トム、女の子と出会う
前回のあらすじ:トム
突然響いた声に驚いた俺は、抜刀して大きな声を出してしまった。
「だ、誰だ!何処にいる!?」
「うるさい餓鬼ね。岩の後ろよ。あ、覗いたら引き裂くからね?」
岩の裏か……なんでそんなとこにいるんだ?
そう問うと、「水浴びしてたらどこかのエロ餓鬼が覗きに来たから、隠れたのよ。そんなこともわかんないの?バラされたいの?」という答えが返ってきた。
随分物騒なことを言う人だな。女冒険者かな?……っていうかエロ餓鬼?え、それってもしかして俺?
覗きに来たわけじゃないのに、なんだか本当に覗きをして見つかった気分になって、顔に血が上ってしまった。俺は覗きなんてしないと、慌てて弁明する。
「違うって!飯を食ってたら音がしたから見に来ただけであって、覗きないって!」
「飯……?ふーん……まぁ良いわ。拭くもの何かある?」
「え、うん。あるけど」
どうやら、拭くものがなかったらしい。剣を鞘に戻し、手ぬぐいを取り出す。
「じゃあそれをこっちに投げて、あっち向いてなさい。振り向いたら消し炭にするからね?」
言われた通りにし、岩の反対方向を向く。すると布の擦れる音が聞こえ始めた。
え、どうしようこれ?すごく居ずらい。
しかし、離れるタイミングを逃しているため、いまさら動けない。
変な想像をしないように、月を眺めることに集中した。すでに警戒は解いている。
しばらくすると服を着始めたのだろう。ごそごそと音が聞こえる。
「もういいわよ」
振り返る許可を得たので、振り返ってみると。
そこには気怠そうな表情をした、天使のような……幼い女の子がいた。歳は十歳位かな?髪と目の色は薄暗くてもわかるほど鮮やかな赤色で、月明かりに照らされた肌は、薄く発光しているような錯覚を感じる程綺麗だった。
かわいらしい服と合わさって、絵本の中に出てくるお姫様のような見た目だ。背丈は俺の半分を越えた位だ。
ドレスの袖が短い為、白い腕がみえる。目に毒、いや薬……つい見とれてしまった。
どこかの貴族のお嬢様だろうか?……というより、なんでこんな夜の湖に一人で水浴びなんかしていたんだ?たとえ夜じゃなくたって、こんな可愛い女の子が一人で出歩くなんて普通じゃない……もしや捨て子!?いやしかしこんな高級そうな服を着ているし……?
「なにアホ面してんの?ほら、土下座しなさいよ。覗いて申し訳ありませんでしたって」
思考の海に沈みそうだったのが、目の前の女の子の言葉で中断された。
可哀想な虫を見る目で、土下座を催促してきた。かわいい容姿が台無しだ……って。
「だっから覗いてねーって!!」
顔を真っ赤にして叫んだ。俺は無実だ。
次回からシャラ視点に戻ります。




