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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー76




「いってぇ、、、なぁ、、、。」



何とか近くの壁を蹴りながら着地したが、下の足場が濡れていて思わず転んで尻もちをつく。


腰を痛めて涙を浮かべながら周囲の様子を窺った。



鍾乳洞の様に複数の水たまりと、鍾乳石が上と下から伸びている薄暗い洞窟。

今までの上のように明るく見やすいことはなく、嫌な静けさと暗さが辺りを支配していた。



「・・・まさかの落下で四層目突入か。しかもメンツはバラバラ、結構厳しいな。」



横でどこか打った訳でもないのに寝てるミリアに軽くデコピンだけしておいてどうしようか頭をひねる。


敵は順調に強くなってはいた。でもまだスイとハイルなら対応が難しいってことはないだろ。合流を急いだほうがいいのは確かだが、焦る必要はない、、、と、思いたい。


だが頭のなかにはどうしても傷ついて運ばれてきたスイの姿がよぎってしまう。

信じたい、信じたいがどうしても不安が顔を覗いてしまうのだ。



「・・・むにゃ。」



どうしようかと焦りを募らせていると、横で転がっていたミリアが寝返りをうってなんかモゴモゴしている。


その場違いな寝顔を見て一気に緊張感が抜け、まぁなんとかなるかとゆとりが持てた。



「あわてるな、まずは合流だけど自分の身の安全も守らないとだしな。」



冷静になって改めて状況を把握する。

明かりは少なく見づらいが、真っ暗というわけではない。よく見ると苔のようなものが壁に張り付き、淡く光を発して視界を保っていた。


そのまま上を見ると、上から落ちてきたはずなのに天井には穴がない。このダンジョン内はやはり空間が大きく歪んでいるのだろう。



「そんでお前はいい加減起きろ。」



ゴッと鈍い音を立てて隣で気持ちよさそうに寝ていたミリアに拳骨を落とすと声にならない悲鳴を上げて痛そうに悶絶しながらクネクネしている。



・・・なんか気持ち悪。



「あ、頭割れたぁ。」


「そんなヤワじゃないだろ。」



涙目で頭を擦りながらミリアは辺りを確認して目をパチクリさせている。多分状況が掴めてないんだろうね。


・・・というか、ミリアの障壁って攻撃に対して自動で反応してたよな? なんで今のゲンコツとか阻まれなかったんだろ。



「・・・ここどこです?」


「4階層だよ。床を割られてそのまま落ちたらしい。」


「あれ?なんか既視感。」



言われてみれば前に床ごと谷底まで落ちましたね。

確かその時は谷底に落ちて一人が呪われてでっかい竜に、、、う、思い出したくない。


嫌なことを思い出していたらふと気配を感じて後ろを向く。そこには黒い影、シルエットだけの子供が立っていた。


その子供は動かずこちらを見つめているかのように立ち尽くす。



ーーゾワッ



別にこういうのに耐性がないわけじゃない。それでもふとした瞬間に見ると寒気を感じるものだ。



「・・・ミリア、あれってなんだ?」


「・・・へ?あれ? ・・・あ、『チルダスト』ですね。魔物の一種ですけど存在自体はとても特殊と言われています。基本的に襲ってきたりはしませんが、一度目をつけられるとずっとついてこられると、、、」


「怖えじゃねえか!!」



普通によくある心霊現象じゃねえか。

あんな不気味な影に追われるとか普通にノイローゼになりそう。



「それほど怖くありませんよー。」



ミリアはそう言いながら薄暗い中、チルダストに近づく。そして屈んでそっと手を取るとチルダストは黒い塵になって姿を消した。



「・・・何したんだ?」


「少しだけ光の魔力を込めただけです。浄化の応用ですよ。」



ミリアは膝についた埃をはらいながら最後に祈る格好を取って振り返る。

そして振り返って驚いたように目を見開いた。


どうしたのかとミリアの視線を追うと、そこには数多くのチルダストがこちらを指さしていた。


その光景にミリアは眉をしかめる。



「・・・むぅ、人に指差しちゃいけないって教わらなかったのですかね。」


「そこじゃないそこじゃない、てかお前こういうのは怖くないんだな。」


「指さされてるだけじゃないですか?」



指さされるのは怖いことじゃないのか?


俺はこういう摩訶不思議な者に関わる機会が多いから慣れてはいるけど、流石にこの光景は気圧される。

なのにこいつのこの余裕なんなの? これがチンピラだったら震えて縮こまってるくせに(俺も怖いけど)。



「こんな囲まれてると動くに動けないぞ。」


「わかりました、迷い回る縛られた心、導き、願い、その心を解き放つ『導火 救廻』。」



ミリアが手を合わせて詠唱を唱えると、光の輪がミリアを中心に大きく広がりながら上に登っていく。

チルダスト達はその光を見つめ、まるで導かれるかのように冷たい地から足を離し、光の輪に溶けていった。



「・・・やっぱお前も規格外だよな。」


「攻撃はできませんけどね。」



それを差し引いてもお釣りがきそうなレベルだけどな。


その光の円環に黒い塵が導かれ光の粒になるなか、蠢く別の存在に気づく。

伸ばされた黒い糸を切り裂きながらミリアの腰をつかんで大きく飛ぶ。



「ーーわっ!? なんですか!?」


「まだ他にもいるみたいだな。」



チルダストとは違う、明らかに敵意のある存在は壁を這いながらこちらに近づいてくる。



「ひぃ!?あの蜘蛛みたいなのなんですかぁ!?」


「いや知らねえよ。」



人の体に複数の手足、完全に首を逆さにし長い髪を振り回しながらこちらに迫ってくる醜悪な見た目の化け物。


頭上に小さな黒い魔法陣を形成してそこから黒い糸をこちらに向けて射出してくる。


それを跳びながら躱し、目の前に躍り出てきたのを斬る。

しかし追ってきている数はドンドン増えていく。



「うわぁ! 無理です怖いです!もっと速く走ってください!!」


「お前のさっきまでの余裕はどこいった。」



チルダストに囲まれたときはすごく冷静だったのに危害を加えてくる相手になった途端これか。

相手が敵意を向けてるかどうか、それがミリアが恐怖を感じるかどうかの引き金になるのかな。



・・・にしても数が多い。別に逃げ続けるのは難しくないが、スタミナを無駄に消費するのは面倒だ。


すると逃げてる途中の水溜りに何か金属の箱がキラリと光るのが見える。



「ーー!! り、律兎さん!その箱を叩きながら後ろに飛ばしてください!」


「ん? おう。」



ミリアに言われ、ヤクラで掬う様に箱を空中に放り投げたあと後ろへと向かってバットの様に打ち飛ばす。



ーーカキィイイン!



「・・・?」



何が起こるのかわからず、顔を不思議そうにするのと同時に箱は光始め、そのまま大きな音をとどろかせながら爆発した。



「はぁ!? 何あの爆弾!」


「『鉄金爆弾』。衝撃が加わって少し経つと金属片と共に爆発する危険な道具です。」


「お前それをよく平然と使わせたな!?」



ふぅ、と汗をぬぐうようにホッとしてるミリアを揺すりながら抗議すると、目を回しながらグデンとなる。



「ーーぷっ、吐きそう。・・・律兎さんなら大丈夫かな、、、って、、、。」


「俺でも未知の道具は怖えよ。あれもし至近距離に落ちてたらヤバかったからな。」



手榴弾を手前に落とすようなものだからね。


爆発によって追ってきていた気味の悪い化け物たちは傷だらけになってすべて床へと落ちている。

何匹かは苦しそうに呻いているが、立ち上がることはできないのか追ってくる気配はない。


その間に距離を取ろうとミリアを抱えて再び走る。


暗い道を目を凝らしながらある程度距離を離すと再び静かな場所に出た。



「律兎さーん、見てください見てください!かっちょいい槍が刺さってますよー!」


「・・・槍?」



ミリアを置いて伸びをしていると、向こうの方から呼ばれる。

なんだと思ってそっちへ向かうと鍾乳石の池にやけに立派な美しい波のような槍が突き立てられていた。



「・・・錆びるだろ。」


「でも超綺麗ですよ。」



言われた通りその槍はうっすら輝き、劣化している様子は一切ない。



・・・魔力を秘めてるな。



「・・・明らかに不自然だが、引っこ抜いていいものか、、、」


「おりゃ。」



罠を疑って辺りを見ていると、不自然な刻印の羅列を見つけた。それを解読していると、気の抜ける声とともに槍が引き抜かれる。

俺が呆気にとられて口を半開きに眺めていると、抜かれた場所から刻印に光が灯っていき、徐々に魔力が練られていく。すぐにミリアを抱えて飛び退こうとしたが、背後に謎の障壁が張られていたため阻まれてしまった。



ーーカッ



光が瞬き思わず袖で顔を覆う。光が収まりゆっくりと目を開くと引き抜かれた穴から水が溢れ、そこから顔が縦に裂けた髪の長い男を模した人型の怪物が形作られた。



「・・・最近こんなのばっか相手にしてるな。」



肉体はない魔法生物か。

相手は右手に槍のようなものを形成して振りかぶる。どうにか対応をしようと構えを取ると、障壁の内部が水に満たされ始めた。


最近息ができる水にばっか浸かってたから新鮮だなぁ。



・・・普通に即死罠じゃん。



「ガボラバミベバッ!?」



ミリアは水の中で苦しそうにもがく。

俺も急に満たされたため酸素をあまり吸い込めていない。


急がないとお互いに溺死するな、外さないよう狙いをつけ、決死の一撃を込めながら剣を構えた



その時、、、




『生命機能の低下を確認 自動防衛機構に意識を強制接続 ■■の意思により、■■の攻性魔法の封印を限定解除 外敵の殲滅を開始します。』




ミリアからとてつもない魔力が放たれ、水の障壁は内側の水ごとはじけ飛んだ。



「・・・は?」



魔法生物諸共弾き飛ばされた俺はその魔力圧に動くことができない。洞窟内は大きく揺れ、小石が砕け、鍾乳石が崩れ落ちる。



「ーーぐっ!? ミ、、、リア、、、?」



薄く光をまとったミリアが宙空へと浮かび、目を光らせ、魔法生物に向かって手を翳す。


すると、魔法陣が展開されその手から放たれた光の光線によって魔法生物は跡形もなく姿を消しさった。



「・・・は? 攻撃、魔法?ミリアが?」



どれだけ使おうとしても使えなかった攻撃魔法をミリアが平然と使った。先ほど聞こえた『攻性魔法の封印を限定解除』、もしかしてミリアは意図的に使えないよう誰かに封印でもされてたのか?


あまりに突拍子のない展開に困惑していると、そのミリア?らしき存在は今度はこちらに向き直る。


そして魔法生物を消したようにこちらに手をかざした。



「ーーまじかよ。」



ーーギュドンッ!!





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