女魔王、ミトノに着く
前回のあらすじ:トムとギクシャクし始めた
「ねぇ、おじさん。まだ着かないの?」
ガタゴトと揺れる荷馬車の荷台から身を乗り出し、御者の行商人に尋ねてみた。
「うーん。日が沈む前に着けるか着けないかだね」
通りすがりに私達を拾ってくれた行商人が、こちらを振り返って教えてくれた。
ほう、今日中に着けるのか。トムは明日の昼と言っていたが、いい意味で予想が外れた。
私がトムを担いで長距離を走破したからかな?
荷台に積まれた大量の毛皮を踏まないように避けて座り込み、トムに話しかけてみた。
「今日中に着ければ、街でご飯食べられそうね」
「ああ。予想より早かったよ」
トムは剣の汚れをぼろ布でふき取っていたトムは、にっこり笑って答えた。
さっきまでは様子がおかしかったトムだが、今は元通りになっている。落ち着いたのだろう。
その後も行商人と会話したり景色を眺めたりしながら、特に何事もなく過ごした。
辺りの景色は先程の草原と森林とは違い、一面の麦畑だ。時々馬車や通行人とすれ違うが、あまり武装している人はいない。既に権力者に管理された領域に入っているのだろう。荒くれ共も魔物も現れやしない。
平和だ。
……なんかつまらん。
最初こそ景色や行商人の話を楽しんだいたが、しばらく前から景色は麦畑から変わらないし、行商人は街に住むという一人娘の話を延々とループしている。途中からトムを身代りにしたが、全く終わる気配は無い。
「それで……家の娘は…………嬢ちゃんも別嬪だが家の娘の方が……」
十一回目の娘の話をトムは律儀に相槌をうって笑って聞いているが、若干疲れた顔をしている。たまにチラチラとこっちを見て相槌要因交代を求めてくるが、私は気付かないふりを続ける。
タダで乗せてもらってるんだから自慢位聞いてやりなさい。
そうこうしている間に空は夕焼け色に染まり始め、薄暗くなってきた。
すると突然、行商人はループを抜けた。
「お、そういえばこの丘を越えれば、ミトノが見えるぞ。あと少しだ」
どれどれ。
荷馬車が緩やかな上り坂を上り切ると同時に立ち上がり、覗いてみる。疲れた顔をしたトムも私に続き立ち上がる。
「本当だ。見えてきた!」
だから耳元で叫ぶなトム。
「あら、思ったより大きいわね」
私が千年ぶりに見た人間の街は、とても大きく、そしてなにより栄えていた。
ミトノは今いる丘と同じ位の高さの石煉瓦の防壁に囲まれており、防壁を越える高さの建物や塔がちらほらと見える。既に夕暮れだというのに、街は松明等の光できらきらと輝いていて綺麗だ。
街の喧騒はそれなりの距離があるここまで聞こえてくるし、街の入り口らしい所には米粒みたいに見える人間どもがひしめき合っていた。
「なかなかいい街みたいね」
大きく美しく、壊しがいのありそうな街だ。
おっと、思わず破壊衝動が湧いてしまった。
やっと初めの街に着いた……どんだけ展開遅いんだよってなりますよね(笑)
なかなか執筆が進まないため、二日に一回の定期更新はできそうにありません。しばらくは一週間に二回程度の更新になりそうです。
これからの展開は考えてあるのですが、なかなか文章に出来ません……三人称にしときゃよかったw




