表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/34

女魔王、ショック

 前回のあらすじ:二十数話かけてやっと初めての街に着いた

 「じゃあな、兄ちゃんに嬢ちゃん!」


 「おっちゃん、ありがとう!助かったよ!」


 ミトノの入り口に着くと同時に、行商人と別れた。おじさんは商人用の検問を通らなきゃいけないらしく、私達と一緒には街に入れないらしい。


 「良い人だったな」


 トムが振っていた手をおろし、私の足元を見て呟く。


 さっきまで裸足だった私の足は、今は赤くて小綺麗な靴を履いている。

 トムが行商人に私の靴が無いと説明すると、自慢の娘にお土産として用意していた新品の靴を譲ってくれたのだ。

トムに負けず劣らずお人よしバカだ。


 「そうね。親バカで自慢話が長かったけど」


 トムが苦笑しながら頷く。


 「で、私たちは何処から入ればいいのよ?」


 空を赤く染めていた夕日は既に沈み、辺りは篝火かがりびのむらのある光で照らされている。

 さっさと街に入っておいしい夕飯にありつきたい。


 「えーっと、確か初めてミトノに入る人は、あそこにある詰所で通行手形を貰うんだったかな」


 トムが指を差した方向を見ると、街の大門から少し離れた場所に大きな革張りのテントが幾つも立ち並んでいて、そこには小奇麗な鎧に身を包んだ騎士っぽい男達がいた。

 テントの前には旅人らしき人や出稼ぎに来たらしい農民、武器や汚れた鎧を装備した傭兵風の男達が長い行列を作っている。


 ……あそこに並ぶの?時間かかりそう。


 「じゃ、早く貰ってきてよ。その通行手形ってやつ」


 「シャラも行かなきゃだめだよ?」


 えー、面倒だなぁ。


 「一人につき一枚必要だし、本人じゃなきゃ貰えないからね。通行手形さえ貰えれば、大門からすぐに入れるよ」


 そう言うと、トムはさっさと列の最後尾に並んだ。私に手招きしている。

 はぁ、やっぱり並ぶしかないのか。

 仕方なく怠い体を動かし、私もトムの後ろに並んだ。


 トムと雑談したり貰ったばかりの靴を眺めたりして時間を潰していると、唐突に鐘の音が街から響いてきた。

 カーンカーンとお腹に響く重い音だ。

 何の音かとトムに聞こうとしたが、きょとんとした顔で惚けている。分からないらしい。

 なに?襲撃かなにか?


 するとテントの中から騎士風の男たちが出てきて、声を張り上げ列に並ぶ人々にこう告げた。


 「申し訳ありませんが、夜間は治安維持のため街への出入りができません!通行手形の発行も本日は終了です。手形発行の再開は明日の早朝になります!」


 は!?


 「では、良い夜を!」


 列のあちこちからため息やヤジが飛ぶが、男たちはさっさと荷物を片付け始めてしまった。


 「あー……残念、終わっちゃったみたいだね」


 隣にいるトムはちょっと残念そうな顔をしてから、じゃあまた野宿だねーなんて話しかけてきた。

 え、マジで?今日街に入れないの?


 ……ご飯は?

 一週間に二話と言っておきながら、しょっぱなからこれだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ