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14話 新しい掃除機は吸引力が違います

 最近、母さんがやたらとご機嫌だ。

 どうやら新しく買った掃除機の吸引力がすごいらしい。


「もうね、水こぼしても一瞬よ! コップの水? 余裕余裕!」


 満面の笑みで語る母さん。

 ……いや、ちょっと待って?


「血しぶきが飛んでも気にしなくていいから助かるわ〜」


 さらっと物騒なこと言い出したんだけど!?

 母さん、何を吸ったの? 掃除機じゃなくて、良心とかじゃないよね?


「そうそう、この掃除機、すっごく頑丈でちょっとした武器にもなるのよ」


 そう言って、母さんは掃除機を軽々と振り回し始めた。

 そのとき、ちょうどお隣の豪徳寺さんが回覧板を持ってやってきた。


「大澤さん、回覧……」


 ボグッ!


 ……え? 今、何の音?


「ちょ、ちょっと母さん! 豪徳寺さんが……!」


 慌てて駆け寄るぼくの目の前で、母さんは掃除機のスイッチを入れた。


「大丈夫よ、任せて。こういうときのための吸引力なんだから」


 ゴォォォォォォッ!


 掃除機のノズルが、まるで意志を持ったかのように豪徳寺さんの頭に吸い寄せられる。

 血と一緒に、彼女の白髪がふわりと舞い上がった。


「ほら、見て。カーペットにシミひとつ残ってないでしょ?」


 満足げに微笑む母さん。

 掃除機のダストボックスには、赤黒い液体がちゃぷちゃぷと揺れている。


「これでまた、町内会の回覧板が遅れるわねぇ」


 ため息をつきながら、豪徳寺さんの手から回覧板をそっと引き抜く母さん。


「ま、ついでにこの掃除機のレビューでも書いておこうかしら。“人も吸える吸引力!”ってね」


 ……母さん、それはさすがにバレると思うよ。

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