女魔王、水浴びをする
前回のあらすじ:墜落した
ドサッという衝撃音が響き、背中から地面に激突した。
「あーあ、またやっちゃったわ……」
着陸は苦手だ。背中がじんじんと痛む。
まぁ別にこれ位大した怪我じゃないし、たとえ大怪我をしてもすぐ治るから大丈夫なんだけどね。
痛みを堪えて立ち上がり、湖へ視線を向ける。
水面は波で揺れていて、月明かりを不規則に反射して幻想的に輝いていた。水は澄んでおり、浅いところなら月明かりでも十分湖底が見えるほどだ。水に触れるとかなり冷たかったが、私は暑さや寒さに耐性があるので、全然平気。
渇き始めた獣の血と着陸時に着いた泥をよく落とすため、ドレスを脱いで湖畔にある岩の上に置き、魔翼を解く。そのままの一糸纏わぬ姿で湖に浸かった。
もし誰かが私の裸体をのぞいたら、四肢を千切った後、すり潰してやる。
「ふう、気持ち良い……」
始めに腕や顔をよく洗い、次に長い髪にべっとりと付着した血を丁寧に落とした。あとは全体をくまなく洗い流す。
胸を洗ったとき、改めて幼児化した実感が湧いた。
千年前、天高くそびえ立っていた山は……大平野になっていた。地平線が見える。
はぁ……と、思わずため息をついてしまった。
「月は千年経っても変わらないのにね……」
湖に映る月と我が身を比べて、呟く。
まぁ、時間が全てを解決するのだ。もう何も言うまい。
汚れも落ち、景色も十分楽しめたのでそろそろ岸に上がることにした。
岩の上のドレスに手を伸ばそうとした時、ふと気付いた。
「あ、体拭くもの無いわ」
下半身が湖に浸かったまま、手を伸ばした姿勢で固まる。
周囲を窺うが、布なんてあるわけない。
「……ちっ」
思わず舌打ちしてしまった。仕方ないので、出来るだけ水を払ってからそのままドレスを着ようと……ん?
人の気配がする。これは……誰かが近づいてきているわね。
急いで岩の裏にしゃがみ、隠れた。この体なら簡単に身を隠せる。
もしかして焚火を焚いた奴か?
うーん……お色気が表現できません……。
次回、トム襲来!




