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2 日常パート 来客

 MSS本部。職員室。

 MSSの本部兼宿舎は山の中腹にあった廃校を改装して作られている。それゆえ昔の表示をそのまま使用した結果、司令室は職員室と呼ばれている。内装もごく一般的な学校の職員室と変わらない。

 ただ、違いがあるとしたら配置されている執務用の机の数が4つと職員室にはしては少なく、空いたデッドスペースに休憩スペースが侵食してきていることくらいか。


「璃緒、調査結果が出たぞ」

 ガラガラと引き戸を開けて入ってきたのは、白衣にホットパンツにサイハイソックス、ラフなデザインTシャツを着た龍谷 沙織――通称リュウヤだった。


「ありがたく存じますわ」

「どうした? 言葉遣いがいつもと違うぞ? いつもはありがとうですわ。的な感じだったのに

に」

「た、正しい言葉を知りましたから直したのですわ」

 

 少し恥ずかしそうに俯きながら璃緒は答える。若干頬が赤くなっている。本当に恥ずかしかったのだろう。


「そうか。それよりも調査結果は面白く無い。不快と言っていいかもしれない」

「みなさん、聞きましょう」

 璃緒は聞くための覚悟を決める。研究と人の倫理を秤にかけた時、投石器のように倫理を遥か遠くまで投げ捨てるリュウヤが言う以上、相当に不快な結果なのだろうと。

 大きな事件でないことを祈りつつMSSの2人にも呼びかけた。


「は〜い」

「どうしたの」


 最年少の時雨と魔縫使いの千秋が作業の手を止めて集まってくる。


「リュウヤさんお願いしますわ」

「ああ。結論から言うとあの機械鎧の中には何も知らない魔法使いが入っていた」

「あたくしの魔法鍵がレジストされましたから、その可能性はありましたが、何も知らないと言うことは記憶喪失かしら? だとすると何者かが記憶を消す魔法を使用したと言うことに・・・・・・」


 璃緒の推論を遮りリュウヤは続ける。


「いや、文字通り何も知らない。一切の知識がない状態だった。言葉を知らなければ、親も知らない。本能そのものがない。只の代謝を繰り返すだけのタンパク質だ」


 親も知らないと言う言葉に時雨が反応し、不快そうに眉間に皺を寄せた。


「魔法使いが何者かの手によってそんな状態にされたってこと?」

「現段階では大いにその可能性がある」

 苦々しく吐き捨てられる。

「人の記憶――尊厳をなんだと思っているのかしら!」

 怒気を抑えることもなく璃緒は叫び机を叩く。鈍い打音が怒りの苛烈さを雄弁に語っている。

「ひょっとして・・・・・・」

「はぁ。可能性がある。が断定すべきではない」

 千秋の考えを汲み取ったリュウヤが言葉にするのを遮る。

 千秋は二つのピースを結びつけて連想してしまった。

 機械鎧が行っていたであろう人攫いとその中身がどうなっていたかを考えれば、自然と子供たちが誘拐されてどんな目にあったかが想像できてしまう。

 機械鎧を作るために魔法使いを攫っているのでは? という言葉は突然の来訪者によって声帯を震わせることはなかった。


「お話中失礼するよ」

 迷彩服に身を包んだ2人の男性が職員室の入り口に立っていた。

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