女魔王、ちょろい奴と出会う
前回のあらすじ:トム
岩に隠れていると、体格の良い少年が森の中から現れて、私の服を見つけた。
そこで私は、この少年に拭くものを借りることを思いつき、無事体を拭うことに成功した。
着替えを終えて、少年の前に姿を現すと、キョトンとした表情で見つめてきた。見惚れたか?
少しからかってやろうか。
こいつが覗きをしていないのは知っているが、この純朴そうな少年をからかったら面白い反応をしてくれるかも。
私は軽蔑の眼差しで少年を見ながら、吐き捨てるように言った。
「なにアホ面してんの?ほら、土下座しなさいよ。覗いて申し訳ありませんでしたって」
「だ、だっから覗いてねーって!!」
顔を真っ赤にして必死に叫んできた。初心でかわいい。
「はいはい、冗談よ冗談。手ぬぐい返すわ」
にっこり微笑んで手ぬぐいを渡すと、真っ赤な顔で目を逸らして受け取った。ちょろい。
ふふふ、私の微笑みを見れるとは幸せな奴だ。
「……はぁ、君みたいな小さい女の子が何でこんな所にいるんだ?」
視線を明後日の方向へ逸らしたまま聞いてきた。小さい女の子、と明らかに年下にみられているのは気に食わないが、この姿では仕方ない。
「秘密。いろいろ事情があるのよ」
説明なんかしない。適当な理由を考えるのも面倒くさいし。
「そ、そうか、うーん……このまま置いて行く訳には行かないし……どうしようかな」
そう言って少年は頭を掻きながら、考え込んでいる。どうやら私を助けようとしてくれるらしい。
お人よしな奴だ。
ま、こんなにかわいい女の子を心配するのは当然ね。
「私を助けるつもりなら、近くの村とか教えてよ。それだけ教えてくれれば一人で行くわ」
「一人でって……女の子一人じゃ危ないだろ」
この私が餓鬼に心配されるとは、世も末だ。
「よし、じゃあ俺の目的地のミトノまで送って行くよ」
勝手に結論を出したようだ。ミトノとか言う町まで送って行ってくれるらしい。
まぁ良いか。夕飯くれるかもしれないし。なによりからかい甲斐がある。
「じゃあお言葉に甘えて、送ってもらおうかしら」
「おう、責任もって君を連れて行くよ!俺の名前はトムっていうんだ、よろしくな!」
少年がはにかみながらで握手を求めてきたから、私も笑顔で答えてやった。
「気安くしないでくれるかしら?」
差し出された手を軽くたたいて払うと、少年の笑顔が引き攣った。うむ、なかなか面白い奴だ。
と言うことで私は、ミトノまでこの餓鬼と行動を共にすることになった。
おめでとう!トムがなかまになった!




