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【世紀末覇王エッセイ】黒い安息の日々  作者: キャベツが主食の☆黒い安息日
なろうに来て間もない頃の悪戦苦闘 編
32/56

この素晴らしき世界に教養を!

ふぅ……


「文字塚」氏のエッセイを読み過ぎて寝落ちしてもた……


彼のエッセイがなんでここまで私を魅了するのか、その面白さの一部を自分なりに分析してみたいと思う。


逆に考えれば、つまらない小説やエッセイとは何か? 誤字脱字や文章力の拙さは、大きく足を引っ張るものの決定打ではない。ないと信じる。そうだよね? ね? そうだと言って! お願い!


つまらない作品とはすなわち、読む価値が無いと言う事である。価値とは何か。それは読者の主観にゆだねられるが、ある人は欠けた心を埋めたり、またある人は孤独に寄り添ったりする内容だろう。これは千差万別、人それぞれ。


しかし高確率で読者に価値を感じさせるものが存在する。それが教養である。元々興味がある事や、新たな好奇心を掻き立てる教養こそが、作品に血肉を与え面白く読ませる秘訣なのではないか。なろう系だのテンプレだのと批判される作品の多くはそこが欠落し、批判する側もまた欠けているので、お互い薄っぺらい争いに見えてしまうのではなかろうか。


では作品のディテールを詰め込めば面白くなるのか? 例えば女性キャラクターの着用するガーターベルトを詳細に描写すれば作品は面白くなるのか? うん、それは確実に面白くなると思う。でも一応そういう事ではないと言っておく。間違ってないとも思うけど。


逆に男性キャラクターの着用するブリーフの形状について詳細に描かれた作品があるとすれば読むだろうか? 私は読まない。読みたくない。心底面白くない。単行本ならゴミ箱に叩き込む。ただし局地的に熱心な読者層を開拓する可能性を秘めていることは否定できない。


作品における価値とは読む理由そのものであり、それはあてのない旅に誘う原動力である。目的地を定めずさ迷うのも一興、芸術的作品はまさにこの類だろう。教養は物語の行く先をナビゲートしてくれる。脳がもっと読め、もっと進めと指令する。極論すれば目的地に辿り着かなくてもいい。東京ディズニーリゾートに向かうつもりが廃墟の摩耶観光ホテルに到着した所で何の問題がある? 物語としてはむしろ大成功だろう。毛の生えたリアルミッキーがお出迎えだ。


「文字塚」氏のエッセイは底辺作家の私にとって最高に面白いビルドゥングスロマンであり、リアリティに溢れる教養小説でもあるのだ。エッセイだけど。誤解のないよう言っておくが、その内容についての実効性や真偽については全くもって重要ではない。プロレスと同じ、それが八百長かセメントかなんて見る側にとっては些細なこと。面白くて読み進めてしまう、そして何度も読み返してしまう、この事実だけが全てなのだ。



文章力を路面だとすれば、誤字脱字なくフラットな、乾いたアスファルトが地平線まで続く道がいい。DOHC16バルブ4気筒の物語が私をパワフルに運んでくれるだろう。ステムベアリングのメンテナンスをしたばかりの車体は、ハンドルに手を添えるだけで意のままに操れる。行く先はどこでもいい。書を抱いて、旅に出よう。



いつか水の街アルカンレティアに辿り着くその日まで……

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