3 日常パート 新キャラ加入
職員室の前に立っている男たちは、立ち姿から只者ではないことが伝わってくる。鍛え抜かれた筋肉に鋭い眼光。直立不動の姿からは岩壁という表現がしっくりくる。
「私は自衛隊御社駐屯地所属の柳葉。階級は3佐です」
「自分は、相楽であります。階級は曹長であります」
自衛官を名乗る2人は、敬礼ののち丁寧に身分証まで提示してくれた。
「柳葉3佐さん? と相楽曹長さん? 本日はどのようなご用件でしょうか?」
「はっ。突然の訪問失礼します。MSSへ極秘の依頼をしたいと思い参りました」
胡散臭いですわね。
「胡散臭いと思うかもしれませんが、話だけでも聞いていただけたら、そちらの捜査とも関連性がありますので」
顔に出ていたからしら。
「失礼しましたわ。お話を伺います。どうぞ、こちらへ」
応接室となっている旧校長室へ案内しようとして、扉を開けた璃緒の足が止まる。
魔法使いの元へ誰もこないだろうという卑屈さから掃除を怠った結果、かつては誇りに満ちていた応接室が今は埃が舞っている。カーテンの隙間から差し込んだ光が埃で乱反射してその道筋を見ることができる。
「やはり、こちらで伺いますわ」
冷や汗がダラダラと流れ落ち、指先が微かに震える。
先ほど会議をしていたテーブルに案内し、椅子を進めた。
「ありがとう。失礼します」
柳葉3佐が座り、その斜め後ろに相楽曹長が立つ。
「まずは概要から話すと自衛隊の武器庫が消えてなくなりました」
「は? え? ちょっとっ え? え? おまちになって?」
「各種兵装に武器弾薬。挙句のはてに床や天井、壁まで一切合切なくなりました」
いやーやられました。と気軽に話す柳葉3佐の後ろで、大きく目を見開いている相楽曹長が目に入った。いや、ですからお待ちになって。
「うっわー大惨事じゃんおじさん」
「ほうっ」
「壁までだなんて・・・・・・」
MSSのメンバーが三者三様に興味を示す中、相楽が1番混乱していた。
相楽さん、あなたもご存知なかったの? いえ、それよりも空間ごと消滅? 奪われた?
「通常の科学、物理現象ではあり得ないことなので専門家に調査を依頼しようかと思いまして。それに、極秘裏に開発中だったパワードスーツ『頼光」の試作機まで奪われてしまった有様です」
こちらです。と差し出されたスマートフォンに映っていたのは、昨日璃緒が捉えた機械鎧と瓜二つの物だった。画像データを眺めて何も言わない璃緒に対して、柳葉は言葉を続ける。
「ご存知の通りの戦闘能力を有した災害救助用の装備になります」
「ええ、先日あたくしが対峙しましたから、よくわかりますわ」
殴られた下腹部に無意識に手を当ててしまう。
「お腹を殴られたのですか?」
「え? ええ。あたくしの未熟さが招いた結果ですわ。次は無傷で制圧してご覧にいれますわ」
お気遣い感謝いたします。丁寧な所作で璃緒は相楽曹長に礼を伝えた。
「状況を考えるに駐屯地襲撃の犯人は武装を強奪後、何らかの目的で使用。その際に知識・記憶を何一つ持たない魔法使いへ装着させ傀儡とした」
今わかっている情報はこんなものだろうかとリュウヤが告げる。
「その線が濃厚のようですね。しかし、犯人の目的は未だ不明と。ふむ、こちらの情報部にも探りを入れさせましょう」
柳葉3佐は顎を手で撫でながら何かを考えつつ、笑みをこぼす。
「そう言えば相楽曹長。君は確か独身だったね」
「そうであります」
怪訝な顔を隠そうともせずに即答を返す。
「君はここに残り彼女たちの捜査に協力しなさい」
「・・・・・・」
相楽曹長は冷や汗をダラダラと流しながら、無言で否定の意志を伝えようと必死に目で柳葉3佐に訴える。
その意思は伝わり
「命令ね」
にべもなく却下された。
やはり、魔法使いと一緒にいるのは嫌なのですのね。
他のメンバーの表情を盗み見ると思った通り、千秋さんの表情も少し暗いですわね。
「発言の許可を願います」
「許そう」
「じ、自分は女性が苦手・・・・・・女性恐怖症であります。綺麗な方々だと尚更であります」
だから、ここ美少女が9割を占めるMSSに残るのは辛いのだと。魔法使いだから嫌なのではなく、女性だから嫌なのだと不器用ながらに言葉を選び伝える。年端も行かない少女達が辛そうな顔をしないでくれと願いを込めて。
「あたくしは男性ですわ」
「ぼくも男の子だよ」
「んー生えてるよ」
「し、失礼しました」
その日、相楽曹長は男性という言葉を初めて辞書で引いた。




