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11 日常パート 時雨、傷を舐め合う

 その時に、璃緒が項垂れて傷ついているのが見えた。見えてしまった。 何、被害者ぶってるの!

 大きな音をたてて扉が閉められ、時雨の姿を隠した。


――――――――


 草の緑が太陽の光を受けて輝いている。すがすがしい朝の空気が時雨の肺に取り込まれる。けれど、どんなに新鮮な空気を取り込んでも心の中まで洗浄してくれない。時雨の心の中には、怒りと悲しみの棘が刺さっていて、自分で抜くことができない。

 イライラしたまま白いベンチにどかっと腰を下ろした。


「あたい何やってんだろ」

 ここ最近、自分でも分かるくらいに変だ。


「なんで、ママのことになると気持ちを抑えられないんだろ」


 気持ちの波が大きすぎて自分でもどうしたらいいか分からない。ママに聞けば分かるかな。


「ママに会いたいなぁ」


 空を仰ぎ見る。もしも天国というものがあるのなら空の上だろうと思い、想いが届くことを祈り声帯が勝手に震えた。


「あなたもママがいないの?」


 時雨の目の前には、同い年くらいの小柄な女の子がいた。どこにでもいそうな小学生くらいの女の子は、私のママも今お空の上にいるの。


「私も早くママに会いたいなぁ」

「無理だよ。魔法を使っても死んだ人は生き返らないし」

「分かってる。けれどそれでも会いたい。会ってお話をしたい」


 女の子の声には寂しさが含まれていた。ひょっとするとあたいもこんな声を出してるのかもしれない。


「ねえ、どんなお母さんだったの?」

「んとね、優しくていいにおいがした。それにお料理が上手なの。ホットケーキが得意料理でねすっごくおいしいの。だけど、死んじゃったの。ママは、魔女じゃないのに魔女だって言われて殺されちゃった」

 少女の表情が陰る。


 魔法使いが現れてから、一般人が魔女や魔法使いと間違われて襲われることが度々ある。今の社会問題の一つにもなっているが、日本では極めて稀な事件である。テロはあるにはあるが、魔女と断定され殺害されるのは滅多にないことだ。交通事故での死亡事故よりも低い確率である。

 魔法使いに恨みを持っている人間もいないことはない。けれど、面と向かって戦いを挑む人間はいない。差別される要因の一つにある、魔法が使えること。これが人間の理解を超え、恐ろしいものとして認識されている。それ故に真っ向勝負を挑む命知らずはいない。


 ゆえに魔女狩りで犠牲になるのは、ほぼ無関係な人間なのだ。


 少女の目には大粒の涙が今にも零れ落ちそうになっている。握った手は、爪が自分の皮膚に食い込んでいる。母を殺した相手が憎くて堪らない。それ以上に母を守れなかった自分の弱さを悔いることしかできない。


「その気持ちあたいも分かるよ。あたいのママは魔物のスタンピードに殺されちゃったんだ」


 やさしく、少女を抱きしめる。

 二人は互いを抱きしめ、同じ傷を負った者同士傷を舐めあう。


「魔法ではできなくても科学でなら、可能ですよ。お嬢さん方。もう一度お母様たちにおあいしませんか?」


 白衣を着た優男が芝居がかった口調で話に割り込んでくる。


「科学の力ならば死者を蘇生させることなど朝飯前です」


 公園では、白衣の男が少女二人を前に怪しげな演説を繰り広げている。語る言葉は荒唐無稽の夢物語。


「さあ――私と一緒にイキマショウ」


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