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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー69



エルフの里の端っこ、そこにリクリカが簡易的に作り上げた植物の檻の中に縛られたフニューとフィーカがいた。



・・・いや、何でフニューだけあんな縛り方なんだよ。緊張感が薄れるわ!



あれがエルフの一般的な縛り方なのかと辺りの面々を見渡してみたがみんな微妙な顔をしていたのでどうやらリフィーナの癖みたいだね。実際リフィーナなんか鼻血出してるし、、、顔面でも負傷したか?



「フニュー、、、まさか君が内通者だったとはね。」



騒動の後、リクリカがユリジャ呼びに行くとユリジャはすぐに顔を出した。

そして縛られる彼女を見て「え?」と少し困惑したあと、理由を聞いて悲しそうに目を細める。



・・・うん、縛られ方のせいでフニューが裏切ったことの衝撃に困惑したのか縛られ方に困惑したのかイマイチよくわかんないな。



ユリジャはフニューの前に屈んで目を合わせる。

彼女はそんなユリジャを睨みつけるだけで何も喋らない。



「・・・何故こんなことをしたのか、素直に教えてもらえると助かるよ。僕も旧友に手荒なことはしたくないからね。」


「相変わらず甘いね。だから簡単に付け込まれるんだよ。」



諭すように話しかけるユリジャをフニューは鼻で笑う。その目は捕まりながらも鋭い光を帯び、常に脱出の機会を窺っている。



「ふふ、貴方って何を見てたの? 自分の息子を追い出し、娘の変化にも気づけない。貴方は一体何を守れたんだろうね?」


「・・・。」



フニューは黒い笑みを浮かべ、ユリジャを煽るために言葉を紡ぐ。ユリジャは彼女の言葉を受け、悲しそうに目は細めても言い返したりはしなかった。


が、突如下から生えた蔓がフニューをギリギリと締め上げる。



「ーーっか!!」


『調子に乗るな小娘。私は子供たちに手を出し、大切な夫を侮辱する貴女を許したりしません。』



リクリカは冷たい目に怒りを灯し、握りしめるようにフニューを締め上げる蔦の圧力を上げていく。

そんな彼女をユリジャは慌てて止めた。



「リクリカ!ただの挑発だ、乗らなくていい!」


『大丈夫ですよ、加減を間違えたりしません。』



口ではそう言っているが目は鋭く、言葉の節々に怒りを感じる。ユリジャの言う事は聞こえてもそれを超える激情を制御できてないのかな?



「ーーっ! ふっ、わざわざ精霊の格を捨て、、、地に落ちた、、、半端者が、、、今の貴女に、、、この地を守る、、、力なんて、、、ない、、、!」


『ーーっ!!』



ーーミシミシミシッ!



「リクリカ!」



流石にこのままだと不味いと判断して飛び出し、縛り上げていた蔦を全て斬り落とす。

もはや普通にヤクラを使っているので檻は一つも壊れていない。



「変わるぞ、お前らはフィーカから話を聞いといてくれ。関係性のない俺の方が冷静に話ができるだろ。」


「・・・あぁ、頼めるかい?」



ユリジャはリクリカを伴ってフィーカの檻へと向かった。残された俺はフニューに視線を合わせ、前に屈む。


するとフニューから先程の煽るような笑みが消え、仇敵を見るかのように視線を鋭くする。



「随分とうまくやってたみたいだな。」


「あんたが来るまではね。」


「ははっ、そりゃ残念だよ。」



今度は俺が煽るように笑みを浮かべた。

こういうのは冷静さを欠いたほうが負けだからね。



「さ、話し合いと行こうか、お前はプラズ商会の一員か?」


「・・・プラズ商会?初めて聞いたかな。」



フニューの返事に俺は少し考え込む。

勿論とぼけてる可能性だってあるが、返事の仕方や表情からは本当に知らないことを聞かれたようにも見て取れる。



「なぁ、えっと、リフィーナだったか?」


「はい、え、えっと、脱がしますか?」


「何でそっち側に思考が振り切れてんだ!?」



オドオドしてるくせに脱がすことには躊躇いねぇな!

なんでさっきからエロい格好させようとすんだよ。手に持ってる紫色の液体は何だ、二度と出すな。



「フニューと言うかエルフの人達って里の外に出ることは多いのか?」


「え、えーと、里守達は森に異変を感じたりしたら外に出ることもあるけどみんな基本的には外に出ないよ。そもそも外に出るには里長から許可を貰わないといけないし、精霊達の目もあるから誰にもバレないように外に出ることは無理だと思う。」



ふむふむ、まぁ隠匿の種族って言われてるくらいだしそこら辺はしっかりしているか。まるで精霊に監視されて閉じ込められてるみたいに感じるけどお互いに身を守ってる感じかな?



「なるほどなぁ、おーいユリジャー、外に頻繁に出てる奴に心当たりあったりするか?」


「ん? えーと、ハイルくらいでしばらくは外に出てる者はいないよ。まぁ里守達は仕事柄出てもらってる事はあるけどね。」



じゃあ、あと可能性として考えられるのは精霊の目を盗むか協力を取り付けられた奴だろうけど、、、考えすぎかな? 

取り敢えずフニューはしばらく外に出てないって考えてもいいと思う。里の唯一の医者なら居なくなってたりしたら誰かしら分かると思うしね。



ハイルがここに向かってるってわかったのはつい最近だ。それに仮にフニューがエルフ達の内通者でプラズ商会と関係してるならハイルを尋問する理由もなかったはずだしね。


・・・うん、こいつとプラズ商会は多分無関係だな。



「でも動き出してるとは思うんだよなぁ、、、。ならアムルって名前に聞き覚えは?」


「・・・・・ない。」



流し目でチラリと反応をうかがっていたが、少しの間と先ほどのように考える素振りのない否定。


・・・ふぅ、全員が全員、隠すことが上手くなくて助かるよ。


これがアムル当人なら絶対内面をうかがわせるようなことはなかっただろうからな。



「つまりプラズ商会はアムルの私兵みたいなものか。商会とは別につるんでる連中がいてそいつらの目的にエルフの隠れ里があるって感じか。そんでそいつらは集まって情報を共有とかしてるわけでもない。各々が別々に動いて何かを成し遂げようとしてる。」



呟くように声を漏らすとフニューは露骨に冷や汗を流した。その反応に俺は確信を得る。


と同時に敵対しようとしてる組織の不気味さに怖気が走った。


完全に裏に潜り、エルフすら一員として引き入れる手の広さ、、、そして何より恐ろしく前から準備しているだろう事が予想できた。


そこまでして何をしようとしてるんだ?



「・・・お前らは何がしたいんだ?」


「こ、答えない! ぜ、絶対に!やっとここまで来たのに、、、もう少しなのに、、、!」



フニューはヒステリックに叫びながら必死に身をよじる。蔓のせいで動くことはできないし魔法も使えないみたいだがそのあまりの剣幕に周りで見てるエルフ達も動揺していた。


どこか半狂乱になってブツブツ言い出してしまったフニューに俺はため息をつく。



・・・こうなられると会話が難しくなるんだよな。



無理矢理引き出してもいいが彼女は唯一の手掛かりで囮だ。下手に壊したくないのもあるが、、、。



・・・少し、疲れた。



よく考えると最近話し合いや戦闘が続いてる気がする。結局ドリム地下街でも休めなかったしいい加減集中力が切れてきた。


肩に手を当てながら首を鳴らし、眠たげな半目でフニューを見下ろしたあと俺は振り返ってこの場を離れようとする。



そんな俺にリフィーナがどうしたのかとあたふたしだした。



「え、ど、どうしたの?」


「ちょっと休んでくる。あとは頼んだ。」



それだけ言い残して俺はこの場をあとにする。

ユリジャやリクリカにも休憩することを伝え、一度頭を整理することにした。





ーーー




尋問も一度区切りをつけ、俺は休憩するためにあくびを漏らしながらスイとハイルがいる民家へ向かう。


すると途中に腕を組んで不満げに顔をゆがめるミリアが立っていた。



「・・・ミリア? どうした、なにか怒って、、、。」



声を掛けようとしたが、ミリアはこちらにツカツカと近づいてきて俺の右腕を掴んで持ち上げる。


そして血が滲み、真っ赤に染まった右手を睨むように見つめた。



「・・・完全に傷口が開いてます。今はまだ薬が効いてあまり痛くないかもしれませんけど、効果が切れたら激痛が走りますからね? 鎮痛剤なんて連続で投与できるものでもありませんし、しばらくは我慢してもらいます。」


「うへぇ、まじかよ。」


「・・・・・どうしてこんな無茶をしたのですか?」



とぼけるようにため息をついた俺の目をミリアは真っ直ぐに見つめる。

俺はこちらを見つめる彼女に、嘘を付くことができなかった。



「・・・敵はだいたい見当がついてたんだ。油断はしたくないし、無茶をするしかなかった。」


「それだけではありませんよね?」



そう言い募る彼女に俺は口ごもりながらも素直に心情を吐露してしまう。



「・・・重傷を負ったスイを見て、不安になっちまったんだ。また誰かを頼れば傷つけてしまう、今度は失ってしまうかもしれない、、、そんな風にな。」



正直今回の一件はミリアに家を守ってもらわないで手伝ってもらえばもっと簡単に対処することができた。


ミリアの障壁は相手を閉じ込めたり拘束することも可能で、そうすれば無茶して戦わなくても最初から呪いの解析に努められる。


余裕が生まれれば周囲へと意識を向けられるし、患部を気にしながら制圧することだって出来た筈だ。


だが俺は死にかけていたスイを昔の助けられなかった人達と重ねてしまい、守るものだと考えてしまった。

守りたい人を失いたくない、、、その想いが自然とミリアを遠ざけ、頼ることを放棄してしまった。


正直に心の内を明かした俺をミリアは最後まで見つめ、最後に両手を添えて目を瞑る。



「確かに私は貴方みたいに強くありません。頼ってもらっても応えられるか分かりませんし、失敗することだってあります。」


「・・・。」


「でも守る事だけは絶対の自信があります。昔から怪我なんてあまりしたことないのですよ? どれだけ危険な目に遭っても、助けが望めなくても、自分の身だけは守ることができました。」



まるで子供に言い聞かせるように優しく、そして厳しさも内包させて手を包む。

そして目を開けてそっと微笑んだ。



「私は絶対に死んだりしません。全てを守れるかと言われたら無理かもしれないですけど大切な人達は守らせてください。・・・例え盾でもいいのです、今の居場所を守るためなら幾らでも戦いの場に立ってみせます。」



戦いを怖がり、脅威が近づけば震えて縮こまっていた彼女の決意を込めたその瞳から俺は目を離すことができない。



「律兎さん、貴方は私の大切な人です。傷つきながら無理するのを見て、心穏やかで居られるほど大人なんかじゃないのですよ。・・・私は貴方を守りたい、辛く苦しんでいるなら傍にいたいのです。」



そう言って目を潤ませるミリアに俺は言葉を失った。



ーー守りたい。



そんな言葉を俺は七剣になって言われたことなどなかった。守られるよりは守る側で、例え辛くても強くあろうと考え、剣を握り、弱みを見せたりしないように心掛けた。


俺たちの関係なんて成り行きで召喚され一緒に逃げるだけの薄いものだったはずだ。無茶なことばっかしてきた、危ない目に合わせてしまったことだってある。


でも彼女はそんな俺を信じ、傍にいてくれる。



・・・なら、応えたくなるなぁ。



「・・・お前、なんか告白みたいな事言ってんぞ?」



気恥ずかしくなった俺は茶化すような笑みを浮かべながらそう返すと、ミリアはきょとんとした後、顔を真っ赤に染めていく。



「え、あ、そ、そういう意味で言ってませんからね!? た、ただ私は、、、えっと、仲間なら、頼ってほしいと伝えようと、、、!」


「ははっ、わかってるよ。・・・ありがとう、気が楽になった。」



俺は笑みを浮かべて素直に礼を伝える。

何故かそれを見てミリアは更に顔を赤くし、目を逸らしてしまったが俺は気にせず首を鳴らし、気持ち軽くなった足取りで歩き出す。



「頼りにしてんぞ、ミリア。」


「ーー! はい!」



そう言って笑う俺の後をミリアは嬉しそうに付いてきたのだった。

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