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お気に入り小説5

人形を妻と呼ぶ家族にうんざりしたので、家族ごと更生させたら私も婚約できました。

作者: ユミヨシ
掲載日:2026/05/10

王太子に無視され続けた公爵令嬢、エストリアの人生は王宮の広間で華麗に花開く。

人形を妻に持つ変人公爵は、婚約破棄された公爵令嬢を愛する。

の娘ジョセフィーヌのお話です。二つを読まなくても楽しめます(#^.^#)

「君とは白い結婚をしたい。それでもよければ婚約を結んでくれないか」


そう言われて、承知しましただなんていう女性はこの王国ではまずはいない。

いかに政略とは言え、愛こそ至高、妻を愛さない男性は屑だ。

というのがこの王国の風潮だった。


だから、ジョセフィーヌ・ハーベリンゲン公爵令嬢は頭を悩ませていた。

兄のルイス・ハーベリンゲン公爵令息がこれまた、どうしようもない男なのだ。

それは両親が原因であった。


父ヘンリー・ハーベリンゲンは人形師で、自分の趣味で作った人形を30体以上持っており、全て自分の妻だと公言して憚らない。


母のエストリアもアーレスという小さい人形を昔から大切にしており、父の人形も妻だと言う公言を許している。


かといって、父は母もとても大切に愛していて二人の仲は良好だ。


ジョセフィーヌにとってみれば、人形が妻だ??なんて薄気味悪い。

母もアーレスが大切? いやいや、そこまで人形にのめり込む気持ちが解らない。

そりゃ父が作る人形は素晴らしく、中には等身大の女性の人形も沢山あるけれども。

ジョセフィーヌにしてみれば、


薄気味悪い


の一言である。

父は母と共に、人形たちにアクセサリーや、ドレスを買って飾り付けて楽しんでいるが。

人形に買うなら、わたくしに買ってよ。


人形がなんであんな凄い首飾りをしているのか理解できない。

わたくしがあのマリアーテとかレイラとか名付けられている人形が着けている首飾りやドレスが欲しいわ。


でも、父は許してくれなかった。


「お前はまだ16歳だろう。あんな豪華な首飾りを必要としていない。学業を頑張りなさい。

マリアーテやレイラ、他の妻たちにあげた首飾りやドレスを欲しがるなんて、なんて卑しいんだ」


母も呆れたように、


「ヘンリーの言う通りだわ。あれはマリアーテやレイラの物。貴方の物ではありません。貴方がもっと大人になったら、首飾りを買ってあげます。ですから、卑しく取ったらいけないわ」


ジョセフィーヌは、両親に向かって、


「マリアーテ達は生きていないじゃないの。わたくしは生きているのよ」


そう言ったら二人は固まって、


「マリアーテ達は生きている。私の大切な妻たちだ」

「そうよ。マリアーテ達を侮辱しないで頂戴」


頭が痛くなった。

わたくしだってもう16歳。オシャレのしたい年ごろよ。

そりゃ、王宮の夜会にデビューするのはまだ早いけれども。

あの豪華なマリアーテの着けている首飾り、欲しいわ。エメラルドよね‥‥‥

わたくしが着けてもいいわよね。


人形たちがいる部屋に忍び込んで、マリアーテが着けている首飾りを外して、自分の首につけてみた。


なんてキラキラして綺麗なのでしょう。

なんでマリアーテなんて着けさせているの。

わたくしが着けた方が、嬉しいし、マリアーテなんて着けたって人形なのだから喜ばないわ。


忍びこんで首飾りを着けていたのをメイドに告げ口されてしまい、両親に怒られた。


「マリアーテの物を盗るだなんて。なんて娘だ。お前は」

「そうよ。マリアーテが悲しむわ。そうでしょう」


あまりにも悲しかったので、エメラルドの首飾りを投げつけて、


「こんな家、出て行くわ。わたくし、王立学園の寮に入ります。人形達と暮らしたくないわっ」


そう言ってから一月過ぎて、今、ジョセフィーヌは王立学園の寮暮らしだ。

公爵令嬢だけあって、広い部屋で快適に過ごしてはいるが‥‥‥


親友のクラウディア・マルデ公爵令嬢。

兄のルイス・ハーベリンゲン公爵令息と今回、婚約を結ぶ事になった。


ルイスは18歳。金髪碧眼でそれなりに整った顔立ちをしているが、婚約者を作るには遅い年ごろだ。

クラウディアは16歳。以前、婚約が決まっていた令息が素行が悪かった為、婚約破棄をした。いまだ婚約者がいないルイスと婚約することにしたのだ。


そのルイスが両親の影響をもろに受けていた。

父と一緒に人形作りにはまり、10体、丹精込めた人形を作って自室に飾っている。


ルイスはジョセフィーヌに、


「私は結婚しない。なんせ妻たちが既にいるからな。この妻たちに、先行き、首飾りを買ってやるんだ。今は簡素なドレスしか着ていないが、ドレスも豪華にして飾り付けて。あああ、ラディア、フェリシア、ルイーゼ。皆、なんて美しいんだ」


特に等身大に作られた三体が、ルイスのお気に入りらしい。


クラウディアとはクラスも同じで、何でも話し合う仲だ。

クラウディアの以前の婚約者の酷かった愚痴を散々今まで聞いてあげていたのだが、

クラウディアはテラスで紅茶を飲んで一言、


「君とは白い結婚をしたい。それでもよければ婚約を結んでくれないかって言われたのよ。ルイス様に」


この王国では女性を大切にしない男は屑だという風潮がある。

それは以前、ラピス国王が、婚約者だった女性、ジョセフィーヌの母であるエストリアを無視して女神レティナ像ばかり話しかけていたことが発端だ。

あまりにも酷い仕打ちに母エストリアは病んでしまった。


当時、王太子だったラピスの評判は下がったが、跡継ぎがラピスしかいなかったため、現在彼が国王である。政略で隣国から王女を妻に迎えたが、我儘な女性で、彼女が王妃だが評判は最悪だ。


それなのに、兄ルイスは自分の生き方を曲げようとしないのだ。


「父は母を大切にしているけれども、私は妻たちを大切にしたい。だから、クラウディア。君とは白い結婚でよければ結婚したい」


クラウディアは断りたかったが、両親がハーベリンゲン公爵家との婚姻ならと承諾してしまった。


兄ルイスは、クラウディアの事をちっとも大切にしていないのだ。

ジョセフィーヌは頭に来た。


さんざん、人形ばかり大切にしてきた両親に頭に来ていたのだ。

それでも両親は自分や兄にも愛情を注いでくれた。

父と母の仲はとても良好である。


それなのに、兄は、クラウディアを不幸にしようとしている。


クラウディアに相談を受けて謝った。


「兄がご迷惑を。本当にうちの家族はどうしようもないわ。わたくしも変人に見られているのかしら。まったくもって人形に興味もないのに」


クラウディアは笑って、


「そうよね。貴方、人形が大嫌いですもの。はぁ。この婚約、解消したい。貴方と姉妹になれるのは嬉しいけれども、白い結婚は嫌だわ」


ジョセフィーヌは頷いて、


「女性を大切にしてこなかった男は屑だわ。国王陛下もうちの母が婚約者だった時に、女神像ばかり話しかけて母を無視していたそうよ。本当に屑中の屑。決められた婚約者と交流するのが嫌だったんですって。だからって母を無視して。母は父と知り合って救われたらしいけど。うちの両親もどうしようもないわ。人形狂いで。わたくしが首飾りをちょっと借りただけなのに、怒る怒る。これはマリアーテの首飾りだって。マリアーテが着けたって誰も見てくれないのにね」


クラウディアはため息をついて、


「貴方から色々と聞いているから。ルイス様と結婚したくないわ」



そこへ、クラウディアの兄、カイド・マルデ公爵令息がやってきた。

カイドは最近、留学から帰って来たばかりだ。

隣国は色々と進んでいるので、半年程、留学していた。

そして王立学園に戻って来たのだ。


クラウディアと同じ黒髪碧眼のカイドは、


「二人とも暗い顔をして。ルイスの事で悩んでいるのか?」


彼とはあまり交流がなくて、声をかけられて驚いた。

妹クラウディアが心配で声をかけてきたのだろう。


ジョセフィーヌはため息をついて、


「そうなんです。カイド様。何かいい案ありませんか?うちの両親も兄も人形好きの変人で。このままではクラウディアが不幸になります」


カイドは頷いて、


「ルイスはどうしようもないな。それなら、我がマルデ公爵家でパーティを開くから、そこで君の両親とルイスを招待して、目を覚まして貰うとするか」


クラウディアが目を輝かせて、


「良い案があるのですね。お兄様」


ジョセフィーヌも、


「協力致しますわ。なんでもおっしゃって下さい」




三人は相談し、ルイスとヘンリー、エストリア夫妻の目を覚まさせることにした。



マルデ公爵家のパーティに招待されて、久しぶりにジョセフィーヌは家族とあった。

ヘンリーもエストリアも、ルイスもオシャレをしてやってきた。


マルデ公爵夫妻が出迎える。


「ようこそ、我が公爵家のパーティに」

「楽しんでいって下さいませ」


ヘンリーは優雅に、

「ご招待有難うございます」

エストリアもにこやかに、

「今日は楽しませて頂きますわ」

ルイスも、

「ところで、クラウディアやジョセフィーヌは?」



庭の中央に、二体の人形が立っていた。

顔は無表情、カツラを被っているが、髪色だけ金髪のジョセフィーヌと黒髪のクラウディアに似せてあるが、ただドレスだけは豪華な二体の人形が立っている。


三人に向かって、にこやかにカイドは、


「二人が庭で待っております。お相手をお願いします」


ルイスが怒って、

「人形じゃないか」


ヘンリーも、

「なんて出来の悪い人形だ。まるで二人に似ていないじゃないか」

エストリアが慌てたように、

「貴方、突っ込むところはそこですか?ともかく、何故、人形なのですか?」


カイドは、


「三人は人形が大好きなんでしょう。特にルイス殿は妹クラウディアと婚約を結んでおきながら、人形達を妻にするから、クラウディアとは白い結婚をと。酷すぎませんか?この王国では女性を大切にしない男性は屑だと。ラピス国王陛下がやらかした事をお忘れですか?

ハーベリンゲン公爵夫人が婚約者だった時に、女神レティナ像ばかり話しかけて無視していたそうですね。それで公爵夫人は心を病んだとお聞きしました。

女性を大切にしない男は屑だ。

ルイス。貴方は妹を不幸せにするのか?

妹は人形以下か?

そんなに人形が良いのなら、妹の代わりに、この人形を婚約者にするがいい。

ジョセフィーヌ嬢も、そんなハーベリンゲン公爵家に愛想をつかして寮生活をしているのだろう?

だったら、皆様に二人は会う必要はない。

貴方達は人形に話しかけ、人形と交流し、人形を愛して暮らせばいい。

そうでしょう?」



カイドの言葉に三人は黙り込んだ。


ルイスがやっと口を開いた。


「クラウディア嬢を見た時に、とても素敵な令嬢だと思った。でも、私はあまり人と交流してこなかった。ハーベリンゲン公爵位を継ぐのに。クラウディア嬢とどう接していいか解らなかった。だから、人形に逃げていたんだ。すまなかった。どうか、クラウディア。出て来て欲しい。それからジョセフィーヌ。ごめん。兄として妹にも会いたいよ」


ヘンリーも、


「私の影響だな。本当に申し訳ない。クラウディア嬢を傷つけてしまった。ジョセフィーヌにも酷い事をした。どうか出て来て欲しい」


エストリアも、


「わたくしは以前、ラピス国王陛下に無視されて本当に辛かったのですわ。それを救ってくれたのが、ヘンリーなのです。ヘンリーは人形を愛しながら、わたくしも愛して下さいましたの。ルイス。クラウディアを泣かせては駄目よ。ああ、それからジョセフィーヌ。悪かったわ。貴方を人形より優先しないとならなかったのに。お願いだから顔を見せて。お願いだから」


ジョセフィーヌとクラウディアが出てきた。

ジョセフィーヌは金の髪に緑のドレスを着て、

クラウディアは黒髪に青のドレスを着て、


ルイスはクラウディアの手の甲に跪いてキスを落とし、


「私が悪かった。これからはクラウディアを大切にする。どうか婚約を続けて欲しい」


「反省したのなら良いのです。わたくしを大切にして下さいね」


ジョセフィーヌは両親の元へ駆け寄った。

二人はジョセフィーヌを抱き締めてくれて、


「すまなかった」

「反省したわ。だから寮から帰って来て頂戴」


ジョセフィーヌは二人が反省したようなので、


「解ったわ。家に帰ります。わたくしもお父様お母様とこうして会えて嬉しいわ」



全てがすがすがしい春の日の出来事であった。



ジョセフィーヌは、帰り際、カイドに礼を言った。


「貴方のお陰で、わたくしもクラウディアも救われたわ。有難うございます」


「いや、クラウディアが心配だったから。それに君もね」


「わたくしはついでですか?」


「クラウディアの大切な友達だから」


なんだか、心が痛んだ。

大切な友達だから?それだけ?


カイドとは今までほとんど、話したことがない。

留学していて戻って来たばかりだからだ。


彼は自分を救ってくれたのだ。

なんて頼もしい。なんて素敵な。


カイドの事が知りたい。

もっともっと知りたい。



ジョセフィーヌはそう思った。


兄ルイスについて行き、マルデ公爵家に訪れた。

ルイスがクラウディアと交流している間に、カイドに面会を求めたら会ってくれた。


手土産の焼き菓子を手渡して、


「この間のお礼ですわ。少し、お話しません?」


「私も君と話をしてみたい。そう思ったんだ」


マルデ公爵家の薔薇は今が満開だ。

色とりどりの薔薇がとても美しい。


庭の小道を歩きながら、二人で無言で薔薇を見ていた。

何を話していいのか解らない。


カイドはジョセフィーヌに、


「私はこれから婚約者を探さないとならない。マルデ公爵家を継ぐ為にね」


「そうなのですか」


「君に婚約者はいるのか?」


「いないです。わたくしも婚約者を探さないと。今まで両親や兄の事があって、それどころじゃなくて」


「君の兄が私の妹と結婚する。家同士の結びつきが強くなって何よりだ。ハーベリンゲン公爵家は名門だから我がマルデ公爵家としては有難い」


「そうですわね。両親も喜んでおりました」


「それでその‥‥‥私もそろそろ婚約者を探さないとならなくて」


「聞きましたわ」


「君はとても美しいのだな。妹から君の事は聞いている。私は君に興味を持っているんだ」


「まぁ、わたくしに興味を?」


「そう。君は甘い物が好きなのか?実は私も甘い物には目がなくて」


「そこに興味があるのですか?」


なんだかじれったい。この人は何を言いたいのだろう。

だから言ってやった。


「兄とクラウディアが結婚するので、本当に両家の結びつきはめでたいですわね。もし、わたくしが貴方の事が好きで婚約したいと言っても、あまり意味がありませんわ。他の家の男性と結びついた方が、政略的に得ですから、両親も喜ぶ事でしょう。諦めなくてはなりませんわ。貴方への想いを」


「え?私の事が好きなのか?」


「わたくしとクラウディアを助けて下さいました。貴方の事がその時から‥‥‥気になって。もっと貴方の事を知りたいのです。でも両親が反対しますわね」


「私も君の事が気になって。クラウディアから聞いていて気になって。会ってみてあまりにも素敵な令嬢だから、結婚したいなと思ったんだ」


「だったら、お付き合いしましょう。貴方の事をもっと知りたい。知りたいのです」


「嬉しいよ。ジョセフィーヌ。ああ、でも急がないとお互いに、婚約者を決められてしまうね」


「でしたら、急いで婚約致しましょう」


クラウディアがカイドの事をいい兄だと言っているのだ。

間違いなく良い人だろう。

別の人と結婚するのは嫌。


それからカイドと何度も会って話をした。

話をしていくうちに、互いの価値観が近い事が解った。

カイドはしっかりしていて、とても頼りがいがある男性だ。

だから、カイドの方から二週間後、


「両親は説得して了解を得た。どうか私と婚約して欲しい」


そう言われた時に涙が出るほど嬉しかった。


「喜んで。カイド様。嬉しくて嬉しくて」


カイドに思わず抱き着いた。


兄のルイスが味方になってくれて、ヘンリーとエストリアも、二人が婚約を結ぶ事を渋々認めてくれた。


それから一月後、カイドとジョセフィーヌは婚約した。


同じ家同士が結びつくのはあまり政略的には良くないが、二人の熱意に両家が折れた。


クラウディアも味方になってくれて、背を押してくれた。

あれからルイスとの仲も良好でクラウディアは幸せそうだ。



王立学園を卒業したら、ルイスとクラウディア、カイドとジョセフィーヌ、それぞれ結婚することになっている。


相変わらず家には人形が置いてあるが、父ヘンリーが、人形マリアーテの首飾りをジョセフィーヌにプレゼントしてくれた。


「愛しい我が娘を優先させねばならないのに、今まですまなかった」


「いいのです。この首飾り、ずっと欲しかった。有難うございます」


綺麗なエメラルドの首飾りを着けて、ジョセフィーヌは今、幸せだ。

デビュタントはこの首飾りにしようかしら。

カイド様にエスコートされて踊る夜会が楽しみだわ。


心はとても晴れやかで。

初夏の風が窓から入って来て、ジョセフィーヌは幸せを感じるのであった。








二つの人形が庭に立っている姿を見た時に、エストリアは胸が抉られる思いがした。


ジョセフィーヌが家を出て行った時に、人形の良さを解らない娘に対して、止める事が出来なかった。

エストリアにとって、人形愛は自分の人生の全てだ。

ラピス王太子にお茶会で女神像ばかり話しかけて無視された時は辛かった。

それを救ってくれたのが、アーレスという人形だ。

貴族服を着たアーレス。その人形を庭に立たせて、楽しむことで心を逃がすことが出来た。

そしてヘンリーと知り合って、ヘンリーの優しさに惹かれて行った。

ヘンリーは自分の作った人形を妻だと、愛でていたけれどもエストリアの事も大事にしてくれていたのだ。


だから、人形が全て。人形を一生、ヘンリーと共に愛していきたいの。

そう思っていた。


だからジョセフィーヌが出て行ってしまっても、止めることが出来なかったのだ。

でも、今日、マルデ公爵家の庭で立っている無表情の人形を見た時。


「皆様に二人は会う必要はない。

貴方達は人形に話しかけ、人形と交流し、人形を愛して暮らせばいい。

そうでしょう?」


とカイド・マルデ公爵令息に言われた時に思ったのだ。


ジョセフィーヌに二度と会えない?

生まれた時はとても可愛かった娘。

今も、寮生活をしていて、不便がないように、部屋も広い部屋を手配して。

心配していた娘。


確かにアーレスや、ヘンリーの妻たちは自分にとって大切な人形だ。

人生の全てだ。

でも、それ以上に、娘の屋敷での姿が思いだされて‥‥‥


いつもいつもいつも寂しそうで、いつもいつもいつも悲しそうで。

わたくしは人形が好き。わたくしを救ってくれたから。

ヘンリーが好き。息子のルイスも愛しい。

あああああっ。でもジョセフィーヌ。ごめんなさい。

貴方と一生会えないなんて、悲しすぎる。


だから、ヘンリーとルイスとマルデ公爵家から戻って改めて話し合った。


ヘンリーは、


「確かに、妻たちは大事だが、ジョセフィーヌの心の傷を私達は思いやった事がなかった。ずっと寂しそうなそんな顔をしていて。あの庭に立っていた人形を見て反省したよ」


ルイスも頷いて、


「私も馬鹿な事を言ったものだ。クラウディアを傷つけていたんだな。妻たちを優先したいだなんて。母上。母上の昔、受けた心の傷も解ります。でも、だからといって、クラウディアやジョセフィーヌより、人形を優先してはいけない。確かに精魂込めて作った人形は愛しいけれども、それでも‥‥‥あの二人は生きているんだ。あの庭で人形が立っていた時ぞっとした。私も反省したよ。これからはクラウディアを大事にしていきたい。ジョセフィーヌに対しては良い兄でいたい」


エストリアは頷いた。


わたくしの心の傷の為に、ジョセフィーヌを犠牲にしてきた。

今からでも遅くはない。貴方との仲を修復していきたい。


ああ、ジョセフィーヌ。ごめんなさい。

悪い母親でごめんなさい。


ヘンリーとルイスと共に貴方にこれから償っていきたいわ。

愛しているわ。わたくしの娘、ジョセフィーヌ。



ジョセフィーヌは、両親と兄と和解した。

カイドと結婚後も、時々、ハーベリンゲン公爵家に帰り、家族と交流を持ち続けた。


ジョセフィーヌも、クラウディアも、夫に愛されて、家族に愛されて、幸せな日々を送ったと言われている。




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