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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー53


その後適当に食材を買い漁り、「帰ろうか」と、いうところで事件は起こった。



「ゔわぁあああああああああ!」


「・・・俺の迷子遭遇率の高さは一体何なんだ? あれかな、俺も人生の迷子みたいなものだから引き寄せちゃうみたいな?」


「そんな事言ってないでどうにかしましょうよ。」



少しだけ光量が落ちた明光奇石に照らされた帰りに道の真ん中で大きな声をあげながら泣き叫ぶジャユ族の少女がいた。髪を上方に二つ結い、ワンピースを着た少女はなんかデフォルメしたロドっぽい人形を持って大声で泣いている


・・・何でよりによって俺の目の前で泣き出すんだよ。てか何でタイミングよく俺たち以外いないんだよ!?



「よしミリア、行って来い。」


「行ってきますけど、先に帰らないでくださいね。」



一瞬よぎった思考を見透かされて視線を泳がせていると、ミリアは少女に近づいて、スイナの時と同じように目線の高さに屈んで声を掛けた。



「えっと、こんにちは。」


「はぼげんだぶごぶのどうなつぎってかべってごがいばぁああああ!」


「う、うんうん、大丈夫だから、落ち着いて。」



まぁスイナの時は落ち着いてたからね。

今は相手も興奮状態だし話を聞ける状態じゃないな。


仕方ないので俺も近づく、屈んで目を合わせたら何故かびくって驚かれ、さらに泣き叫ぶ声が大きくなった。・・・なんで?


取り敢えず話を聞こうと思って泣き止ませる道具を探していると、向こうの暗がりから何か近づいてくる気配を感じた。



「・・・なんだ?」


「え? どう見たって泣いてるじゃないですか?笑ってるように見えます?」


「うるせぇわ。」



泣いてる子をミリアに抱えさせて腰をかがめると、向こうから腕をムチのようにしならせた植物の化け物が現れた。不気味な木目が顔のように浮かび上がり、背中からは無数の木のトゲが生える。



「・・・生物、か?」


【しぃぃいぃぃぃ】



空気が抜けるような声を発しながら相手は敵意を込めて飛び出してきた。

ミリアが「わわわっ!」と言いながら障壁を張って、守りを万全にしたことを確認し、相手と同じように突っ込んでいく。


すれ違いざまに一瞬だけ厄羅を顕現。首と胴体を切り離した。


謎の何かはふらついて事切れたように倒れる。


倒れた、、、が。



「わわわっ! 律兎さん、起き上がってきましたよ!」


「・・・再生能力が高いな、まぁ見た目から想像はついたけど。」



植物由来の魔法などは高い生命力や活性といった性質を持つものが多かった。

この魔法自体は知らないけど特性は似通ったものだと推測してよさそうだ。



・・・うん、だとしたら相性悪いなぁ。斬っても再生するなら燃やすか?



薔薇のトゲのようなものを生やして振り抜かれる鞭をスパッと切り離しながらどうしようか考え、やっぱり燃やそうかと思って前に出た瞬間、少し嫌な予感を感じて立ち止まった。



「・・・近くに術者がいない? ならこれを動かしてる動力は何だ?・・・ 少し上半身の気配が強いな、引きずり出してみるか、、、。」



直感に従いながら幻渡りで表面の木の部分だけを斬り刻むと中から小さな男の子が転がり落ちてくる。



「・・・え?」


「ば、ハロぐん!」 



でてきた男の子にジャユ族の少女が駆け寄った。

泣きながら抱きつく少女のそばに寄って少年の容体を確かめる。



・・・弱々しいが脈もあるし、息もしてる。ただ反応が薄い。



「ミリア、回復魔法!」


「は、はい!」



ミリアがすぐに少年の隣に膝をついて手をかざす。

淡い光が灯って徐々に呼吸が安定してきた。



「・・・よし、うまく作用してるな。」


「ぎ、ギリギリでしたよ? 今魔法を使ってわかりましたけどだいぶ生命力が失われてました。」



説明を受けて眉をしかめた。

つまりあの魔法は取り込んだ生物の生命力を糧にして活動していたってことだ。

少年に魔法を使ったクズ野郎に吐き気がするが、今は心配そうに見つめている少女の前で悪態をつくわけにはいかない。


にしても植物由来の魔法か、、、。


ジャユ族に敵対してるエルフ族が頭に浮かぶ。

漫画に倣うならエルフ族は自然系の精霊魔法を得意としてる可能性が高い。

実際にハイルも同じようなことを言ってたしほぼ確定だろう。


ただもしエルフ族だったとしたら、、、もう味方する気がなくなりそうだ。



「・・・律兎さん。」


「何だ?」



考え事に頭を回していたため少し冷たい声が出てしまったが、ミリアは気にすることなく不安げな目を向けてきた。



「・・・私、これ知ってます。」


「は? 知ってるって何、、、を、、、。」



そこまで言いかけてミリアが不安そうにしている理由を察してしまった。魔族の扱う魔法は人の魔法とはだいぶ異なるようで、人が魔族の魔法を使えないことはないが使うにはかなりの年月を要するらしい。


なので今までミリアが人族領で生きていた頃は魔族の魔法を見たことがないと言っていた。

そのミリアが知っているということは、、、。



「この魔法を使ったのは、、、人?」


「闇魔法『樹霊化』。殺した木から負の魔力を抜き取って他者に与える。与えられた者は樹霊と化し、死ぬまで魔力を吸われ続けます。」



よりによって闇魔法かよ、悪意マシマシじゃねぇか。

嫌な可能性が浮かび上がってきた、もしかしたらこのいざこざ、誰かが仕向けてるかも知れない。



「・・・これ、ログロドさんに伝えたほうが、、、」



ーーズッ!



どうしようかと頭を悩ませていると、突如として大地が揺れ動く。慌てふためく住人たちに、悲鳴のような声も多く聞こえた。


ただ、この揺れは地面の下から響くような感じはしない、、、むしろ、上か?


巨大な気配を感じて上を向くと、明光奇石から数キロ離れた場所にドリルのような形状をした木の根が現れた。



「なんだあれ?」



戸惑っていると、ドリルのような先端が花のように開いていき、陽の光をドリム地下街に落とす。


上から貫通してきたのか、、、。


その花開いた真ん中から一人の少女が降りてきた。白めな短い銀髪に鋭い目、妖精のような羽根を背中に顕現させた、長耳の少女。



・・・エルフ族か。



「何ですかあれ? と、遠すぎて見えない、、、。」



手でひさしを作りながら目を細めるミリアを放っておくと、エルフの少女は片手を上げた。


そして何か呟いているのを目を凝らして唇の動きを読む。



「『天能 森の伝え人』。」



呟かれた一言にブワッと冷や汗が湧きでる。


木の根から小さな種のようなものが落ちたと思ったら中空で留まり、流線型の騎士のような姿が形成されていく。


たった一人から突然の軍勢が生み出される。



「り、律兎さん! あ、明らかに不味くないですか!?」


「まさか、攻め込む気か? 何も対策できてない状態の守りは不利だぞ。」



天能からは一切の魔力を感じない。

恐らくだが源自体が違うのだろう。


木製の騎士たちは武器を構えて、降下の構えをとる。

そして飛び出した瞬間に、下の地面から突然岩で出来た巨大な腕が出現して、前方に構えていた兵達が押しつぶされる。


開かれた手からパラパラと粉々になった兵が落ちていく。そして下から巨大な圧が感じ、土造 のガイアデルガが飛び出し、その背にはロドが乗っていた。



「り、律兎さん、こんな街の真上で戦えば周りへの被害が大きいですよ。」


「・・・さすがに放っておけないな。だがここで俺が出て顔を覚えられるのは、、、。」



この争いに第三者の思惑が絡んでるかも知れないのに今仲裁に入り込んで関係を悪くしたり顔を覚えられたりするのは避けたい。


ただそうなるとこの状況に手が出せない。ロドやジャユ族の兵士が何とかしてくれるかも知れないけど、天能相手はロドにしかできないだろう。



どうしようか頭を回していると、手の指輪が目に入った。



「・・・あ。」



『なので次はあの人を呼んでくださいね〜』



そういえば大抵のことを解決できて、呼ぶように言われてた人がいることを思い出す。

なんか色々悩んでたのが馬鹿らしくなって手を掲げてある人を思い浮かべた。





ーーー





照らされる陽の光の下、腕を組んだ少女とロドが睨み合う。



「・・・ふん、なんだその泥人形は。それで私の相手をするつもりか?」


「てめぇ、族長の娘だな? 何のつもりだ、ここまで攻め込んだならもう言い逃れできねぇぞ。」



お互いに一触即発の空気を醸し出し、腕を構える。


ただ分はロドの方が圧倒的に悪い。

ロドにも天能はあるが、もしここで使えば下の街がめちゃくちゃになるだろう。


そして相手は手加減をする必要は一切ない。



「行くぞ。」



空中に舞った木の葉が相手の手の周りを高速で回る。

切り裂くような音を立てながら投げられた(やいば)を空気中の砂を押し固めて受け止める。



ーーギャリギャリギャリギャリーー!!



本来なら避けることも出来た、しかし避ければこの魔法は街に当たる。街の長たる族長にそんな選択肢は存在しない。



「うぉおおおおおりゃあああああぁ!」



精一杯に叫びながら弾いた魔法は天井に当たって巨大な亀裂を作った。



「たった一撃を弾いただけだ、その程度ではないだろ?」



すでに彼女の周りには先ほどと同じように高速で回転する葉が何個も作られていた。

それに歯噛みしながらなんとか耐え抜こうと力を込めた瞬間、突然2人の間に1人の人間が現れる。



カジュアルな装いをした爽やかな笑みを浮かべる青年ユース・ロイアミナは特に緊張感もなく空に立つ。



そしてユースはニコニコしながらエルフ族の少女に顔を向けた。



「初めまして、美しいお嬢さん。七剣が一人、剣帝、ユース・ロイアミナ。」


「・・・人、か? なぜ突然、しかもどうやって空に立っている。」

 


少女は精霊魔法を使い、風の精霊の力で空を飛んでいる。ロドも土造で再現したガイアデルガの飛行能力によって飛んでいるのだろう。



しかし、この青年は違う。ただただ立っているだけだ、空中に、、、魔法を使った気配もなく。



「え、そこが気になる? 説明してあげたいけどあまり時間がないんだ。だから、悪いけど率直に言わせてもらうね。」



ユースは軽く指を上げてにこやかに伝える。



「僕の仲間に頼られてね、ここは帰ってもらえるかな?」



そう言い放ったユースにロドは目を見開く。

もちろん人族の知り合いなんてただ一人しか知らず、少女を帰らせようとしたってことは彼は味方、、、か? 断言はできないが可能性は高いと思い込む。


ただそのユースの発言に少女は青筋を浮かべた。



「・・・ふん、低俗な人間が、貴様の命令を私が聞く理由などない。」


「うん、そうだよね。僕も説き伏せたいけど流石に状況が分からなすぎるからさ。だから、もう一個の手段でいこうかなって。」



ユースは特に剣を抜く事も、構えることもせずに自然体で立っている。

その異様さを不気味に感じ、木騎兵を数体放った、、、瞬間、、、。



ーーずっ



体に刃を入れられる光景を幻視して大きく下がる。一瞬で呼吸は乱れ、冷や汗が滝のように流れ落ちた。



「ーーッ! な、何をした!?」


「え、何も? してないわけないけどね。」



大仰に手を広げて肩を竦める彼の前を何故か再生しないで事切れた木騎兵が崩れ落ちていく。


何も見えていない、剣を抜く動作も、魔法を使った気配も、なんなら移動したことすらわかっていなかった。



「もしこっちに交渉カードが無くて、尚且つ相手を無傷で帰すとなると示せるのは圧倒的な実力差くらいしかないからね。まぁそれでも帰らないって言うなら、、、手足でもバラバラにして後で治せばいっかな?」



物騒な事を言いながらケラケラ笑う相手にエルフ族の少女は動けなくなっていた。



・・・怖い。



相手は圧倒的な威圧感も、殺気も何も発していない。なのに勝てない、殺せない、殺される。得体の知れない化け物、未知という恐怖が体を縛り付ける。



「な、なに? あなた、は、何なの?」


「ふんふんふん、口調が弱々しくなったね。さっきまでの態度は舐められないためかな、今の喋り方が素なんだね。」



まだ全力は一切出してない、ただ、出しても全く歯が立たないのじゃないかと思ってしまう。


天能、、、この力を持ってから負ける、戦えないなんてことはなかった。どんな強敵でも食らいつくくらいはできたのに、今の相手はひどく遠い。



「別に戦えなくても恥ずかしいことじゃないよ。だって君の力は地上で本領を発揮するからね。ここでは分が悪いってだけ。」


「な、、、にを、、、あなたは、私の力を、、、知らないはず。」


「うん? 自然と心を通わせることができる『自然共有』と自分の存在を精霊達と同等の格に引き上げる『霊格化』、それによる強制力で生物を操ることができるけど、意志を持つ者には弾かれるから人には効かないね。・・・あとは、細胞の活性化かな?」



手の内はまだ見せていないはずなのに次々と言い当てられていく、その事実に身震いしゆっくりと後退った。



「ああ、ちなみに活性は便利だけど、一撃で死滅させられたら意味はないよ? 本当は説明してあげて君にそこからも復活できる対策方法を編み出してほしいけど時間がないからなー。」



残念そうに肩を竦める相手に完全に心を折られて逃げ腰になった。そして相手はそこすら見透かしたように手をパンッて叩いて手を振ってくる。



「逃げれることは悪いことじゃない、そこで命を手放すほうが愚かだと僕は思うね。あ、あとそうそう、その力だけど、、、。」



相手に許され、すでに逃げようかと考えていたところ、天能について触れられた。



「それ、与えられただけだろう? いざって時に役に立たないから自分のモノに昇華しといた方がいいよ。」


「なに?」


「え、気付いてないの? んー、こういうのは教えるより気付かせるべきって剣老によく怒られたからなー。まぁいいや、忠告ってことで胸にでも留めておいて。」



悔しそうに顔を歪めながらエルフ族の少女は羽根を広げる。そして飛び立とうとした瞬間にロドが叫んだ。



「待て! 何でお前は急に攻め込んできた!」



そう問いかけると彼女は軽く振り返り、仇敵をみるような目でロドを見た。



「・・・何を、貴様らが先に手を出したのではないか。」


「は?」



そして、少女はそれだけ言い残して飛び立っていった。



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