉ〜」



しかも運悪くトラックがきた!

ヤバイぞ! そう思うと勝手に身体が動いた。少女の元に走りお母さんに渡す。よし。



「…おいおい、マジかよ」



よく見るとトラックの運転手は眠っていた。居眠り運転だ。トラックは真っ直ぐこちらに向かっている。俺はどうなっていい、でもこの親子は!!



「危ないっ!」



素早く親子を突き飛ばす。と、次の瞬間俺の身体は宙を舞っていた。



意識が遠のく…。

俺は……やっと死ねるんだ。










長い闇を抜けてやっと光が見えた。やっと光が見えたが、ここはどこだ??



「よく頑張ったわね、元気な男の子ですよ〜」

「あ…やっと…」

「よく頑張ったな、カトレア」



あれ? これは……これが異世界転生という奴か。記憶を受け継いじゃってる訳だが、いいのかこれ?



「名前はもう決まっているの。貴方の名前はアレスよ」

「ふむ。よろしくな、アレス」



アレス。

悪くない名前だ。それにしてもこの人達が俺の両親か。優しそうだ。



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