女魔王、着替える
前回のあらすじ:幼女になってた
深呼吸をして、心を鎮めた。落ち着いて状況を整理するのよ、シャラ。
そういえば、目覚めた時から衣服がやたらとずり落ちたり、裾を踏んでしまったりと、違和感は感じていた。寝ぼけているせいかと思い気にしなかったが、どうやら原因は私が縮んだ……いや、若返ったせいらしい。
鏡をもう一度覗と、そこには悲しそうな顔をした幼女が映っている。
何故だ?私が自分に掛けた呪いは、『状態を維持しながら眠り続ける』呪いだ。若返る呪いなんぞ知らない。
となると、封印のせいか?封印には、弱体化(幼児化?)の効果があったのかもしれない。
そこまで考え、あることを思いついた。もしかすると、神は私を消そうとしていたのかもしれない。仮にもし自分で呪いをかけていなかったら、私は知らぬ間に少女となり、幼女となり、赤ん坊となり……消え去っていただろう。
つまり私は、偶然にも『状態を維持する』効果がある呪いを使用し、封印の効果を相殺した。しかし完全には効果を打ち消せず、千年間でここまで幼児化が進んでしまった、というわけか?
……なるほど、こう考えれば辻褄があう。しかし無自覚のうちに神に対抗するとは、流石は私。
ふむ、つまり特に問題ない。私とて不老不死ではないのだ。時間が経てば成長し、元のわがままボディになるわけだ。
実は昔、食せば不老になれると言われる伝説の果実を手に入れたことがあるのだが、食べなくてよかった。もし食べていたら永遠にこの幼女姿であっただろう。本当によかった。
ちなみにその果実は、何処かにいってしまった。
閑話休題。
今着用している薄い生地の服は千年前に、次の日の異世界転移にそなえて早めに寝ようとして着替えた……ネグリジェである。
今の私にはサイズが合わなすぎるし、それ以前にネグリジェは寝巻だ。早急に着替えなくてはならない。最強の力と最高の美しさを併せ持つこの私が、だぼだぼの寝巻を着たまま出歩くなどあってはならないのだ。
……下着と靴は、後回しでいいか。
しかしこの場にある服と言えば、例のあのドレスしかない。そう、先程投げ捨てたふりふりピンクドレス。
ちらっと視線を動かすと、あった。枯れ枝に引っかかっていた。
しかし……本当に着るのかこれを?それならサイズが合わなくても、今の服のままでも良いのではないか?私はもっと落ち着いた感じの、シンプルな服が好みなのに……。
じっとドレスを見つめながら自問すること数分。
そうだ、とりあえず着てみよう。それで少しでも似合わなかったりサイズが合わなかったら、すぐに破り捨てよう。私はそう決めて、着替え始めた。
サイズは頭にくるほどピッタリだった。
「う、うーむ。こんな服を着なきゃならないなんて……」
ぶつぶつと文句を言いながら、鏡を先程椅子代わりにしていた石に立てかけ、姿を確認する。
……全く。
……こんな趣味の悪い服を着る羽目になるなんて。
……あ、かわいい。
……ん?
あれ?なにこれすごく似合ってるんだけど。
女魔王はゴスロリ?