女魔王、起床
前回のあらすじ:サブタイトルが思い付かない
うーん……眩しい。これじゃ寝られないじゃない、全く。
いつの間にか眩しい光を浴びていた私は、目を開けた。
目を擦りながら起き上ると、木々の隙間から朝日が見えた。……あれ?
「あ、起きたか?おはよう」
声を掛けられて振り向くと、トムが小さな鍋の中身をかき混ぜていた。
「うん、おはよう……もしかして私、ずっと寝てた?」
よく見るとトムの目の下には隈が出来ている。
「ああ、昨日水汲みから戻ってきたら、寝ちゃってたから。起こすのも悪いしね」
ほう。眠っている女の子を起こさずに、黙って一晩中火の番を続けるとは。
中々の紳士だ。次の日に疲れを残してしまうから、旅人としては失格だけどね。
「起こしてくれれば火の番交代したわよ?」
流石の私も、それくらいはする。働かざる者食うべからず、だ。
「いや、シャラ疲れていたみたいだし。一晩位なら大丈夫だ」
そう言ってトムは笑った。うーむ、善人過ぎて危なっかしいな。大きな町でやっていけるのか?
つい性にもなく心配してしまった。
「よしできた、軽く食べて出発しよう」
木製の器にスープを注ぎ、一切れのパンと一緒に、昨日と同じ笑顔で渡してくれた。
何か変な気分。
礼を言いつつスープを飲む。具は野草と千切った干し肉とかだった。
「……美味しい」
「そりゃ良かった。こう見えて料理はそこそこ出来るんだ。見直した?」
何故こんな貧相なスープが美味しいんだろう?もっと具沢山で手間をかけて作られたものを食べたことがあるが、ここまで美味しくなかった。ドヤ顔をするトムを無視して考えてみる。
やはり久しぶりに食べたからだろうか?
全部食べ終わるまで考え続けたが、分からない。
トムが食器を洗い、片付けをするのを眺めながら考え続けるが、やはり分からない。
トムのくだらない話を適当に流しつつ、考えるが……何時まで経っても答えは出なかった。一体何故なんだ?
ま、美味しいのなら良いか。
私は考えるのをやめた。
「よし、じゃあ出発しようか」
どうやら私が考えている間に、準備が整ったらしい。荷物と鞄を背負い、トムが私を呼んだ。
「そうね、道案内頼んだわ」
私も立ち上がってトムがいる方へ向かう。
その時、トムは何かに気付いたらしく、私の足元を見ながら不思議そうな表情で聞いてきた。
「あれ?シャラ……靴はどうしたの?」
トムが凄く主人公臭い。でも所詮トム。




