喚ばれた剣聖ー51
「す、すみませんでした、まさか相手が間者だとは思っておらず、、、。」
「本当だよ、ちゃんと反省してくれ。」
「うぅ、突然後ろから包まれて、、、。」
女の子を脱がした疑惑が晴れなかったので捕らえられたハイルを見つけ出して相手が不審者だったことをしっかりと伝えた。
ペリナはその説明を聞いて顔を青褪めさせ、申し訳なさそうに頭を下げる。
てかハイル包まれたってなんだ? 詳しく教えてもらおうか。
「・・・何でハイルは入れ替わられたの?」
「さぁなぁ? 俺もそこまで聞き出そうとしたけどね〜?」
「うぅ、、、。」
スイが顎に手を当てながらどうしてか考えているのでペリナに嫌味の視線を送っておく。彼女は未だに申し訳なさそうに座っていた。
ちなみにスイはまだ体痛いみたいだけど、なんとか動けるまでは回復出来たらしい。
「てかハイル、お前なにあっさりやられてるの? 削るぞ?」
「な、何を!? い、いや、あ、あの人、し、知ってる人に変化してて、、、。」
「知り合い?」
「う、うん、ね、姉さんだったけど。」
何故か気まずそうに顔をそらされる。
・・・そうか、肉親に変化されてたなら仕方な、、、いや、肉親ならむしろ分かれよ。
俺の若干責めるような視線にハイルは視線を泳がせた。
「い、いや、ぼ、僕、姉さんが少し苦手で、ひ、久し振りだったから緊張して顔見れなかったんだ。」
「それで背後を取られてまんまとやられたわけか、、、。てかこんな所にいるわけ無いって思えよ。」
エルフ族は閉鎖的な種族って言ってたのにこんな場所にいるわけ無いだろ。てかお前だって見つかった瞬間に捕まったんだからもしお姉さんが街に入ろうとしたら同じように捕まるんじゃね。
「でも変化って怖いですね。今回は気づけたからいいですけど、もしかしたら気づかずに入れ替わられてる可能性もあったわけですよね。」
「だな、相手の擬態もかなり精度が高かった。喋り方もそっくりだったし疑いを持てないと気付きづらいと思う。」
俺も気づけたのは偶然だしね。
何かハイルらしくないって感じてカマかけたのが上手く行っただけでそこも相手に理解されていたら気づけなかったかもしれない。
「・・・簡単な合言葉でも決めとくか。何かいいやつある?」
「はい!ピザって言ったらコーラとかどうです!」
「うん、相変わらずだね。」
でも元の世界の飲食物なら当てずっぽうで当てられたりすることもないか。案外いい案かもしれない。
「よし、それで行くか。じゃ、相手がピザって言ったらコーラね。」
「はい!」
「・・・わかった。」
「う、うん、ピザとコーラが分からないけど、、、。」
と言う現代ならある一定の人達が怒りそうな合言葉を決めておき、取り敢えずの対策とした。
「・・・これからどうする?」
スイがそう聞くと、全員の視線が俺に集まる。
あ、俺が決める感じか。いつの間にかリーダーみたいなポジションに収まってるね。まぁいいけど。
「そうだな、、、。取り敢えずはエルフ族の情報が欲しいし、ロドと話さないとな。今までごたごたが続いたしゆっくりしてもいいと思う。」
「・・・ならしばらくは滞在?」
「急ぎでもないしな、観光がてらゆっくりしよう。」
俺がそう言うと全員が頷いた。
ぶっちゃけ今の段階で街から飛び出して森に向かってもエルフ族に会えることなく森を彷徨ってしまう可能性が高い。ハイルは自分を狙ってくるとは言ってたけど、もしハイルだけ攫われでもしたら俺たちは途方に暮れちまうしな。
「・・・では明日は暇なのですね。律兎さん、約束覚えてますか?」
ミリアの半目に俺は苦笑を返す。
今回は悪かったと自覚してるので俺も文句を言うことなく頷いた。
「あぁ、覚えてるよ。金はないけど、少し店でも回ってみるか?」
「はい! 暇なので行きましょう!では明日はみんなで、、、」
嬉しそうにミリアが振り向いて皆の顔を見渡す。
スイは少し考えた後に軽く微笑んだ。
「・・・私はまだ体が痛むから遠慮する。一人にならないほうが良さそうだしハイルも付き合ってもらっていい?」
「え、ぼ、ぼく? も、もちろんいいよ!」
いや、体が痛むってミリアに治してもらってたし、それは無さそうだけど?
やりたいことでもあるのかな?と首を傾げているとミリアも不思議そうにする。
「えぇ、魔法の効きが悪いのかな? もっと魔力込めてみます?」
「・・・! だ、大丈夫だから、疲れたから少しゆっくりしたいだけ、2人で楽しんできて。」
過剰な治療をされそうになり、スイは慌てて手を振る。
楽しんできてって言われても金が無いのだが?
そう思い、ペリナに物言いたげな視線を送ると彼女は一つ頷いた。
「では私達の方で口利きしておきます。今回の試合で貴方方の実力は多くのジャユ族が認めるものとなりましたので何か文句をつけに来る方もいらっしゃらないでしょう。明日はお好きな店をご利用ください。」
え、お金とかもいらないってこと?
好きに店に入って適当に食べて買ってをタダで出来るとかすごいVIP待遇じゃん。
それほどロドに勝ったというのは大きいってことか。
「仕方ないですね、明日は2人で出かけますか。」
「嫌ならいいぞ。ぶっちゃけ俺も怪我してるしな。」
「嫌とは言ってませんよ。」
ミリアはそう言って部屋を出ていった。
・・・? なんか嬉しそうだなあいつ。
一人首を傾げていると、ペリナが腰を上げて同じように扉へと向かう。
「恐らく何処に戻ればいいか分かっていらっしゃらないと思いますので屋敷に案内してきますね。皆様もお戻りになる際は他の者を遣わせますので、屋敷へとお願いします。」
こちらへと向き直ってペコリと一礼だけして彼女は立ち去る。この短い間にミリアのことが分かってきたみたいだね。
「・・・んで? お前らは何に気を使ってんだ?」
「・・・別に、たまには二人でゆっくりしてもいいと思っただけ。」
んー、あいつと二人でゆっくりできるかな?
むしろ疲れそうな気がするのは俺だけか。
でも頑張ってはくれたし、ちゃんと労いはしたほうがいいね。
仕方ないかと頭を掻いて屋敷へと全員で戻る。
何かが動き始めている気はするが、今は何もできない。その歯痒さに少しモヤモヤしながらも、少しは自分も労おうと思い直したのだった。
ーーー
屋敷に戻ってまた豪勢な食事を頂く。
ロドは用事があったのか俺たちが食べ始めた30分後くらいに合流した。
「わりぃ、遅くなっ、、、お前ら、初日と同じくらいの量があったはずなのにもう食い終わったのかよ。」
初日と同じように所狭しと並んでいた料理をロドが来たころにはほとんど食べ終わっていた。まぁ前と違ってハイルが増えてはいるけど早かったのは確かだね。
「全員いい感じに疲れてお腹空いてたからな。相変わらず美味しかったよ。ご馳走さん。」
「ったくよ。いいデザートを持ってこさせるから少しくらい会話に付き合ってくれ。」
ロドはそう言うとパチンと指を鳴らす。
硬めのスポンジにクリームが入った美味しそうなデザートが一人一人に持ってこられる。付け合わせのドリンクはお酒だったが、辛めのお酒に甘いデザートがよく合う。
「さて律兎、お前は俺に勝ったわけだが何か望むことはあるか?」
大仰に組んだ手に顎を乗せてロドはそう問いかけてくる。俺はそれに対して口をモゴモゴさせながら応えた。
「そうだな、知りたいのはエルフ族との接触方法と里の場所だな。」
正直にそう答えるとペリナはピクリと反応を見せて、ロドは「ふむ」と納得を見せたかのように頷いた。
「それは、そこのエルフ族の青年繋がりか?」
「あぁ、実はこいつの故郷であるエルフ族の里が危険な目に合う可能性が高くてな。その状況を確かめるのと可能なら助けたいって感じかな。」
何一つとして隠すことなく話すとロドは口の端を吊り上げる。
端に座るハイルはガタガタ震えながら縮こまっていた。
「・・・ふ、俺たちジャユ族が今エルフ族と敵対してるとしてそれを聞くのか? もしお前らの口からどうやって場所を探り出されたのかを漏らされればアイツラと俺達は本格的に争う羽目になる。」
「そこは漏らさないと信じてもらうしか無い。後もう一つ言えることはもし、お前らとエルフ族が争う事になったらどっちの味方になるのか保証できないってことかな。」
「くっはっはっは! 随分と腹の中を曝け出すじゃねぇか。そう言われて素直に教えると思うか? お前ほどの手練をまんまと相手に送るわけねぇだろ。」
ロドは試すような笑みを浮かべながらこちらの出方をうかがう。俺はそれに対して肩をすくめた。
「今の所エルフ族に味方する気もないけどな。・・・まぁ少し考えてみてくれよ。俺はお前らに対して嫌な印象を持ってない。むしろ何でエルフ族がお前らを襲ってきてるのかを確かめて、何か原因があるなら取り除けたらいいなって思ってさ。」
「・・・へぇ、仲を取り持とうってか?」
「あぁ、族長であるお前は動きづらいだろ? だから代わりに俺たちが話してくるよ。エルフ族が存続できて、そんでお前達にも実りを渡してもらえるようにな。」
甘いデザートをパクつきながら気楽に言いのけた。
ロドは思案げに腕を組む。簡単に言いのけたがもし失敗すればどちらにとっても最悪な展開に陥る可能性が高い。下手に頷いたりは出来ないだろうね。
「・・・・・賭けだな、エルフ族が危険な目に遭うってのもよくわからねぇがお前らの方が見えてる視野は広そうだ。・・・よし、分かった教える。」
「ログロド様、よろしいので?」
「あぁ、仮に教えなくてもこいつらならいずれ辿り着けそうだしな。それに律兎は俺に勝った強者だ、断る気はねぇよ。」
いや、それは権力者としてどうなの?
もう少し他の人と協議したりするのかと思ったのに、あっさりと決まったことに拍子抜けする。
流石強者が絶対のジャユ族だね。
「・・・これは単純に興味なんだが、何でエルフ族が不味いんだ? もしかしたら今の連中の態度にも関係するかも知れん、可能だったら教えてもらえると助かる。」
そう聞かれて俺はハイルに視線を送る。
今の今まで勝手に話を進めてしまっていたが、俺は所詮部外者だ。進める道は用意してやれるが進むかどうかを決めるのは俺じゃない。
ハイルは震えながらも意を決して息を呑む。
「は、話そう。少しでも前に進みたいから。」
どこから来て、自分が何なのか、エルフの里を目指す経緯をロドへと説明していく。
賭けなのはこちらも同じ、なら信頼を勝ち取るしか無い。後はハイルの真摯さがどれだけ相手の情を勝ち取れるか、かな?
・・・・・。
・・・・。
・・・。
「・・・歌詠み、かぁ?」
「う、うん。」
ハイルはたどたどしくも説明を終えて、ロドは頭が痛そうに片手で押さえている。
「予知夢とは随分だな。・・・不確定な情報じゃあ動くに動けねぇし、何が起こるのかわからないんじゃ対策も練れねぇ。」
本当にな。
一応、歌詠みっていう人はエルフ族にとって発言権がありそうってことはわかったので、もし入れたら彼女に口利きしたい。というか、彼女は伝えてないのか?いや、本人も何が起こるのか分かってなければ下手に伝えて混乱を招くわけにもいかないか。
「・・・ふむ、俺達が出来ることは今の軋轢を少しだけ抑えておくことぐらいか。ただ、もし被害が大きくなれば俺も止めることが難しくなる。案外タイムリミットは近けぇぞ?」
「この間も外に出たジャユ族の戦士が襲撃に遭っています。死人は出ていませんが、いずれの兵士からも不満や憤りが上がって来ています、、、正直いつ爆発するか分かりません。」
・・・そんなに被害が出てるのか?
なぜエルフ族は突然そこまでの敵意を見せているんだ? ロドの口振りだと突然みたいだし、彼ら側から何かしたという話は聞いていない。隠してる可能性もあるが、エルフ族の真意が読めないな。
「わかった、そこら辺は早めに動くよ。にしてもエルフ族は隠匿の種族じゃなかったのか?」
これはハイルに向かって聞く。
彼は俯いて頭を悩ませた。
「・・・そ、その筈なんだけど、、、。どうして彼らがここまで能動的に動いてるのかが、わ、わからないんだ。」
動けば動くほど隠匿性は薄れて里も見つかる可能性は上がるだろう。そこまでのリスクを負ってまでジャユ族を敵対する理由って、、、。
「ま、それは会ってみないとかー。会った瞬間攻撃されそうだけど、こっちには優秀な盾役もいるし平気か。」
「私ですか?私じゃないですよね?私だったら殴りますよ?」
教会って暴力okなの? こいつの暴力性はどこから生み出されてきたんだろ。まさか俺のせいじゃないよね?
そんな冗談(半分本気)で空気を紛らわせ、話し合いをお開きにする。
・・・あ、そろそろあの人喚ばないとなー。




