13 クライマックス
13
意識を失っているはずの爆弾魔が起き上がる。
右手には拳銃。
銃口を自分の頭部に向けて。
発砲音と同時に爆弾魔は姿を変えていく。
側頭部の弾痕から、ヘドロが吹き出してくる。
それは酷く醜い視認できるまでの実体を得た塊の穢れ。
魔道具が蒐集し蓄積した人々の心の汚泥が溢れに溢れて爆弾魔を飲み込みこんでいく。汚泥は人に邪悪な怪物の性質を流し込み作り替える。
人から穢れの塊へと。
魔道具が生み出す怪物の呼称は塊穢。
「guriyyyyyyyyyyyyyyy]
塊穢の叫びは、産声か断末魔か。
四人は塊穢から距離をとり体勢を立て直す。
「MSS職員より宮内庁陰陽課へ。第6号条件に該当する事案の発生により変身許可の緊急申請。塊穢の汚染深度A級。想定される汚染範囲半径3kmーー」
リュウヤが魔法使いであるMSSが本当の力を振るえるように即手続きを行う。
それは変身の申請。
MSSの彼らは承認されない限り、立場上変身することはできない。
「事態の概要を把握しました。変身許可は1名にのみ出されます。並びにロックダウンの申請が通りました」
「相変わらず、陰陽課の事務処理は早いな。平安の世から令和の今まで戦術レベルの大占術を駆使してこの国を守ってきただけはある」
「お褒めに預かり光栄です。煩雑な事務処理は先手必勝が鉄則ですので。どうか、ご武運を」
リュウヤは伝達する。
「変身許可は1名のみ。ロックダウンもいいそうだっ!」
「僕がいく」
役割を考えたとき、戦闘に回れるのは僕だけだ。
璃緒はロックダウンを維持しなければならない。
リュウヤはいつも通り、事務的なバックアップをしてくれるだろう。
時雨はーー災害救助においてあの子の魔法はチート級だし。それに年下を戦わせるわけにもいかない
「覚醒。心の中のお姫様」
変身の呪文を唱えた千秋が眩いばかりの光に包まれる。
それは今まで圧縮されていた幻素が活性化し、余剰エネルギーが閃光になったものだ。
文字通り千秋の身体が変わる。
少年の体から少女の体へーーより魔法を使うのに適した体へと臓器レベルで作り替えていく。
より幻素に耐えられるよう筋肉の一部は脂肪に変わり、胸部にほんのわずかな膨らみを作る。
副作用でエストラジオールの分泌が促される。
空間にある幻素を知覚できるように髪が腰まで伸びる。
身体の変化に合わせて衣類も作り替えていく。自分のためだけに作られたたった一つの勝負服。
変身完了。
「美少女型魔縫少女ーーただいま新生。法律をやぶる方には針千本飲ませますッ」
幻素光が収束した先には、腰まである亜麻色の長髪を赤いリボンでポニーテールにしている千秋が立っていた。
「ほう、今日は紺色プリーツスカートのミニにオーバーニーを合わせてきたか」
「白いブラウスに赤いリボンと白のカーディガンですわね」
「女子高生をイメージした?」
三者三様の感想。三人とも悪くないと思っている。
「そんなに見ないでよ。緊急だったからデザイン練れてないんだから」
「あら、可愛いからあたくしも含めて見ているのですわ」
璃緒は、ほら、リボンが曲がっていてよ。と続けリボンを直してくれる。
「もう。行ってきます」
「さて。魔法鍵士、高町璃緒。今からロックダウンを行いますわ。千秋さん、遠慮なさらず戦ってきてください」
塊穢から大きく距離をとり、璃緒は集中するために一息つく。
これから行う魔法ロックダウンは、指定範囲から許可のない全ての生物を転送する大規模な魔法。
これで千秋さんは、人的被害を気にすることなく戦えますわ。
残りの懸念事項は建物などへの被害だけですわね。




