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7話 春のパン祭り

 春の戦争、いや春のパン祭りが始まった。

 それは、主婦たちにとって“白いお皿”を巡る血で血を洗う戦いの始まりだった。

 間違っても"赤い血"を廻る水で皿を洗う戦いではない。


「トモちゃ〜ん、今週のノルマはあと3点よ!あと3点で“あの皿”が手に入るの!」


 母さんは、パンの袋を両手に抱えて帰ってきた。

 その目は、完全に“狩人”のそれだった。


「いや、そんなにお皿なんていらないでしょ!?去年のも一昨年のも使わずにとってあるじゃん!」


「違うのよ、これは“戦果”なの。白い皿は、勝者の証、トロフィーなのよ。あの棚に並べることで、町内会のヒエラルキーが決まるのよ!」

「そんな戦いだったの!?パン祭りって!?」

「しかも今年は、佐藤さんが“20枚目指す”って言ってたのよ。負けられないわ…!」


「いや、20枚って食パン何枚分だよ…!」


「計算したわ。だいたい冷凍庫3つ分。だから今朝、冷凍庫をもう1台増設したの。“パン専用冷凍庫”よ」

「パン専用!?」


「大丈夫。パンを焼くときの余熱で暖房代が浮くわ。これが“パン祭りエコロジー戦術”よ」

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