底辺の教養講座 その④ 日本酒
日本酒は、恋愛です
共に歩めばすべての料理が
運命の出会いに感じるでしょう
平凡で素朴な食材が
煌めき輝く事でしょう
やがて酔いが醒めたとて
忘れることは無いでしょう
◇
【初級編】
初心者こそ良い日本酒を選びましょう
少し値が張る純米吟醸がおススメです
まずは軽く唇に触れましょう
甘い香りが
お米も果実の一種だと教えてくれます
(注釈:米は稲の果実です)
ご飯に合うおかずなら
全て日本酒の肴 (さかな) になります
少量を口に含んで味わうこと
ゆっくり時間をかけること
これが寛容かと思いましてよ、ホーホホホ!
なんなら塩だけでも美味しく飲めます
ですが食塩より岩塩をおススメします
仄かな雑味が味わい深く感じられます
海苔やふりかけ、ごま塩も悪くございません
なんたって、元はお米なのですから
佃煮?
塩辛?
ごくり……、そりゃもう、ねえ、ホーホホホ!
◇
【中級編】
飲む日本酒のグレードを下げましょう
銘酒を鼻高々に語る恥ずかしさを知りましょう
卑しい安酒の怪しい魅力を堪能しましょう
日本料理が肴に最適なのは言うまでもありませんが
フレンチやイタリアンも余裕で合わせられます
ビールの牙城は崩しがたいですが
ワインの支配地域は侵攻可能!
出陣じゃ!
ワシに続けい!
フォォー、フォォー (ほら貝)
なお、中華料理はビール軍が圧倒的に優勢
しっかりしろよ紹興酒
おでんが具材より
出汁こそ酒に合うと気付いたころ
あなたは知るのです
実は日本酒がヤバいってことに……
まずはアルコール濃度
ぶっちゃけ醸造酒では最強レベル
そして糖質
だって米ですもん
糖尿病加速飲料と言って差し支えないレベル
だから少しずつ飲めって言ったじゃん……
◇
【上級編】
雪積もる駅前の定食屋
引き戸から初老の男が入り
一番奥のカウンター席に座る
彼の頭に散らばる綿雪が
白髪と見分けがつかなくなった頃
男は湯呑を両手で握り
しゃがれた声で呟いた
「厚揚げの生姜焼き、あと、燗で」
カウンター越しの店主は終始無言
初老の男も注文以降は何も話さない
代わりにテレビのブラウン管が
八代亜紀を映し「舟歌」を流す
愛想も何もなく
男の前に皿が置かれ
厚揚げと燗酒が供される
ざくりざくりと厚揚げを噛みしめ
口に広がる生姜の香りを
徳利からお猪口に移した酒で流し込む
猪口を置き
背中を丸め
溜息を吐く
量が飲めるほど、若くない
銘柄を決めるほど、若くない
ただこうして酒を飲み
雪積もる帰り道を思い出さぬよう
酔いに耽るのだ
◇
ここから通常運転でしてよ!
日本酒に合わない料理は存在する
だが、それは突き詰めると
個人の好き嫌いに帰結する
しかし、底辺の教養講座と名乗っても所詮はエッセイ
ここは好き勝手、正直に書かせてもらおう
繰り返すが、所詮は個人の好き嫌いである
【酒粕】
無理。ていうか酒粕が嫌い。
日本酒関係なく食べることが出来ない。
匂い嗅ぐだけで走って逃げる。
【雲丹】
百歩譲って塩雲丹は食えなくもないが……
そもそも雲丹が美味しいと思ったことがない。
いや、一時期良さを知ろうと頑張ったんだよ?
寿司屋で船盛頼んだりして、相当量食べてきたんだよ?
でも、美味いともマズいとも思わなかった。
値段が凄く、味が薄く、潮の香り漂う謎の味噌
……というのが私の雲丹の評価。
【チーズ】
チーズは美味い。
食べると止まらない。
だが、酒に合うと思ったことがない。
ぶっちゃけワインに合うとも思ったことがない。
【カレー】
これが謎。
そもそもカレーはビールを含め酒に合わない。
カレー風味だと話は変わってくるのだが……
【スナック菓子】
スナック菓子をおかずにごはん食べれる?
ていうか私はスナック菓子でお酒が飲めないのだ。
日本酒以前の問題である。
そして大好物のコーラでもスナック菓子は食べない。
スナック菓子には牛乳一択。
【納豆】
いや、無いわ。
ありえんわ。
納豆に日本酒なんて無理。
ていうか米にも混ぜない。
納豆は単体で一気呵成に食べる。
◇◇◇
話題沸騰どころか一切の反応無し!
需要ガン無視の不定期連載!
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【貴族令嬢に乾杯 ~ふたりのワイングラス~】
第二話
(前回のあらすじ)
貴族令嬢のソフィアが成人の祝いに用意した白ワインは、姉と慕うルイーザ第二王女の銃撃事件で赤ワインへと姿を変え砕け散った。
◇
ルイーザ第二王女の葬儀には多くの参列者が訪れました。その中には第一王女であらせられますマリオン姫の姿もございます。彼女はしずしずと祭壇の前で手を合わせておりました。
その後ろからソフィアが、大きな白ワインを手に現れました。ルイーザに捧げようと用意したのですが、すでに予算が厳しいので安いサイゼリヤの、しかも飲みかけのボトル。
ですが仕方のないことなのです。
まず、サイゼリヤはワインボトルのテイクアウト販売を行っておりません。ですが、飲みかけのボトルを持ち帰ることは可能なのです。そして、サイゼリヤのワインは値段に釣り合わない高品質。となれば一口だけ頂いて、ボトルも持ち帰るしかないではありませんか。ある種、大人の事情なのです。
「うぃ……この美味しいワインを……ルイーザお姉さまに……」
すでに酔っているソフィア、手にするボトルはマグナム白ワイン1.5リットル。
ふらふらとした足取りで、マリオン第一王女の後ろから……
つる。
あ、足が……
バゴッ!
ガシャン!
白ワインのボトルは砕け、
赤ワインのような鮮血が祭壇に散りました。
頭をボトルで叩き割られたマリオン第一王女を、彼女のメイドたちが取り囲みます。
「なんじゃあ! われ貴族令嬢のソフィアやんけ! ルイーザの返し (報復) っちゅうわけか!」
参列に紛れていた故ルイーザ第二王女のメイドたちも集まってきました。
彼女たちはマリオン姫のメイドたちに向かって、声を張り上げました。
「じゃかぁしゃあ! おのれが先に弾いてきたんやろがい!」
混乱する葬儀場、割れたボトルを手におろおろするソフィアの肩を、故ルイーザ第二王女のメイド長が叩きました。
「ようやった、さすがは貴族令嬢じゃ、それでこそ妹分やのう」
メイド長は祭壇の線香を手に取り、口に加えたタバコに押し付け火を移し、ふところから取り出した自動小銃を天井に掲げ叫ぶのでした。
「おう、弔い合戦じゃ、外道のマリオン一家、皆殺しじゃあ」
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(気が向いたらつづく)




