女魔王、食べる
前回のあらすじ:ちょろいトム
「冗談よ。私はシャラっていうの。よろしく」
あんまりからかいすぎるのも良くないと思い、引き攣った笑顔で固まるトムに、素直に自己紹介をする。
焚火が焚いてある地点まで向かいながら、雑談を交わす。なんだかんだで千年ぶりの会話は楽しかった。ちなみにトムは私がからかって怒っても、反省した表情で「じょ、冗談よ……ごめんね?」と謝ると、顔を赤くしながら許してくれるどこまでも良い奴だった。
聞いた話によるとこの純情少年は、騎士を目指して試験を受けに行く道中なのだとか。ご苦労なことだ。
てか騎士団とかなつかしいわね。よく壊滅させてたわ。
「ねぇ、何か食べ物くれない?ここ最近まともなもの食べてないのよ」
食べ物をねだってみた。今の私は背が低いから自然と上目遣いになる。私の視線を受けたトムは、赤くなって「お、おう、保存食とかしかないけど……」と答えた。
ケチるようなこと言ったら、殴ってやろうと思っていたが、そんなことはなかった。すでに私の魅力の虜か。
野宿場所に到着し、焚火の明かりのおかげでトムの容姿がはっきりと確認できた。髪は茶色で癖っ毛。体格が良く、今の私の倍近い身長がある。顔は……決して悪くはない。が、いかせん地味だ。もう少し顔が良ければ旅の連れにでもしてやったのになぁ。
動きやすそうな服装をしているが、防具は着けていない。腰に差している剣を外すと、村人Aにしか見えないわね。
ま、トムで遊びながら町まで行くのも楽しそうだ。つまらなそうなら場所だけ教わって、飛んで行こうと思ったが、このまま一緒に行こうっと。
私が値踏みしている事に気づかないトムは、大きな鞄の中からパンやら干し肉やらを取り出している。こいついずれ人に騙されて不幸になりそう。
座れそうなものが無いので、地べたに座って、なんとなく夜空を眺めながら待っていると、トムが
笑顔でパンを差し出してきた。
「硬くて口に合うかわからないけど、どうぞ。あと干し肉とチーズもあるから炙って食べるといいよ」
「うん、ありがとう。トムはもう食べたの?」
硬くてぼそぼそしているパンを食べながら、たまに干し肉やチーズを齧る。ん、このチーズ中々美味しい。
「さっき食べたよ。湖で水汲んでくるから」
そう言うとトムは、水筒用の皮袋を持って駆け足で去って行った。
もし私が盗人で、荷物を盗んだらどうするつもりだ?不用心すぎるのよね。
最後の一口を飲み込み、ふぅ、と一息つく。
何か眠くなってきたし、トムが帰ってくるまでちょっと寝てよっと。
トムの荷物を枕に、私は目を閉じた。
あ、別に私は不用心ではない。盗られたら取り返すし、襲われそうになったら……言うまでもない。
サブタイトルが思い付きません。
しかも最近執筆進まない……orz




