女魔王、動く
前回のあらすじ:山賊に襲われた
私が放った木製の器は、凄まじい勢いで回転しながら、大男の無防備な喉笛に直撃した。
「ぐげっ!?」
気持ち悪い声を上げて、目を見開いて仰け反る大男。きっと痛いでしょうね。木製とはいえ私が結構本気で投げたんだから。喉笛の両側にある動脈にも当たってるし、結構なダメージだと思う。
「ほら、援護してあげるからもっと頑張りなさいよトム」
「へ?……お、おう。分かった」
私がいきなり動いたせいで、戸惑っていたトムに発破をかける。敵に隙が出来たんだからさっさと斬れ。
あーあ、トムがもたもたしているせいで、大男が体勢を立て直してしまった。
オーガみたいな顔をして、私を睨んでくる。私は悪くないのになぁ。
「くそっ、やってくれんじゃねーか……餓鬼だと思って油断してたが、もう容赦しねぇぞ!!」
本気だったくせに。
「本当に油断してたの?私には本気で戦ってるように見えたけど?」
「うるせえ!おいお前ら、男から女を引き剥がせ!!」
喚きながら、結局数で何とかしようとしてきた。さっき一対一って言ったの忘れたのか?なんかもう……小物だわ。
「俺は男を殺る!てめーらはその生意気な女を好きなだけ犯せ!生まれた事を後悔するくらいにだぁっ!!」
「「「うおおお!お頭に加勢だ!!」」」
遠巻きに、退屈そうに私達の戦いを眺めていた男達が、大男の言葉を聞いた途端いきり立って武器を掲げた。さっきまで怠そうにしていたのが嘘のようだ……ってか、ん?
聞き間違いか?今生意気な女を犯せって……え、まさか私に欲情してんの?昔の容姿ならともかく、今の私は幼女だよ?そりゃいくら可愛らしくて美しいとはいえ、子供だよ?
今の時代って、全員幼女趣味なの?千年間で進化しすぎでしょ。
ニヤニヤし始めた下賤な輩が私を舐め回すように見始めた……不快だ。
「お、おい!この子には手を出すな!まだ子供なんだぞ!?」
トムが怒鳴る。あ、こいつは普通か。良かった。
しかし、うーむ……トムの実力を確かめるために一人で戦わせようとしていたが、私を守ろうとしているせいで本気で戦えていないようだ。まぁ私と荷物を担いだ状態で本気なんて出せないわよね。
仕方ない……本当は人間を殺すなんて心が痛むけど、ホントのホントに悲しくて思わずにやけてしまうが、トムを助けるため、そして私の事をじろじろと舐め回すように見ている猿共を血祭りにあげるてやるため、トムから降りることにした。
ついでにトムが動きやすいように、荷物をもぎ取る。
「お、おいシャラ何するつもりだ!?」
主人の突然の下馬に驚き戸惑う、馬。
私は、悲しそうな表情をして、優しく呟いた。
「トム、貴方はここで死ぬ定めではないわ」
「ま、まさか俺のために……あいつらに自分の身を差し出すつもりか!?ダメだそんな事!あ、あいつ等に捕まったらどんな目に遭うか!」
違うのよトム。私がそんな悲劇のヒロインみたいなことする筈ないじゃない。
私の表情が少しずつ歪んできたのが、自分でも分かった。
「いいえ、そうじゃないわ。私はただ……」
「女が自分から離れたぞ!捕まえて服をひん剥いとけ!」
後方から一人の男が走りだし、私に迫る。そして……。
「トムを助けてあげようとおもって……うふ、ふふふ、ふきひひっ」
話が全然進まない(笑)




