大規模避難
3ヶ月後。地下都市の中央部の最奥にて二人(片方は機械だから一人と一体かもしれない)が話していた。
『超巨大反物質爆弾接近。着弾まであと1ヶ月』
「移民船の建造はどんなもんだ」
『95%が終了しました。完了まであと1ヶ月です』
「完了した瞬間に着弾するのか?」
『建造が完了した12時間後に着弾する予定です』
「そうか。もう少し早めることは出来ないか?」
『造船所を最高効率で稼働中です。これ以上スピードアップさせることは不可能です』
「なんてこった...余波が船団に直撃して全滅とかはないよな?」
『無いと断定できます』
「わかった。そのまま建造を進めてくれ」
*
えーと...荷物はこんなもんかな。全く、岩石生命体の連中はなんでこんなことをしやがるのやら。
『あと一ヶ月で地球が滅びます!今すぐにでも引越しの準備を終わらせてください!』
「はいはい、わかってますって…」
ホログラムのテレビのニュースに適当に返事をしてスーツケースに荷物を突っ込む。このスーツケースは空間拡張技術がどーたらで5m四方の物体を収納出来るスグレモノだ。すっげぇ高いらしいが。国から支給されたやつで、何百万とかするやつだ。
「今は...十三時か...そろそろ乗船するか」
テレビの電源を落とし、スーツケースに突っ込んでスーツケースを閉じる。
外に出て、部屋を空にしたというタグを扉の前にホログラムで付ける。全ての部屋にタグが付けられた階層は解体され、資源にされる。その資源は建材にされる。
「ガランガランだなぁ」
俺以外の部屋の扉には覚ほぼ全てタグが付けられている。
スーツケースを引き連れ、移民船行きのエレベーターに乗る。エレベーターに乗る人々はスマホか、それと同じ機能を持つ物を所持している。
一人は、数千年も昔から使われているスマホ型を使っている。古い型だが、使いやすく、ホログラムが使えない環境でも動作するので割と人気ある。モジュール化して自由にアップグレードしたりカスタマイズ出来るモデルも存在する。というかこれが一番多い。
もう一人は、腕時計型を使っている。正確には、そこから投影されたホログラムが使われるのだが、人混みの中では腕時計に直に投影する。
ここで使ってるやつは居ない...というか、見えないのだが、網膜に直接投影するタイプや、義眼を経由して見えるようになってるタイプもある。あれは完全にプライベートを守られるからという理由で使うやつが多い。
ちなみに、俺は腕時計型を使用している。片手が塞がれるとかちょっと耐えられない。
無音でエレベーターが動き出す。数分が経過すると、扉が開き、通路が目の前に現れる。その通路をしばらく進む。
扉と扉の間が異様に狭いが、空間拡張技術がなんちゃらで明らかに空間が足りなくても収容人数はかなり多い。
4750000-100000
俺の部屋の番号だ。船一隻に付き十万収容できる。その船が500万隻建造する予定だ。そして、この番号は475万の10万番。つまり、この船は俺で最後って事だ。
部屋に入り、家具やらなんやらを取り出す。
『19DF00棟の避難が完了しました。19DF00棟を解体し、シールドを展開します』
女性の声のアナウンスが流れ、一瞬だけ揺れたが、すぐに収まる。
部屋に家具を設置し終え、テレビを付ける。
『RLFの反物質爆弾の接近まで一ヶ月です。現在、95%の避難が完了しました。残りの船は現在建造中です。避難の準備は済ましておきましょう』