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トム、疲れる

 前回のあらすじ:シャラ大勝利

 俺は、斧を振るう大男と必死に戦っていた。

 重い荷物とシャラを降ろした(というか降ろされた)おかげで、今は大男と互角以上に戦えている。大男の攻撃は一撃の威力がある代わりに、単純だ。落ち着いて斧の軌道を見極めれば、何とか避けられる。……村のおっちゃんの方が断然強かった。

 それに大男はさっきからチラチラと俺の後方を気にしていて、注意が逸れている。隙だらけだ!


 「はぁっ!」


 斧の連撃の間をすり抜け、俺の剣の切っ先が大男の頬を掠める。


 「うっ!」


 十中八九戦っているシャラを見ているのだろう。俺の腰位の身長しかないシャラが、男を殴り殺したことが信じられないのだ。

 勿論俺だって驚いたが、俺すぐに思い出した。シャラは「魔法が使える」と言っていた事を。

 おそらくシャラは、身体強化や攻撃魔法を使ったのだろう。出会った当初から、妙に落ち着いている子供だなぁとは思っていたが、まさかあの見た目で魔法を使いこなせるとは思わなかった。


 ……もしかしたらシャラは、俺よりも強いのかもしれないな。思い出してみれば山賊に出会った時も余裕そうだったし、現に今も数人の男相手に戦っている筈だ。

 剣や単純な身体能力では負けるとは思わないが、魔法を使われたら今の俺じゃ負けてしまうかもしれない……なんで天才的な魔法の才能があるのに、あんな場所に荷物もなしに居たのかますます気になるが、そんなことは後だ。


 多分シャラは俺がこの橋で大男と他の山賊達を食い止めているうちに、後方の山賊を倒すつもりなのだろう。いくらシャラが強くても、大勢の敵に囲まれたまま魔力が底をついたらおしまいだ。そうなる前にシャラが逃げ道を確保し、後は俺がシャラを担いで逃げればいいだけだ。

 囲まれてさえいなければ、何とかなる。

 

 「やあぁぁぁっ!!」


 斧の斬撃を躱し、力を込めてを剣を振るが、斧に防がれる。

 くそっ、見かけ通りスタミナだけはあるなコイツ。できるだけ怪我を負わせて、逃げる準備をしないと。


 俺がそんなことを考えながら戦っていたその時、シャラの気の抜けた声が聞こえた。


 「こっちは終わったわよー。トムもさっさとやっちゃいなさーい!」


 終わったって……まさかもう倒したのか!?

 いくらなんでも早すぎる。


 気になるが大男から目を離すわけにはいかないので、振り向けない。

 大男は俺の後方をチラリとみると、目を見開いてあきらかに動揺した。

 なんだ?一体何なんだ?

 俺も少しだけ振り返ろうとした次の瞬間、大男は突然斧を投げつけてきた。


 「ぐっ!?」


 咄嗟に横へ跳び、ギリギリで回避には成功したが、予想外の攻撃を無理に避けたせいで転んでしまった。

 俺が転んだ隙に、大男は反転し、叫びながら走り出す。


 「覚えてやがれ畜生!おい野郎ども、逃げ……る……」


 しかし男の掛け声は最後が情けない声になった。

 倒れたまま確認すると、いつの間にか山賊の手下たちが消えていた。

 いつの間に……?


 「く、くそ!あいつ等ァ!!」


 大男は怒鳴りながらも、こっちを振り返らずに一目散に駆けている。


 逃げ出したのか?……やった。勝ったんだ!


 「はぁ、はぁ……よ、よかった……」


 起き上りながら、ほっと胸をなでおろす。一時はどうなることかと……。

 その時、俺の背後から細い長い何かが大男に向かって飛んで行き、大男の体を貫いた。


 トム回です。

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