15話 布団干し
パーン! パーン!
母さんが布団を叩く音が、今日もご近所に響き渡る。
いや、正確には「布団を撃ってる」音だ。
布団を撃つって意味が分からないと思うけど、布団たたきの代わりに拳銃を使っているのだから間違ってはいない。
「ダニはね、言葉じゃわからないのよ。実力行使あるのみ!」
ベランダでにっこり笑う母さんの手には、ピカピカに手入れされたコルト・パイソン。
その銃口が、ふわふわの布団に向けられる。
パーン! パーン! ぎゃっ!
……今、悲鳴、聞こえたよね?
「トモちゃん、そんなところに居ると流れ弾に当たっちゃうわよ〜」
「いや、今の“ぎゃっ”って何!? 誰かいたよね!? 布団の中に誰かいたよね!?」
「ええ、宅配の人。再配達が三回目だったから、ちょっとお灸を据えておいたの」
「それ事件じゃん!!」
「違うわよ、これは教育よ。最近の若い子は、玄関のチャイムを押すタイミングが甘いのよ。 ピンポンの“ポン”が鳴る前に逃げるなんて、礼儀がなってないわ」
「いや、ポンまで待ってたら撃たれるって思ったんじゃないかな!?」
母さんはにっこり笑って、銃口を空に向けてもう一発。
パーン!
「さ、今日も町のダニ退治よ」
「……ていうか、町のダニ退治って、まさか――」
「ええ、町内会から正式に依頼されてるの。『ダニ撲滅特別顧問』って肩書きもあるのよ」
「そんな役職、聞いたことないよ!?」




