女魔王、山賊に遭遇
前回のあらすじ:トムが主人公臭い
「か、囲まれてる……気付いたんなら、なんで教えてくれなかったんだよ!」
「あれ位なら別に大丈夫かなーって思って」
責めるように言ってきたが、山賊に気付いたら教えてなんて言われてないし。
トムの実力も見たかったし?
「大丈夫なわけないだろ!ど、どうすれば良いんだ」
焦りながらも右手で柄を握り、いつでも剣を抜けるようにしているトム。しかしそれでも私を降ろそうとはしない。私を捨てて全力で駆け抜ければ、トムの足なら余裕で逃げられるのに。
さっさと降りて楽しもうかと思ったが、この善人がどこまで私を庇うつもりなのか試してみることにした。……こういうのも楽しいかも。
「おい、そこの金持ってそうな嬢ちゃんを連れた餓鬼」
前方の男達の中から、大男が声を上げた。金属製の虎柄の胸当てを装備していて、巨大な斧を担いでいる。あいつがリーダー格らしい。
うーん、なんか図体デカいだけで、小物臭いなぁ。
「何ですか?俺たちはそこを通りたいだけなんですけど」
トムも気圧されずに答えた。私も援護してやろう。
「そうよそうよー、ダサい胸当て着けた小物野郎ー。さっさと退けよバーカ。ゲロ以下の臭いがぷんぷんするのよー。あーマジ臭い」
場の空気が固まった。トムが信じられないと言いたげな顔で私を見た。
「おまっ、なんで挑発なんかするんだよ!」
「援護してあげようかなーと思って」
どうやら私の援護は物足りなかったらしい。あれ?でも大男は顔を真っ赤にして私を睨んでる。結構効いてると思うんだけど。
すると大男がまた話しかけてきた。
「おい……餓鬼。荷物と嬢ちゃんを置いて行けば、命は助けてやるぞ?どうやらその嬢ちゃんは怖い目に遭いたいらしい」
「この子に手を「もう怖い目に遭ってるわよ?あー怖い怖い、その胸当てを着けちゃう貴方のセンス怖いわー。あ、もしかして怖がらせるためにわざと着けてるの?」」
ぷるぷる頬を引き攣らせながら、ギロッと私を睨んできた。
「お、おいシャラ。胸当ての好みなんて人それぞれだろ!おっさんが変な胸当て着けてても、それはおっさんの好みなんだから別にいいだろ!いい加減にしろ!」
「何よ、トムだって今変な胸当てって言ったじゃない。心の中でダサいって思ってたって事でしょ?」
「思ってても言っていいことと悪いことがあるだろ!……すみません俺ら金目のものなんて持って無いので、見逃してくださ」
何気にトムが天然毒舌だった。トムが言い終わる前に、大男は我慢の限界を超えたらしい。
「てめぇら、揃いも揃って馬鹿にしてくれるじゃねーか……野郎はぶっ殺して、女は奴隷商にでも売っぱらてやる!」
大男がキレた。
野郎ぶっ殺してやらあああああああっ!!




