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女魔王、笑う

 前回のあらすじ:やってない

 その直後、ナイフは私の胸に到達し、ガキンッ!と大きな音を立て……破片を飛び散らせながら折れた。


 「は?」


 私に馬乗りになっている男は、今目の前で起きた現象を理解できずに、固まっている。

 男がナイフを突き立てようとした私の胸には、乾いた血のようにどす黒く赤い鱗がびっしりと生えていた。

 『魔鱗』は、体の表面に鱗を生えさせる呪いだ。この鱗は、鋼を遥かに超える強度があり、生半可な武器では傷一つつかない。


 「ふふ、ふふふふっ!その顔……良いわねぇ。今、勝てたって思った?思ったでしょ?」


 笑いを堪え切れずに、笑い出してしまった。目の前の男の勝利を確信した顔、そしてそれが崩れる瞬間の表情……最高に面白い顔してたわ。


 「あははははっ!この私に、女魔王シャラに……お前みたいな屑が勝てるわきゃぁないんだよおおおおおおおおおおおおお!!」


 固まったままの男の首に右手の爪を突き刺し、引き千切る。

 血が噴き出して私が汚れる前に、膝で蹴り飛ばした。


 「ははっあははははははっ!……はぁ、はぁ、わ、笑いすぎて疲れちゃったじゃない」


 あー面白かった。もう、笑いすぎで涙が滲んじゃったわ。


 さて、トムは無事かな?


 爪に流す魔力を減らし、爪を短くする。

 左肩に刺さった槍を無理やり引き抜きながら立ち上がり、橋を振り返ると……おお、やってるやってる。

 トムが大男の振るう斧を、少しずつ下がりながらではあるが危なげなく躱し、たまに剣を突き出して攻撃もしている。対する大男は体のあちこちから血を流していて、何度もトムの攻撃を受けているようだ。ただ、どの傷も浅くようで、大男の動きは鈍っていない。


 反対岸の下っ端は……あれ?居ない。五、六人程いたはずだが……。

 え、もしかして逃げた?私の戦いぶりを見て逃げ出したのか?


 あーあ、どうやら大男は見捨てられたらしい。

 まぁあの大男が戦かっている間なら、簡単に逃げられるだろうしねぇ。薄情な奴らだなぁ。でも賊共なんてそんなもんか?

 大男も可哀想に。さっきまでこき使っていた下っ端に囮にされるとはね。


 ま、いいや。逃げた奴らを追っかけるのも面倒だ。肩の怪我が治るまでトム対大男の戦いを見物してよっと。一対一なら手伝いは必要ないだろうし。

 私は石橋の手すりに腰かけ、観戦を始めた。自分に掛けた『魔鱗』を解き、足を組んで脱力した。


 「こっちは終わったわよー。トムもさっさとやっちゃいなさーい!」


 槍をクルクル回して弄びながら、声援を送ってやった。この私から声援を受けたんだから、負けることは許されないわよ、トム。


 声に反応し、大男がこっちに気付き、目を見開いて驚愕した。

 私一人に男共が負けたのを、今知ったようだ。


 直後、大男はトムに斧を投げつけた。

 何やってんだアイツ?唯一の武器手放してどうするつもり?


 トムは何とか回避したが、転んでしまった。

 その隙に大男は反転し、走り出して叫んだ。


 「覚えてやがれ畜生!おい野郎ども、逃げ……る……」


 掛け声の最後が情けない声になった。

 どうやら大男は、自分が既に見捨てられていたことに気付いていなかったらしい。哀れ。

 何か主人公が全然マジキチにならない。本当はもっとキチらせる予定だったんですが……。


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