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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖−74



グゴゴゴゴッ、、、



「・・・来たか。」



少し登った岩礁の上で両手を組んで呟くと、遠くの方から悲鳴とともに馬鹿でかいプリームがこちらに向かって迫ってくるのが見えた。



「よく「・・・来たか。」とかカッコつけて言えますね。あれハイル君が死に物狂いで逃げてるだけですよ?」


「この環境であの化け物からよく逃げられるよなー。」



巨大なプリームは巨体の割に速度は普通のとかわりない。そしてなんかバチバチ電気みたいなものをまとってるしあの近くで立ち止まれば死ねるな。


次いで岩礁に登ってきたスイが目で「どうするの?」と訴えてくる。



「あのままハイルが倒してくれないかな?」


「・・・あの巨体相手にそれは酷。私でもやりようが思いつかない。」


「やりようかぁ、、、。ハイルーー!!! もう少し引きつけてくれーー!!!」



俺は顎に手を当てて少し悩んだあと、ハイルに向けてそう叫ぶ。

すると、遠くから悲鳴に混じって「無理ーー!!! 死ぬーー!!!」と聞こえてきたのでそれを無視。


グラグロはフロアボス攻略として、頑丈な縄を張り巡らせてあの巨体の動きを阻害、各自気を引きながら核を見つけるまで体を削り、魔法で核を撃ち抜くと言ってたけどそれだと時間もかかるだろうし、何より疲れる。


ここは遠距離からズバンッと行きますか。



「ミリア、障壁張って2人と一緒に隠れてくれ。」


「え、何する気ですか?」


「吹っ飛ばす。」



俺はニヤリと笑みを浮かべたあと、息を大きく吐きながらピタッととめた。そして、心臓を強く意識し、能動的に鼓動を速めていく。



ーードクッドクッドクッ!



身体が熱を持ち、血流が一気に加速するのを感じる。

目は血走り、血管を浮かび上がらせながら剣の柄が悲鳴を上げるほどに力を込めた。


そして目をゆっくり開き、剣を上段に、、、



ーー剣鬼 至技『一刀両断』!



振り下ろされた剣からは落雷のような轟音と、海ごと断ち切るような斬撃が放たれる。

ただただ力を込めて振り下ろすという至極単純ながら、圧倒的な破壊力を生むこの技は全てを巻き込み目の前の全てを破壊していく。



・・・やっぱ無茶苦茶だよなぁ、この世界で使うのはに2度目だけどちゃんと溜めを作るとやっぱ威力上がるね。



「ーーッヒュ! げっほっ、ゲホッゲホッ!」



技の反動から全身が筋肉痛のような痛みに襲われ、息がし辛く盛大に咽た。

涙を浮かべながら前を見ると、さっきまでの巨体はものの見事に真っ二つに割れ、海に溶けるように徐々に消えていく。



「「・・・。」」


「・・・な、なんだ、これは、魔法、なのか?」



スイとミリアはあまりの惨状にドン引きし、グラグロは驚きに目を見開いてみるからに困惑していた。



・・・みんないいリアクションするね。



「・・・ハイル、生きてるの?」


「味方諸共敵を倒そうとするその外道っぷりに涙が禁じ得ません。」


「逃げ足速いし多分平気じゃね?」



俺の言葉と同時にシュタッと身軽な誰かが着地する音が聞こえた。その存在は涙目でこちらに無言で近づき胸倉をつかんで、、、



「何すんだよ!! あ、危うく死ぬとこだったけど!?」


「生きてるじゃん。よく避けれたね、素直に感心するわ。」


「むしろ褒め称えて優しくしてよ!!」



いやそれしたらお前絶対に調子のるじゃん。


普段から自信がない性格だから自信をもたせるのも大事だとは思うけど、調子乗る未来が目に見えてるんだよなぁ。


ガクガク揺らされながらハイルの文句を受け流していると、巨大プリームの核がギュッと周囲を巻き込みながら圧縮されていき、大きな音を立てて暗い穴が形成された。



「おぉー、あれが次の入り口か。」


「どうしてまた穴? 暗いなかにはいるの普通に怖いのですが、、、。」



まるで誘うかのような黒は確かに嫌だよな。


そこに飛び込むというのはなかなかの勇気がいる。

あれがこのダンジョンの仕様じゃなかったら正気の沙汰じゃないね。


そんな事を考えていると、その黒い穴に向かってほかの魔族が入ろうとしてるのが見えた。



「・・・え、抜け駆け?」


「・・・フロアボスを倒せずこのフロアで足止めを食らっている奴らは多い。フロアは広いから接触する機会があまりないが、他に潜っている連中はいる。」



つまりハイエナってことね。


てかじゃあ適当に至技を放っちゃったけど巻き込まれた奴とかいそうだな。まぁそこら辺は、、、知ったことじゃないということで、命の危険があるのは承知の上だろうし、、、。


若干冷や汗を流しながら自分に言い聞かせ、誤魔化すようにグラグロに話を振る。



「あれって人数制限とかあるの?」


「・・・いや、時間が経てば勝手に閉まるだけだ。ただ一度倒したボスは復活するのに1日かかる。俺たちも早めに次のフロアに向かったほうがいいだろう。」 



・・・と、言うことらしいので早めに行きますか。



ミリア以外全員速く走れるので、俺はミリアを背負っていつもの体勢に。グッと足に力を込めて飛び出すように次の階層へと進むための穴へ向かった。




ーーー




第3階層



ーーピチョン、ピチョン



「ーーさっっっぶ!!」


「・・・ぽ、ポーションの効果、切れてる?」


「い、い、いや、こ、これはポーションの、効果を上回っるほど外気がひく、、、」



第3階層は広い氷の洞窟だった。

水が僅かに流れて水路を形成している天井がやけに高い氷の洞窟は恐ろしく気温が低い。


まだポーションの効果でマシになってるのだろうが冷凍庫に閉じ込められたんじゃないかという強い寒気を感じさせる。



「・・・・・おやすみない。」


「寝るなミリア! 前もこんな会話しなかったか!?」



ミリアをガクガク揺らしながらどうしようかとハイルに目線を送ると、ハイルは慌てながらローブの内ポケットを漁り、先ほどよりも色が濃い液体の入った小瓶を取り出した。



「さ、最初に飲んだポーションの効果を高める作用があるよ。た、ただ、デメリットとしてこれを飲んじゃうと温かいところに出た時、熱すぎて耐えられなくなる可能性が、、、」


「いいから早く!」



ポーションを受け取ってミリアに飲ませたあと、自分の分も飲んでおく。すると、徐々に寒気が和らいできた。


すごいね、お薬大好き。



「ーーはっ! ここは、天界?」


「急に暖かくなって違和感感じるのは分かるけど生きてるね。」



こんな冷たい景色の天国とか嫌でしょ。せめて温かく迎え入れてほしい、現実は冷たすぎるから。


取り敢えず暖は取れたから立ち上がって周囲の状況を確かめる。

冷たい氷に囲まれた洞窟ではあるが、上の天井から陽の光のような明かりが洞窟内を照らしていた。



「あれ、先に入った連中は何処行ったんだ?」



俺たちが穴にはいる前に飛び込んでいた連中が見当たらない。

時間もそれほど経ってないはずだしここまで人気がないのは違和感あるな。



「・・・このダンジョンは層を跨ぐごとに他の者達から離れてる地点に飛ばされるらしい。会うことがないことは無いが、時間はかかるだろう。」



・・・合流されたくないってこと?



まだこのダンジョンの狙いが分からないな、一体何を狙って人々を引き寄せているのだろう。



「・・・てか思ったんだけど、まだ宝箱とか何も見当たらないし、旨味少なくない?」


「・・・多分だけど、まだここら辺は探索され尽くしてて、目星しいのはないのかも。」



あー、まぁ上の階はそれなりに多くの人達が探索してたみたいだしね。

大方あのフロアボスで足止めを食らう連中が多い気がする。


ならこのフロアからはお溢れ期待しても良さそうだ。



「ちなみにこの階の敵はまたアンデット?」


「・・・あぁ、スケルトンは変わらずいる。それと、『ジャキィム』と名付けられた氷漬けの獣の死骸を利用する悪霊がいるな。」



え、悪霊、なにそれ怖。


じゃあこの層ではその獣とスケルトンを相手取ればいいのか。


方向感覚が簡単に狂いそうな氷の洞窟で次の層への入り口が見つけられる気がしないが、そこは頑張るしかないね。


確かグラグロが言うにはこの層から地図とかも無いみたいだし。



ーーぎゃあああああ、、、!



遠くから悲鳴が聞こえ、反射的に構える。

さっき全員遠くに配置されるって聞かされたばかりなのに声が聞こえたということは、それほど多くの人数がこの層にいるか、よほど逃げ回っているかのどちらかだな。


と言うか、、、



ジャリッ



俺は無言で他の3人にバレない様に視線を落とす。

見えづらいが厚い氷の床の下には多くの死体らしきものが凍っていた。ちぎれた腕に、頭だけの死体や、見るのも憚られるほど凄惨な状態で放置されている者など様々。下手に伝えると、ビビらせちゃいそうだし黙っとくか。



「さて、休憩するか!」


「え、探索するのでは?」


「いやいや、ハイルだって逃げ疲れたろうし、まだ軽食しか食べてないしな。そろそろ飯くおうぜ、、、」


「賛成です!!」



ミリアが、元気に返事を返してくれ、反対意見もなかったので休むことにした。まだまだ探索には時間がかかりそうだし、ぶっちゃけ疲れたもんね。



ーーー




ーー2階層の合間




「見てください律兎さん! あれフラワーフィッシュですよ!焼くと美味しいと噂です!」


「・・・お前、あれだけ綺麗な魚見てまず美味しいかどうか考えるんだな。」



長い花のようなヒレを揺らし、舞うように泳ぐ魚を見てらんらんと目を光らせるミリアに引きながら同じようにこの水族館のような景色を眺める。


ちなみに今はハイルを囮にして、岩礁に登ったあと少しの待ち時間ができていた。なかなかこんな光景お目にかかれなさそうだし、少しくらい観光気分でもバチは当たらないだろう。



「あ、あれはグツボですね。骨が多くて食べづらいですけど、上手く骨を抜いて焼いたら絶品らしいです。」


「頼むから魚の生態とか説明してくれない? 全部食材に見えて仕方ないんだけど。」


「生態なんてわかるわけないじゃないですか。」



でっかいウツボみたいな魚を指差しながら小馬鹿にするような笑みを浮かべてくる。

イラッとしながらも、図鑑がないこの世界で動植物ならまだしも水中の生物に詳しい本なんかないだろうね、と一人納得した。



・・・イラッとはしたけどね。



「・・・じゃああれは何ていうんだ?」


「ミルサナカ、毒のある魚で食べれないです、残念ながら、、、。」


「いやそこまで残念じゃねえよ。」



悲しそうに顔をうつむかせるミリア。


お前の何が琴線に触れるのが全くわからん。

もう食べ物さえ渡しとけば元気になるんじゃない?



「ほい、これあげる。」


「わっ、チョコじゃないですか! まだ隠し持ってたんですね!」



お前は盗みに入った強盗か何かか。

確かにあげるとは言ったけどそんなひったくるように盗らなくても良くない?


ミリアは嬉しそうにチョコの包装を剥いて頬張る。


俺はそれに呆れながらもしょうがないものを見るように笑みを浮かべた。



・・・こいつの明るい性格には正直助けられてる。どんな状況や環境でも緊張感少なくいられるのはありがたい。



「ま、いいや、普段のお礼ってことで。」


「え? 何かしましたか?でもお礼ってことならもっとたくさん欲しいです。」


「がめついなお前。」



でも少し遠慮とか覚えてくれ。

俺たちの食料が枯渇する原因の8割はお前だからな。



「律兎さん律兎さん。」


「なんだよ。」


「ここで食料調達してもよいでのは?」



ミリア言われて顎に手を当てる。


・・・確かに名案かもしれない。


何故か食べれるかどうか詳しい人がいるし、自分で消費した分は補充してもらいますか。



フヨフヨ漂う魚を見て前に作った先端を尖らせただけの木槍を取り出して返しをつける。

そしてそれをミリアに手渡した。



「・・・? なんですかこれ。」


「銛かな、ほら、魚取ってこい。」


「ふふっ、ご冗談を、私にとってこれると思いますか?」



全く思ってないよ?

でも命を頂く意味を理解すればもう少し感謝の念とか生まれると思う。


てことでがんば。



「せめて見本、見本を見してください。」


「・・・しゃーないな。」



俺は泳いでるコブダイのような魚に狙いをつけて、槍投げのように槍を構えて狙いをつける。

ちょうど魚が横を向いた瞬間に目のところに向かって槍を投げた。



ーーボッ!



槍は水の抵抗を物ともせず、魚の目に命中して、、、死んだねぇ。


俺は岩礁からぴょんッと飛び降りながら銛を回収して、トントンと軽くジャンプしながら元の場所に戻った。



「ほい、やってみ。」


「できるかぁ!!」



ミリアから珍しく全力のツッコミを受けながら魚を引き抜いて下処理をしておく。



すごいなぁ、わぁ血が舞う、、、。



内臓とか傷みやすいし早めに処理しないとね。ま、ボックスに入れたら関係ないけど。



「手際いいですね。」


「見てないでやってみろよ。こんな目の前で狙えることなんて滅多にないんだからさ。ほらほら、やるだけタダだ。」



言われてミリアは渡された銛を無言で見つめ、グッと力を込めて血と内臓に寄り付いてきた魚たちに狙いをつけた。



「やーー!!」



ポーンと投げられた槍はフヨフヨ進んでから流されていく。


その行方を眺めたあとにミリアは腕を組んで、「・・・なるほど。」とひと言唸った。

俺は無言でもう一本の銛を手渡してミリアの後ろに回る。



「無理ですね。」


「行ってこーい。」



ゲシッ



岩礁の端に立っていたミリアの背中を軽く蹴ると、「わぁーーー!!!」と叫びながら落ちていく。

この無重力のような場所なら怪我もしないだろうし安心だね。



「人でなし!鬼!デーモン!」


「ほーら、魚獲ってきたら迎えに行ってやるぞー!」


「うわぁーーーーん!!!」



下で半泣きになりながら銛をブンブン振り回すミリアを眺めていると頭の後ろをポコンと叩かれた。



「・・・あまりイジメないの。」



スイから呆れたような視線をもらい、仕方なく下に降りて迎えに行く。


怒られるんだろうなーと思いながら頭をポリポリ掻きながらミリアに声を掛けると何故かミリアは固まっていた。



「おーい、どうし、、、た、、、」


「り、律兎さん、と、獲れました。」



ギギギッと振り返ったミリアが持っていた銛の先に小さな魚が刺さっていた。

ブンブン振り回したときに偶然刺さったみたい。



「・・・何その無駄な運。」


「え、ちょっと罪悪感。」



まさかの展開にミリアは怒りを忘れ、どうしようかと困惑するのだった。



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