万人を魅了する美魔女は実在する
私は一時期、介護施設で働いていた
とはいえパートで月に何度か足を運ぶ程度だったが
当時苦しかった生活費の足しになっていた
そこの介護士さんでものすごい美人がいた
私が書いている長編小説の主人公は、彼女をイメージしている
金髪ではないが
かつて美容師だったと語る彼女のロングヘア―は芸術的ウェーブをなびかせ、仕事中後ろに縛るその姿も美しかった
施設利用者には優しく丁重だが同僚や上司、後輩には冷たく慣れ合わない性格も嫌われるどころかプロフェッショナルを感じさせ、一目置かれていた
年は40をとうに過ぎており若いとは言えないが、顔は絵画のように美しく、色気を超えた凛々しさは聖女を思わせた
スタイルに至ってはもう、完璧
ただ難点をいえば、仕事中の服装が致命的にダサかった
これが後に私の腹筋を破壊する要因となる
あるとき彼女は、邪魔だからと言って髪を豪快に切ってきた
非常に豊かでボリューム感のある彼女の髪は、自然なウェーブを残しながらレイヤーカットのミディアムロング、これもまた私の笑いのツボを刺激する要因となる
介護で一番大変なのは、食事である
施設に住んでおられる方はほとんどが歩行困難で、みなベッドから車いすに移ってもらうことになるのだが、もちろん施設のスタッフがそれを手伝うのだ
手伝うと言ってもほぼ全てスタッフが力と技で車いすに乗せる。もちろん怪我をさせたり痛い思いをさせるわけにはいかない。そして体格の大きい方も多数おられるわけで、繊細で豪快な、神経と体力を使う重労働が食事の度に発生するのだ。
格闘有段者で柔道と古流武術の経験がある筆者は食事時が実は楽しかった。自分が学んだ技術が人のために使えるのだ。この喜びはドッグランで元気に駆け回る大型犬の如し。あたりまえだが腕に覚えがあるからといって人知れず路上を歩く人間を襲ったりするわけにはいかないし、ましてや自分より弱い人間を探し出して暴力を振るうなど想像するだけでおぞましい。
そもそも武術は学べば学ぶほど他人の強さを知ることになるし、いかに姑息で相手にばれないよう致命的大ケガを負わせるかを追求する悪趣味な学問でもある(だからこそ面白いのだが)。しかしそれらが世のため人のために役立つ瞬間を体験し、私は充足感を味わっていた。
閑話♡休題
そして美しい介護士のお姉さま♡の話だが、ある日彼女は自分が動きやすいよう非常に伸縮性のあるタイトなズボン(淫靡すぎてもはやパンツと言う気がしない)を履いてきた
いや、これはもう完全にタイツと言っていい
足、尻、太もも、ふくらはぎ、全てがピッチピチで男性なら目のやり場に困るような事実上のタイツを履いて厳しい口調でスタッフに指示を飛ばす彼女を見て、私は強い既視感を覚えた
「ハマーン・カーン……」
髪型といい、これは完全にハマーンさまです。間違いない。
これで彼女が我々を俗物呼ばわりでもしようものなら、腹筋は爆散していただろう。私は誰かにこれを言いたかったが、介護スタッフは女性ばかりだし、数少ない男性スタッフもガンダム、しかもZ (ゼータ) となれば分かってもらえないだろう。私の趣味嗜好だけが暴露されてしまう。私はこのときジェリドのハイザックに打ち抜かれるヒルダ・ビダンの心境だった。
もし彼女がどこかで介護スタッフを集め、デイサービス事業を始めると言うなら、私は参加しようと思う。美しいお姉さま♡の下で働ける喜びに勝るものはない。ただし、条件がある。
社名は「有限会社:アクシズ」
これ以外は認めない




