3 戦闘パート
3
Magic Secret Service。
通称MSS。
俗称魔法少女’s。
世間から魔法少女と呼ばれている少年2人。千秋と璃緒は警察から出動要請を受けていた。
「璃緒ッ!」
千秋の呼びかけに答えるはずの璃緒は、すでに駆け出しており、屋上の周りを囲うフェンスを上品に飛び越えていた。
「早ッ!」
出遅れた千秋も現場に急行するべく、細剣と見間違いそうなサイズの針型の魔法杖――お尻の部分に夕焼け色の宝玉が付いている――を幻素から実体化させる。
幻素。それは、魔法の源であり魔法を使うための力。魔法使いの体内で生成されるものから自然界に存在している。元素と同じで世界を構成している粒子の一つ。
「魔縫――裁起動」
風とすれ違い落下しながら、千秋は引き出した幻素をイメージの中で縫い合わせていく。ぬいぐるみを作るように平面を立体に仕立てあげる。形が無いものに形と能力を与えていく。
千秋が魔縫によって生み出したのは、機械独特の硬質感と角ばったフォルムが一切無い、丸く愛らしくデフォルメされた飛翔機のぬいぐるみ。
完成と同時に、空を駆けるためのぬいぐるみを使用し、運動方向をL字型――垂直から水平へと変更する。
飛翔機が作り出す光の帯を引きながら、千秋は閉ざされた銀行へと突撃をかける。
「開錠完了ですわッ」
先行していた璃緒の呟きと共に、閉じられていたシャッターが錆鉄の軋みの音を立てながら上昇していく。
徐々に開かれる閉鎖空間。
障害は無くなったとばかりに千秋はさらに、加速、加速、加速。
速度を上げていく。
風が顔を殴りつけてくる。
シャッターと地面の隙間はまだ、1人1人が滑り込めるかどうかしか空いていない。それでも、千秋の加速は止まらない。
アスファルトと鼻の距離数センチの超超低空飛行。
このままだと飛翔機がシャッターにぶつかり突入は失敗に終わる。
飛翔機をパージ。慣性に身を任せ滑り込んだ。
璃緒はそんな様子を見ながら思う。
また、無茶をして。