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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー72



「・・・お前たちのダンジョンへの用事は急ぎなのか?」


「急ぎは急ぎだけどさっき聞いた進捗ならまだ余裕はありそうかな。」



聞いた話だと取りに来たレリックとやらは深い場所にあるみたいだしね。

まだ一番進んでても中間らしいしそこまで急ぐこともなかろう。



「・・・ならダンジョンに潜るのは明日にしようか。急ぐのは得策ではない、用意するものも多くある。」



専門家らしいグラグロはそう言って本日の借宿となるテントへ案内してくれた。元の世界でいうグランピングのような広めのテントで窮屈な思いをせずに広々と寝れそうな空間が確保されている。


とりあえずそこに貴重品以外の荷物を置いてグラグロは次に市場へと先導してくれる。



「・・・必要なのは食料に明かり、それに防寒具だな。ダンジョンには昼夜が存在する。昼はそれなりに快適だが夜は驚くほど気温が下がる、半端な服装だと動けなくなるだろう。」


「頼むよミリえもん〜。」


「なんですかその摩訶不思議な呼び方は。」



我らが避難シェルターさんに何とかならないか聞いてみたが、前も言われたように気温の遮断は難しいらしい。どうにも条件が見つからないとかなんとかこんとか。


賑わう市場を巡っていると確かに厚いコートや毛皮、なんなら寝袋に布袋に入れられたカイロもあった。商人たちもかきいれ時だからか皆が声を上げて自分の店の商品を宣伝している。



「律兎さん見てください!飲むと体が際限なく熱くなるポーションみたいですよ!」


「スイ、あいつを押さえてこい。」


「・・・わかった。」



珍しいものにホイホイ釣られていくミリアの回収をスイに任せて俺は持っていくものを慎重に吟味した。

今回の探索はグラグロが付いてくるらしいし下手にボックスを使って元の世界の道具は使えない。



「・・・塩漬け肉にパン、異世界のド定番な非常食だな。」



前にパルパンクで興味本位で買って齧ってみたが塩辛すぎて一瞬身体が受け付けなかったんだよな。うーん、料理系はやっぱスイに頼ろう。俺は他の道具類を揃えるとしますか。



「にしてもアンデットねー。どう言う武器が必要とかあるのか?」


「・・・スケルトンの類には物理がよく効く。ゴーストには魔法系だが魔力管理が課題になる。ポーションが必須だな。」



なるほど、ポーションね。


この世界のポーションは基本瓶だし嵩張るんだよな。


もらったバッグはたくさん入るけど時間停止機能はついてないし容量もボックスほど多くない。無闇矢鱈に買ったらすぐにいっぱいになるだろう。



・・・まぁ、うちには避難シェルター兼魔力タンクがいるからあまり心配ないか。



「あ、か、身体の体温調節を助けてくれる薬草があるからこ、コートとかはいらないよ。」


「ーーっ!?」



いつの間にか隣に立っていたハイルが俺にそう進言してくるのを俺は呆れたように横目で見る。

隣りにいたグラグロは突然現れたハイルに動揺して腰につけていた幅広の剣に手をかけた。


その時にはハイルは既に土下座している。何その反射神経。



「・・・あー、一応こいつも仲間だから気にしないでくれ。」


「・・・そ、そうか、まさかこうも気配なく近づかれるとは。」



ね、ゴ◯ブリみたいだよね。


俺は土下座しているハイルの首根っこを掴んでそのまま立たせた。



「んじゃコートはいらないのか?」


「う、うん、必要なのは光源と布とかじゃないかな。」



案外揃えるものが少ないな。

とりあえず適当に小道具と照明、非常食を買っておけばいいか。


トイレとかも問題ありそうだけどそこまで言ったらそっとボックスから簡易トイレでも取り出せばいいしね。


買うものが決まったのでミリアの面倒を引き受けてスイさんに頭を下げてお金を貸してもらい買い物を済ませた。




ーーー




ーー早朝。



「眠いです。」


「お前、あれだけすぐ寝たのにまだ眠いのかよ。」



次の日、俺達は朝早くに砂漠に突き刺さった帆船の真横に立っていた。帆船の横っ腹に空いたどデカい穴の中には螺旋がうずまき誘うように口を空けている。



「ここが入り口か。」


「・・・はじめの方は罠もないしある程度踏破もされている。初日にどこまで進めるかがダンジョン攻略の肝だ。」



進みが悪ければ引き返し、進みが良ければできるだけ探索を進めようとできるからな。

とりあえず初見だしあまり無理をしないように心がけよう。



「よっしゃ!みんな足元気をつけてはぐれないように頑張ろうね!」


「おー!」


「・・・引率?」


「は、吐きそう。」



俺の掛け声にニッコニコで声を上げてくれるミリアと、首を傾げるスイ。ハイルは吐きそうに口元を押さえてグラグロに背中を擦られていた。


相変わらず息の揃わないパーティーだなー。


ま、いつも出たとこ勝負な場合が多いし頑張ろう。



俺は意を決して螺旋渦巻く入り口に手を入れる。

すると視界はグニャリと歪み、極彩色に包まれたのだのだった。




ーー




「ーー?」



明かりが収まり薄っすらと目を開ける。


目の前には広大な水平線が果てまで続き、小さな船から帆船まで、大小さまざまな船が突き刺さるように海に浮いていた。


俺は下に視線を向ける。そこもすでに水面の上でなんで立っていられるのか分からない。



「わわわっ!? 水の上ですよ!?」


「・・・すごい、魔力を込めなくても立ってられる。」


「あわわわわわっ、、、」


「・・・。」



全員思った通りの反応してるなー、と思いながら俺は下の水面をちらりと見る。

驚くほど綺麗に透き通っているが底が果てしなく遠いのか岩とかは見えない。


それに水面は驚くほど凪いでいるので歩き辛いとかもなさそうだ。



・・・湖畔ってなあに?



俺は渡された地図を開いて現在地を確かめる。



「・・・出る場所が毎回違うってのは本当なんだな。」



地図にはルートなどは書いていない。点々と置かれた船の配置だけが記されていた。ただその船の特徴だけが事細かに書かれているのでそれを頼りに現在地を割り出す。



「・・・あっぶね、買ってあった地図の端じゃねえか。」


「・・・運が悪いな、次の階層に行ける穴は地図の真ん中にある一度出直すのも手かもしれん。」



ダンジョンからの脱出ポイントも地図には記されていて今の場所からならそっちのほうが近い。でもとりあえずは調査だし次の階層へできるだけ近づいてみるか。


その旨を伝えてとりあえず水面を歩くことにした。動かない頭上の太陽と風のない水面にどこか不気味な雰囲気を感じながら進み続ける。



「綺麗な景色ですねー。」



のほほんとしたミリアの言葉の通り、今のところ何も起こらず目的地に近づけている。

流石に第一階層だしそこまで危険ではないのかと思っていたら太陽がゆっくり動き出したことに気づいた。



「・・・夜になり始めたな。」



グラグロのつぶやきのとおり早い訳では無いがゆっくりと普通の太陽の沈む速度よりは遥かに早く太陽は沈み、月が昇り始めた。



「・・・寒い。」



スイの呟きの通り、先ほどまで暖かった陽気が一変。まるで真冬のような凍えるような冷気が肌を刺した。



「ハイル。」


「う、うん。」



ハイルは懐からポーションを取り出して全員に配った。


なんか無駄に赤々しいけどほんとに飲んで平気?


この世界ではポーション全員飲み慣れているのかすぐに蓋を空けて飲み干した。俺も一度ゴクリと息を呑み込んで一気に煽る。


すると体の内側からぽかぽかしてきて寒かった気温が涼しく感じてきた。



「・・・凄まじく即効性の高いポーションだ。これはどのくらい保つんだ?」


「え、1、12時間くらい?」


「・・・長いな。」



グラグロは仏頂面を少し崩して驚いている。て言うか俺も驚いたよ、それ身体的に問題ないよね?



「・・・来たぞ。」



彼はつぶやくと同時に腰の剣を抜く。


水面からパシャッと静かな水音がしたと思うと音は徐々に大きくなり、骨が武装したスケルトンが這い上がってきた。



「「・・・。」」



ハイルとミリアは一歩下がって障壁を二人分張って無言。でもハイルくん?君は戦闘経験積まないとだから前でようね?



仕方ない、と俺はヤクラを取り出す。特に力んだりはしないで自然体で剣を構えた。



「・・・にしても数が多いな。」


「・・・船に逃げ込む?」


「・・・いや、籠城戦は不利だ。無限に湧いてくる物量に押しつぶされるだけだろう。」



だろうね、今も見てるだけで続々とスケルトンが水面から現れている。少しうえに視線を上げてゆっくり動いてる月を見てこのダンジョンの性質が少し理解できた。



「・・・なるほど、ウェーブ性のサバイバルゲームっぽい感じか。」



次の太陽が上がるまで持ちこたえる持久戦。

ひたすら体力を温存させてどう生き残るかを考えたほうが良さそうだな。



「スイ、グラグロ、お前らは順番に前に出て戦闘を頼む。俺はお前らの隙をフォローする、んで疲れたら交代でミリアの障壁に入れてもらってくれ。」


「・・・律兎は?」


「この程度ならしばらくは平気だな。ま、疲れたら俺も休ましてもらうよ。」



無理はしないと宣言。


まずはスイが前に出て対応してくれるみたい、がんばってねー。



・・・にしてもこれ、訓練にはちょうどいいな。



スイは即座に魔力幕を展開。まだ簡単に認識できるほど濃いがだいぶ安定してきたな。


遠方から飛来してくる矢に剣を合わせてスイはうまく受け流す。そして近づいてきたスケルトンの振り下ろしを姿勢を低くしながらかわし、刃を骨の間に突き刺した。



「『水震破』。」



つぶやきと同時に内側からスケルトンは砕け散る。

スイはすぐに近くのスケルトン剣を合わせて流し、同じように剣を刺して破裂させた。



「・・・スケルトンの骨は硬い。下手に斬ると刃が欠けるし大したダメージは与えられないだろう。」



だから爆散させてるのね。

でも手間がすごいし幕を張っている分魔力消費もエグいだろうな。



「スイ。」


「・・・ん?」



俺は代わるようにクルリと回るスイの背からスケルトンの前にでる。横薙ぎに振られた剣を跳ね上げ、胴体ががら空きになったスケルトンに腕をひねりながら変に弾くように叩いた。



カンッ!



甲高い音がすると、相手は体をビキバキと変な方向に関節を曲げ、そのまま時間をが経つとバガンっとバラバラに崩れ落ちる。



「・・・なるほど、相手に逆の流れを送るっこと?」


「正解、魔力消費が少ないし突きより相手を狙いやすいから使ってみてよ。」



剣舞一式 『逆上がり』。


相手とは逆のひねりを加えて関節を外す技。

失敗すると自分の身体に返ってくるのが多いけどこれはあまりデメリットがないから扱いやすい。


の割りに危険度が高いからあまり教えないように言われてたけどね。



流石に一度見ただけじゃ真似できないと思い、何度かスケルトンに使う所を見せたら何とスイは1回で成功してみせた。


それからはあっさりとスケルトン達を無力化していく。



俺は呆れた笑みを浮かべながら手を払い、一度ヤクラをしまったのだった。



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