女魔王、飛ぶ
前回のあらすじ:シャラの勝ちデース。
何だか体が怠い。魔力の使い過ぎらしい。どうやら魔力の総量もかなり減っているようだ。
昔なら一週間ぶっ続けで魔法を使っても平気だったのになぁ。
山火事のおかげで明るくなり、私が倒した獣型の魔物の正体も判明した。オオジャッカルという狼に似た魔物で、一匹程度なら、武装した人間一人でも互角に戦えるような軟弱な魔物だ。いくら手加減していたとはいえ、こんな奴に怪我を負わされてしまうとは……やはり殆どの力を失ってしまっているようだ。封印で幼児化した影響だろう。
『血塗られた魔王』なんて呼ばれて恐れられた私も、地に堕ちたものね。
まぁ体が成長すればまた元通りになるでしょうし、元々そこまで力に執着してなかったので、割とどうでも良い。
いや、むしろ戦闘が長引いたり、苦戦したりして楽しめるかもしれない。素晴らしい。
とりあえず四つの呪いを解き、元に戻した。再生力が戻ったおかげで左足の出血が止まる。数分もすれば完治するだろう。
しかし困った。体中返り血で生臭い。服は魔法のおかげで新品同様に清潔だが、髪もべとべとだ。
川か何かを探して水浴びしたいなぁ。
でも、それより先に腹ごしらえしないと。
一番初めに襲いかかってきたオオジャッカルの足を丸ごと、威力を弱めた『ブレス』で焼き、肉を齧ってみた。
……くそ不味かった。そりゃ不味いわよね、毛皮ごととか。残念ながら私には、血抜きしたり皮を剥いだりする技術も知識も無い。解体なんて普通できないわよね?バラバラに引き裂くならともかく。
私に出来るのは、裂いて焼くことだけだ……今度料理でも習ってみようかしら。
したし、いくら不味くても空腹よりはマシだ。適当に炙り、味を無視して飲み込んだ。おえっ……のど越し最悪。
腹の虫が収まったところで、残った汚い肉片を、毎度お馴染みの『ブレス』で消す。私ったら本当にきれい好きよね。
また雑木林に引火したけど、気にしない。
「あー……早くまともな食事がしたいなぁ」
さっさと人間の村や町を見つけて、おいしいものを頂戴したい。もう空から探そうかな。
うん、そうしよう。それがいい。空を飛ぶのは疲れるが、食欲には逆らえない。
「『魔翼』!」
背中に激痛を感じて顔をしかめる。これだからこの呪いは使いたくないのだ。
ドレスの背面が破れ、蝙蝠のように黒くて不気味な羽が生えてくる。勿論ドレスは再生するので心配はいらない。
「ちゃっちゃと探しちゃおうっと」
ジャンプをするようにしゃがみ込み、両足に力を込め、息を整える。せーのっ……!
次の瞬間、私は全力で地面を蹴り、勢いよく垂直に飛び上がった。
後書き書き忘れてました。