女魔王、痛い思いをする
前回のあらすじ:手加減って……なぁんだぁ?
「ひ、ひぃっ!」
「お、お頭ぁ!!こいつ化け物ですよ!!」
「お、俺は逃げるぞ!こんなところで死んでたまるかよ!」
残った奴らが後ずさりを始めた。こいつ等は、私で不埒な妄想をしたのだ……絶対逃がさん。
「ほらほらどうしたの?私をどうしたいんだっけ?」
私は全速力で走りだし、一瞬で男共に肉薄した。
既に逃げ出そうとしていた男を体当たりで突き飛ばす。男は勢いよく吹き飛び、樹木に頭からぶつかった。何かが折れる音がしたが、多分首か腰だろうな。これでこっち側の残りは四人。
にこにこと笑いながら、大きな声で宣言した。
「逃げた奴から殺すから。死にたくなければ私を殺してみなさい」
青ざめた顔をし、生唾を飲み込む男共。足が震えている。
「く、くそったれぇ……お、おい全員一気にかかるぞ!」
私を囲んで、同時に攻撃してくるらしい。ご丁寧にもわざわざ宣言してくれた。
両手の爪に魔力を込め、微笑みながら待ってあげた。
『魔爪』で二十センチ程まで伸びていた赤黒い爪が更に成長し、私の背丈の半分近い長さになる。
「ほら、いつでもどうぞ」
私がそう言って腕を上げた瞬間、男共は前後左右から飛び掛かってきた。
それと同時に私も動く。大きく踏み出しながら両手を広げ、斜め上から交差させるようにして正面の男を構えていた盾ごと切り裂き、地面を蹴って後方へ宙返り。空中で回転しながら、私目掛けて迫ってくる刃物を爪で受け流し、手頃な場所にいた右の男の頭へ踵落としを食らわせ、着地……するついでに後方の男の項を切りつける。
こうして私は一瞬で、男共を倒……あ、一人仕留め損ねた。
「うりゃああああいいいい!!」
着地した私に、槍が突き出される。やばっ。
無理やり体を仰け反らせたが、躱しきれなかった。槍の穂先が私の左肩に当たり……ドレスを貫通し、皮膚を裂き、肉に食い込み、骨にぶつかる。
「っ、痛……!」
「や、やったぜ……ば、化け物を倒した!」
最後の男が刺さったままの槍に体重を乗せ、仰向けに倒れた私に伸し掛かってきた。
そして腰から小振りのナイフを抜き、私目掛けて振り降ろす。
「死ねええええええっ!」
「『魔鱗』!」
慎ましい胸に凶刃が届く寸前……私は、咄嗟に呪いを発動させた。
直後、ナイフは私の胸に到達し……。
やったか!?




