トム、恐怖する
一昨日予約投稿忘れてました。ごめんなさい。
前回のあらすじ:またトムかよ
大男の断末魔が響き、やがて静かになった。
……え?
地面に倒れた大男の背中には、槍が突き刺さっていた。俺は呆然と大男を眺め続ける。
「理想を言えば、トムに止めを刺させたかったんだけど、逃げようとしたし仕方ないわよね」
背後からシャラが優しい声をかけてくる。
あの槍はシャラが投げたのか?
「どうしたの?あ、私がトムの獲物をとっちゃったから怒ってる?」
俺は振り返った。ゆっくりと振り返り、そこにいる人物……シャラに視線を向けた。
そこにいたのは、俺の顔を覗き込むように笑顔で見つめてくるシャラだった。その表情は無邪気な子供そのもので、思わず俺もつられて笑いそうになる程楽しそうに笑っている。
しかし次の瞬間俺は恐怖を感じた……心配そうに俺の顔色を窺う少女は、血まみれだった。それだけではない。白い手から生えた爪は赤く染まっていて、鋭く伸びている。
顔も腕も血まみれなのに、ドレスは何故か綺麗なままだ。戦闘の後だというのに、どこも破れていないし、汚れてもいない。まるで新品だ。
それが余計に非日常さを醸し出していて、気持ち悪かった。
そしてシャラが歩いてきた方向を見ると、そこには人の体が……散らばっていた。
吐き気を感じ、脂汗が噴き出すが、俺の体は微動だにしない。
「アイツが逃げようとしたんだからしょうがないじゃない。トムじゃ追いつけなかったでしょ?……ねぇ、無視しないでくれる?」
俺の服をクイッと引いて、不思議そうな顔で見つめてくる。その姿は無垢な子供そのもの。
これだけの人を殺し、血塗れになっているのに、何故そんなに楽しそうなんだ?
この子は異常だ。そんな感情が心の底から湧いてきた。
俺は声を震わせながら、ふと思ったことをついそのまま口から絞り出してしまった。
「なぁ……シャラ。君は人間なの?」
言ってしまった。
するとシャラはにっこりと笑い、こう答えた。
「大体人間よ?ちょっと強いだけの。ほら、ちゃんと血も出てるし」
そう言ってシャラは服をめくり、左肩を見せた。左肩は抉れていて、|白いもの(骨)がチラリと見えた。白く美しかった肌は、肩の大きな傷口から流れ出たおびただしい量の血に濡れていて、真っ赤に染まっている。
「!?」
肩の傷口は、いつ失血死してもおかしくないほどの血を垂れ流していた。
そんな怪我をしていて、何で笑顔でいられれるんだ……。
「大丈夫?顔色悪いけど。あ、分かった。私の強さに驚いたんでしょ?」
山賊達をたった一人で惨殺し、普通の人間なら意識を失うほどの怪我を負い、血まみれになっても、まるで天使のような笑顔でいられるこの幼い少女は、一体何なんだ……?
生まれて初めて、心の底から怖いと感じた。
共に戦ってくれた幼気な少女を、俺は怖いと感じてしまった。
俺は少しずつ意識が遠くなり始め、ふらふらと倒れた。
※お知らせ
悲しいお知らせです。試験を乗り越えたと同時に、ストックが完全につきました。勉強、復帰した戦場の絆、COJ等が忙しく、一か月ほど前から執筆が殆ど進んでませんでした。なのでストックを貯めるため、一週間~二週間程休載することにします。申し訳ございません。
それとこの作品を呼んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、評価をつけてくれた方、ありがとうございます!再開するまでどうかこの作品のことを忘れないでください(笑)




