8 日常パート
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「みなさんは、先ほどの犯行声明をどうみますか?」
職員室のようなMSS本部事務所。そこに、少年2人、女性1人、性別不明1人がそれぞれ異性の服装で、自分にあてがわれた事務机に向かっている。
「どうって言われてもねぇ。あたいらよりも、璃緒たちの方が付き合い長いんだから」
「そうそう。オレと時雨は、幽菜さんと三ヶ月間だけの付き合いなんだから」
璃緒が聞きたかったことの本質をズバリ見抜き自分の意見を言う、中性的な服装をした時雨。
「そ、そ言うことでは無いですわ。あたくしが言いたいのは、今後どう対応していくかということですわ」
驚きを抑えつつ私情を排して、どういった風に仕事を進めるべきかと改めて聞きなおす。
「どうって言われても……ぼく達の仕事は魔法に関するトラブルを解決する…………だから……」
「――だから、テロ首謀者の幽奈を捕まえるのか? 今回の犯行声明は明らかに魔法が使われていたぞ」
「そ、それは…………だから、えっと、その」
リュウヤに台詞の後半部分を言われ、それが余計に自分が言おうとしていた事の意味を自覚させられた。
恩人である幽奈さんが魔法テロリストだとは思いたくない。
「まあ、とりあえず、直接本人に聞けばいいんじゃない?」
何でもないことのように、テキトーな口調で言う時雨。
「それですわ!」
「それだよ!」
千秋と璃緒が同時に立ち上がり、叫ぶ。
「たった今、方針が決まりましたわ。あたくしたちは、長幽奈さんを捜索し、理由を聞きますわ」
「本格的な対応は、それからってことか」
「ねーねー決まったんなら、ご飯食べに行こうよー」
「そうですわね――」
ちらりと壁に掛かっている時計を確認し、言葉を続ける璃緒。
「――では、少し早めの夕食といたしましょう」
「今日は、どこで食べるの?」
「あたいは、カレーが食べたいかな」
「ならそれでいいんじゃない?」
時雨が食べたいものをいい、それに賛成という意思を乗せたうえで、璃緒と千秋に確認を取るリュウヤ。
「千秋さんは、何か要望がありますか? なければカレーでいきたいと思いますわ」
「う~ん。うん、カレーでいいよ」
少し考えてからの気のない返答。
三日連続で三食カレーだよ。『きっちんカレー』ならパスタもあるし、まあいいかな。
全員の意見が出揃ったところで、
「では、参りましょう」
璃緒が言い、皆席から腰を上げる。