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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー57



・・・俺たちの魔族とのファーストコンタクトって高確率でギスるなー。やっぱ人間だからか。



現れたエルフ族の兵士?らしき連中によって囲まれ、既にお互い臨戦態勢。


エルフ族の兵士達は弓をそこかしこで構え、スイは剣を下にし力を抜きながらどこから攻撃が来ても対応できるようにしている。


ちなみに間に挟まれた精霊達はアワアワしていた。


それに対して俺は笑いながらゆっくりとヤクラを構える。



「交戦の意思あり、、、と、捉えて良さそうだな。」


「・・・こっちの都合で悪いがあんたらに対して少しストレスが溜まっててね。憂さ晴らしに付き合ってもらえると助かる。」



別に直接何かされたわけじゃないけど、ハイルの件からロド族での仲裁。こっちが勝手に首を突っ込んでいると言えばその通りだけど、お前らは隠匿の種族とかいうならもっと忍んでくれ。


それにぶっちゃけ交渉も面倒くさくなってきた。

丁度、ユースからいいやり方も教えて貰えたし実践でもしてみようかな?



・・・相手を無理矢理納得させるなら圧倒的な実力差を見せつければいい。



ハイルの姉とか言う天能持ちのフィーカもいなさそうだし相手してやるか。



「・・・ミリア、スイ、ハイル、お前らは手を出すなよ。こいつらは俺一人で相手する。」



そう言うと意図をくんでくれたミリアが二人に近寄って障壁を張った。ミリアの障壁に関しては俺も信頼しているし、これなら後ろを気にせずに戦える。


エルフ達は味方を下がらせて一人で立ち向かってきたことに怪訝な表情を浮かべていたが、一人で来るなら早めに対処しようと冷静に判断したのか、遠方のエルフは矢をつがえ、近くの者たちは剣を構えた。



「放てぇ!」



前に出てきていたエルフが号令を発すると、全方位から剣士が飛び出してくる。

それに対して俺は動かないで観察に徹した。


先ず足元を狙われた一撃を横にズレながら躱し、反対側から迫っていた相手の懐に潜り込んで背中を上げて投げつける。そして体勢を整えたところに必中ともいえるような矢が飛んでくるのを一息ですべて斬り落とした。



「ーーは!? な、何故全てに対応出来るんだ!」


「慌てるな! 射手は間を空けながら相手を牽制!剣士はそのまま斬り込め!」



すると、迫っていた剣士の一人がまるでトランポリンでも飛び乗ったかのように高く飛び上がり、頭上から力を込めた一撃を振り下ろしてくる。

そしてそれを避けた後に追撃しようと2人の剣士が迫ってきていた。


なので振ってきた剣を受け流すように滑らせ、振り下ろされた剣を地面にめり込ませる。

動けなくなったエルフを蹴り飛ばして体勢を崩し、1人を無力化。


もう1人は剣を持っていない片手に風の球体を作り上げ、それを放ってきた。



・・・うーん、それにしても精霊魔法が組み込まれてるにしては威力が低いな。



おそらく今は周囲に仲間がいるため、派手な魔法は使ってこないが、こいつらからは精霊と似たような感覚がする。魔力の塊である精霊と契約した魔法がこの程度なわけない。



・・・まだなめられてるな。



風の球体が破裂する前に魔法を切り刻んで無力化。

ヤクラだとこういう非物質も切り裂けれるから楽でいいよなー。



「魔法を!?」



全員に動揺が広がるが、練度が思ったより高いのかすぐに構え直してくる。



ーーヒュンヒュンヒュン!



宙空に剣を振りながら切っ先を相手に構えた。



「ーーくっ! 早く制圧を、、、!」



パキンッ



「・・・は?」



周囲を囲んでいたエルフ達が持っていた剣が全て両断され、そのまま地面に突き刺さる。

俺は近くで固まる魔法を放ったエルフの顔面を剣の腹でぶん殴った。


他のエルフ達は、突然の出来事に固まり冷や汗を垂らす。


全員が全員動くことができず、辺りを静寂が包んだ。



「・・・なん、、、だ? お前は、、、なんだ!」


「ただの剣士だ。」



無表情で剣を構え直すと相手は、「ひっ!」と短い叫びを上げながら慌てて剣を構える。

相手の数人が恐慌状態に陥っている事を確認していると、遠方の3方向から矢が飛んできたので全てを()()()()()弾き返した。


・・・うん、何回か受けてわかったけどこの弓による遠距離射撃にも精霊の補助が付いてるね。風による補正と威力強化、音も最小化されてるか。


それをこっちは魔法を使わず素の威力で自分たちの場所まで返されるのだから向こうからしたら信じられないだろう。


でもまぁ、現実なんてものは簡単に自分の想像なんか超えてくる。常に可能性を視野に入れないと動けなくなっちまうからな。



「ーーっつ! 魔法だ、総員障壁を張り巻き込まれないように気をつけろ! サラカ、ルッカ!」


「は、はい! 恵みの運び手、揺らぎ、凪、すべてをさらう遍く暴風 レル・エウゼルデ! 『風円陣』!」



相手が魔法を発動させると自分の周囲6方向に風の旋風が現れる。その風はドンドンと勢いを増していき、自分のいる場所を狭めていく。


どういう魔法なのか風を観察すると近くの木の幹が切られたように傷つき、落ちてきた葉は両断される。



・・・なるほど、逃げ場はないし殺傷力も高そうだ。まぁぶっちゃけあの長い詠唱の間に斬ろうと思えば斬れたけどね。



「原初の光、奪い、導き、尽くを染める猛火! ガルム・ジュガルッダ! 『火走り』!」


「うん?」



風の向こう側から詠唱が聞こえてきたので目を凝らす。


1人のエルフが地面に両手をつくと勢いよく火が地面を走って旋風に巻き込まれ、ただの風が火をまとった旋風へと変わる。



「・・・殺意高すぎじゃね?」



逃げ場なく燃える炎によって酸素は消費され、呼吸がし辛い。このままだと動けなくなって無抵抗で炎に巻かれることになるだろう。



「・・・ただ悪いな、流れを掴むのはあいつにはじめに教えられることだ剣舞一式 渓転空嵐。」



迫りくる炎に包まれ、中心が一際大きな旋風へと変わる。

見守っていた多くのエルフ族が勝ちを信じ、安堵のため息を吐いた瞬間、、、



炎の風は広がりながら上空へと舞い上がった。



エルフ達はその光景を呆然と眺める。



「・・・この程度か?」



首を鳴らしながら少し威圧を込めて辺りを見渡す。

回って火を散らした影響で前の方にいた何人かは火傷したかもしれないけどこっちは殺されそうになってたし火を上に逃がしたのだからそこは許してもらいたい。


でもここで下手に追撃してこなかったのは良い判断だね。俺が攻撃を弾くことができると分かったのに追撃してきたら倍返しにしてたもん。

まぁ、呆気にとられて忘れてただけかもしれないけど、、、。



「ーーっ、貴様、まさか報告にあった人間か!? だとしたら何としてもここで止めなければ!」



・・・あ、報告にあった人間ってユースの事? せっかくジャユ族との関係性を疑われないように代役頼んだのにやりすぎたかな?



ただ最近考えるのが疲れてきたので適当にぼーっと宙空を眺めていると、再びエルフ達が魔法の用意をし始めた。

うん、こんな近距離なら溜めが長い魔法なんか使わないで斬り掛かればいいのにね。接近戦は完全に諦めちゃったのか。



どうしてやろうかと考えていると、魔法の詠唱を唱え始めたエルフの前に一番初めにでてきた精霊が手を広げて立ち塞がった。


突然の出来事に俺とエルフは戸惑う。



「フィクリシア様!? 危険です、精霊魔法は精霊にも効果があるのですよ!?」


『精霊なのでそのくらい知ってますけど!? お、落ち着いてください皆さん! 少し話を聞いて!』



フィクリシアと呼ばれた精霊の彼女の仲裁にエルフ達は構えを解く。

この森に来て最初に姿を現した時も彼女が最初だったし精霊としては結構なババ、、、古株なのかな?



『あ、あの! 確か貴方がたは近頃森を荒らしに来てる者達について聞きたいって言ってたよね?』



そう聞いてきた彼女に俺は「あぁ」と声を漏らした。



「ぶっちゃけエルフにも用はあるけどね。」


『あぁああぁ! 話が拗れる!そこは嘘でも違うって言ってよ!』



でも嘘をついても仕方ないし真実も教えとく。

するとフィクリシアと呼ばれた彼女は頭を抱えた。


なんかこいつ弄りがいあるな。

ミリアと同じ匂いがする。


てか、仮にも協力してるエルフ達に嘘つけって言うなよ。



『あれ待って、てことは嘘つかれた!? あんなに魂に揺らぎがなかったのに!』



そう言って驚いてるフィクリシアの叫びと一緒にどういうことかとミリアに視線を送る。

ミリアはコテンと首傾げて不思議そうにしていた。



「・・・あれ、エルフの里を襲撃してる何者かを知りたいのではなかったでした?」


「あ、最初の目的を忘れて新しい目的にアップデートされちゃってたみたい。」



確かに誰が何の目的でエルフとジャユ族の仲違いを狙っているのかは気になるけど、一番は予知夢だからな?こいつ絶対にその事忘れてるだろ。


フィクリシアは頭を抱えてうずくまる。


せっかくこちらをフォローしようとしてくれたのに可哀想だね。何でフォローしようとしてくれてんの?



「やはりこいつらは我らを! フィクリシア様、どいてください! ここでこいつらを止めなくては!」


『だから待ってよ! 一度彼らの話を聞きましょう!』


「・・・どうして!敵の味方を、、、!」


『違います! 彼はまだ手加減してますが、本気を出せば私達と貴方達の繋がりを断ち斬られますよ!? そしたら貴方達は魔法が使えなくなりますからね!』



静観モードに入っていた俺は突然話を振られて軽く目を見開く。


・・・それにしてもよく気付いたな。


確かに言われた通り精霊がエルフに魔法の補助をする際に使っている魔力経路は霊界からの攻撃で断ち切ることができる。一度斬られた経路を結び直すことはできないし、エルフ達が魔法を使える魔核にも影響を及ぼすので魔法を練ることは難しくなるはずだ(できないことはないけどね)。


そんなふうに1人状況を整理していると、少し違和感を感じた。



・・・? 何で俺はこんな事を知ってるんだ?



いや知っていた、ユースに教えてもらったから、、、? 違う、ユースじゃない、じゃあ誰だ?



『ーー魔法はね、大気中に存在する魔素という物質を人の体にある目には見えない魔核と呼ばれる器官で変換して行使できるの。その魔核には魔力を保持できるんだけどそれには個人差があって生まれ持った魔力量を変えることはできないんだ。・・・裏技を使わない限りね?』



ーーズキンッ!



「ーーっつ!? だ、誰だ?俺はこれを誰に教わった? 何だ、何かを忘れてる。」



思い出そうとすればするほど頭の痛みは酷くなっていく。


そうだ、そういえば何かおかしい。


そもそも俺はこの世界に来た時は沼渡りすらできないほど魔力に関して知覚能力が低かったはずだ。

それなのに今は相手が魔法を使う予兆や、質すらわかる、、、。


できるようになった? いや、元々できたはずだ。はずだよな?


突然まとまらなくなった思考の坩堝にハマり、口元を押さえるとミリアが障壁を解除して心配そうに近寄ってきた。



「・・・律兎さん? どうされました?」



見上げてくるミリアになんとか笑みを返すがどうしてもぎこち悪くなる。

心配させないようにしたのだが、見えてしまった影に余計ミリアを心配させてしまったようだ。



「律兎さん、少し障壁張りますので休みましょう。顔色が悪いです。」


「・・・・・大丈夫だよ。立ち眩みみたいなものだ。」



ーーゾッ



その時、首筋に寒気が走り意識の外の外、遥か遠くからほんの僅かな殺気が感じられた。

認識した瞬間には魔法の感覚等は一切なく、鋭い矢の様な棘がミリアに向かって飛来する。


障壁を解いた一瞬の隙をついた必殺の一撃。


ミリアもスイも精霊たちすら認識することのできなかった棘に向かって必死に手を伸ばして何とか矢をずらすことができた。



「ーーえ!? り、律兎さん!?」


「ーーっう、いってえな。」



庇うときにミリアと一緒に倒れこんでしまい、何とか上体を起こすとズキンっと右手が痛んだ。


そっと右手を見ると、大きなトゲが手に刺さっている。


貫通はしてないので血はそこまで流れてないが刺さった場所から血が垂れていた。



「早く止血しないと! そ、その前に棘を、、、!」



スイはまだ魔力膜の固定に神経を使いすぎるためそこまで長く維持ができない。

俺に任せろって言った手前スイも魔力を閉じていたのだろう、今回の攻撃には対応出来なかったようだ。



「・・・・・っふ、このくらいへい、き、、、めっちゃ痛い、涙出てきた。」


「待ってください、すぐ止血の準備します! まだ抜かないでくださいね!」



手が熱を持ってジクジクというか常に鈍器で殴られてるかのような痛みに耐えながら蹲っていると、突然の攻撃に動揺していたエルフ達は息を飲んでまた武装しなをそうとしていた。

 

すると、、、



「・・・。」



ーーズオッ!



スイから魔力の波が一気に広がり、今までの相手に気づかれない薄い魔力膜ではなく濃く、重く絡め取るような不気味な圧を感じさせる。


そんな今にも斬りかかりそうなスイの前に手を広げ、慌ててストップをかけた。



「・・・止めないで、すぐ終わる!」


「アホか、俺たちが何しに来たのか忘れるなよ。それに先ずは遠くから狙ってきた相手をどうにかしないとだろ。」



痛みに立ち上がりながらスッと立ち上がる。

ジロッと棘が飛んできた方向を睨むと、再び棘が飛んできた。それを左手で握りしめたヤクラで軽々と斬り落とす。



そして逆手にヤクラを持ち直してゆっくりと息を吐いた。



「剣王一式 風間流派生 空斬り(からきり)。」



瞬きの速度で振り上げられた剣から不可視の斬撃が音もなくエルフたちの間を通り抜けて飛んでいく。

それは途中に張られた不可視の障壁に阻まれたが牽制にはなっただろう。


遠くからこちらの様子を窺う影に向かって口の動きだけでそっとつぶやいた。



次は当てる。



そして剣を仕舞い、ため息をついた。



・・・本当は剣帝みたいに上手くやりたいんだがな。



目を細めて本当に一瞬だけ全力の殺意を込めながら周りを見渡した。


冷たく澄んだ殺意は圧しかかるような圧を与えたわけではない。ただ一瞬、相手に死の恐怖を過ぎらせ、実力の差を刻み込む。


エルフ達は寒気を感じて力が抜けたように冷や汗を垂らしながら武器を手落とした。



・・・最初からこれで良かっただろって? いや別に勝てない相手だと思わせたかっただけで恐怖で抑え込もうとしたわけじゃないから。



本当、上手くいかないもんだよね。




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