14 日常パート 作戦会議
「ごめんなさい」
深々と頭を下げる璃緒の前には、腕を組んだ時雨がいる。
「もう、いいよ。次からは気をつけてよね」
「さて、仲直りも済んだところで、作戦会議だ。各自報告を頼む」
リュウヤが会議を取り仕切る。
「時系列的にまずは、あたくしからですわね。5点ありますわ」
脳内のコルクボードに貼り付けていたメモを読み上げていく。
1なぜ、魔法鍵がレジストされたのか。
2なぜ、子供を誘拐するのか。誘拐された子供たちはどこにいるのか。
3この技術力はどこから流出したものなのか。
4どうやって現代日本でアサルトライフルを入手したのか。
5機械鎧はまるで、千秋さんのミシンのようなのはなぜか。
「1は今回の事件にはドワーフが関わっている可能性が高い。推測だがドワーフ達の技術だろう。もしくは機械鎧の中にいた魔法使いがレジストしたからか」
「懸念事項345番は私から報告します。機械鎧の武装は全て自衛隊駐屯地から奪われたものと見て間違いがありません。璃緒さんと対峙した機械鎧が残した薬莢並びに弾丸の旋状痕からも同じものとの報告がありました。また、戦術ミシンは自衛隊の技官が作成したものであります。そのため、機械鎧と共通項が多く存在していると推測されます」
「2はあたいから。狙われている子供は魔法使いか……」
言葉を濁し、言い淀んだ上で時雨は続ける。
「魔女狩りの被害にあった家族」
「それは意図的に魔法使いを狙って誘拐しているということかしら。だとしたら、住宅街であたくしや千秋さんへ狙いが変わったのも納得がいきますわ」
「だが、何のた――ああ、部品にするためか」
眉間に皺を寄せながらリュウヤから呪詛にも等しい言葉が吐き出される。機械鎧の中身は全ての知識を持っていない魔法使いだった。
「ドワーフの考えそうな下衆なことですわね」
「質問の許可を願います」
「相楽曹長どうぞ」
「ドワーフとは一体何なのですか? 魔法使いの世界の犯罪組織でしょうか?」
「いいや、種族だ。魔法使い以外にも、ドワーフ、ホビットなど人の姿をしつつ、魔法を使えない劣等種族がいるんだ」
「ドワーフ達は魔法を使えない代わりに魔道具の製作に長けていますわ」
「それは差別なのでは、ないのですか?」
4人の目が大きく見開き、固まる。まさかそんなことを指摘されるとは思わなかったのだ。
ゆっくりと息を吐き、千秋が勤めて冷静に話していく。
「僕たちがやってきたことを考えるとそうかもしれないね。できないことを引き合いに出して見下されるのも、できることを羨まれて攻撃されるのもどちらもいい気持ちはしないものね」
魔法使いの歴史の中で初めて起こった小さな小さな意識の変革。
重い沈思の空気が流れたのをリュウヤの一声が洗い流す。
「さて、本題から離れた。今は道徳を考えるよりも先に助けられるものを助け出す方が先決だ」
「しかし、まだ誘拐された方々がどこにいるのかが分かっておりませんわ」
「我に策ありだ」
不敵な笑みを浮かべリュウヤは、一挺の拳銃――絶対命中の魔道具を机上に置いた。
「うわぁ」
左胸を押さえた千秋から憎悪の声が漏れ出す。散々胸部に銃弾を叩き込まれた時の痛みはまだ記憶に新しい。
「まさかとは思いますが――」
「ああ、そのまさかだ。悪いが千秋には弾丸のぬいぐるみを作ってもらいたい」
「へ?」
「さて、璃緒からの報告は以上かな? では次は――」
「僕からは一つ。僕が対峙した機械鎧が異様な強さを誇っていたから、対処を考えておきたいかな。璃緒が一撃で倒しちゃったけど」
「おそらくですが、あの機械鎧は魔眼と魔道具の合わせ技を使っていたものと推察されますわ。変態着せ替え狂の風魔の言が正しければ、千里眼の持ち主も拉致されている可能性が高いですわ。機械鎧の小手はドワーフ製でしたから、おそらく視認したものを精密に掴み操作ができる魔道具かと思われますわ。ですので魔眼保持者をこちらで確保している以上は大丈夫だと考えられますわ」
「全てを見切る目と2万発の砲弾すら叩き落とせる小手に機械仕掛けのパワー……でありますか。コンボがエグいであります」
「さて、議題がなければ作戦を進めたい。そうだな、作戦名【バレット】でいこう。弾丸のように一点突破で解決に当たろうではないか」




