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喚ばれた剣聖ー5


とりあえず倒すものは倒したので俺は晴れやかな笑顔を浮かべながらミリアに近づいて行く。



「おーい、大丈夫かー? いやー、なんとか無事でよか・・・った!」


「なんてことするのですかーーー!!」



笑顔で近づいたらミリアはスクっと立ち上がりこちらに向かって拳を振るう。体重の乗ったいいパンチだった。


俺はそれを左手で受け止めながら若干の冷や汗を浮かべた。



・・・ちょーっとやり過ぎたかな、まさか殴られるとは。



説明不足だったのは確かだけどあれ以外に間に合う方法はなかった。

なんとか納得してもらわないと。



「急になんてことをするのですか!! 危うく死ぬところでしたよ!?」


「ま、まぁまぁ、生きてるんだからいいだろ。」


「よくないですよ!! 死んだら終わりなんですからね!?」



それはその通り過ぎる。

確かに今回のやり方は綱渡りであった。

もう少し上手いやり方もあったとは思うし、俺がもう少し早く走れていれば良かったことでもある。


だからちゃんと謝ろう。



「本当に悪かったよ。でもあれしか間に合う気がしなかったんだ、今度からはちゃんと説明する。」


「・・・絶対ですからね? 私だってちゃんと教えてもらえれば断ったりしませんよ。・・・多分。」



最後信用ねぇな。

多分さっきのが軽いトラウマになったか(自業自得)



「でも確かに後少し遅ければ間に合わなかったのは事実ですね。」



そう言ってミリアは振り返り少女の前でしゃがみ込んで目線を合わせる。

少女は見つめられると顔に怯えの色を見せるが、痛みで動けないのか震えるだけだ。


ミリアはそれを感じながら優しく微笑む。



「こんにちは。」


「・・・。」


「私の名前はミリア。お名前聞いてもいい?」



目線を合わせ、優しく微笑む様は聖職者に見えるな。

決して急かさず、相手の言葉に耳を傾けようと矢継ぎ早な質問はしない。

相手の返事をミリアはゆっくりと待ち続ける。


すると少女は短く応えた。



「・・・・・・・・・スイナ。」


「初めましてスイナちゃん。」



ミリアは返事を返してもらえて嬉しそう。

元々美人なこともあってか笑うと破壊力がすごいな。

相手の子も大分整ってるけど、ミリアの笑顔を見て少し頬を赤らめている。



「それでねスイナちゃん。お願いがあるのだけど、私に怪我を治させてくれない?」


「・・・ど、どうしてですか?」



ミリアの突然な提案にスイナと名乗った少女は疑問を返す。


結構警戒してるな。

まぁ、森の中で突然目の前に現れて怪我治させてくれって言うのも怪しいよね。


だけど、他に説明もできないからなー。


むしろこの子がなんで森の中にいたのか気になる。



「んー、私が辛いからかな。痛そうな怪我を見ると私も怪我してる気分になっちゃって、、、だからこれは私のわがまま、私が治してあげたいだけ。」



そう言ってミリアはそっと両手を差し出す。

優しく追い詰めないよう、傷つけないよう気をつけながら、まるでガラス細工のように接する。


スイナと名乗った少女はまだ不安そうにしているが、怪我が痛むのか泣きそうになっている。

そして、おずおずとミリアが差し出した両手に自分の手をそっと添えた。


ミリアはそれを確認すると両目を閉じて魔力を集中する。



「聖なる光よ、彼のものを癒したまえ『治癒の光』」



すると、スイナの体を淡い光が包み込む。

傷がみるみる小さくなってふさがってゆき、後には傷があったのか疑わしいほどの綺麗な肌が残った。



「・・・痛い所はない?」


「だい、じょうぶ。」



スイナは不思議そうに体を眺めて驚いていた。

ただ、痛々しい生傷はなくなったが血色はまだあまり良くないのでちゃんと栄養をとって休ませる必要があるだろう。


そんなことを考えながら眺めていると、スイナは突然涙を溢して泣き出してしまう。


それにミリアが慌て出した。



「ど、どうしたの? どっかまだ痛い?」


「・・・う・・・うぁ・・・うぁあーーー!」



スイナは森に木霊する大声で泣き始め、ミリアに抱きついた。

急に抱きつかれて驚きに目を見開くが、ミリアは優しく包むように抱き返す。

ミリアは何も言わないが、彼女の感じた苦しみ、悲しみを拭き払うようにそっと頭を撫でた。


俺はその光景を何処か遠い世界のように見つめた。



・・・場違い感すごいな。



なんだろう、この疎外感のある感じ。

だって傍目から見たら俺不審者だもん。

折れた剣を持って抱き合う少女と少女を眺めるロングコートの男。



うん、ストーカーっぽいね。しかもヤンでる系の。



通報されても嫌なのでさっきの泣き声や戦闘音に反応して活発化した獣共でも狩ってくるとしますか。

水差されても嫌だしね。




・・・・・。

・・・・。

・・・。




【ーーーグオオオォ】



ーードサッ



即席の木で作った槍で頭を貫かれた二足歩行の虎が事切れて後ろに倒れ込む。

適当にチャチャっとその辺の枝を尖らせた即席の槍を三本、背中に背負いながら魔物を殺して回って行く。

最初の数匹は折れた剣で頑張ってたけどやっぱりリーチが短くて倒しづらかったんだよね。


ならもう槍作ろうって思い直して投げつけたりしながら数を減らしてった。



「・・・ちょっとやりすぎ? 結構血溜まり作ってきちゃったしそろそろ戻って移動したほうがいいか。」



返り血は浴びないように気を使って殺してたけど流石に血の後処理までは出来ない。

無駄な殺生とも言えるかもしれないけど明らかにお腹を空かせてこちらを食おうとしてきたら弱肉強食ってことで退治するしかないから仕方ないよね。

一応退治した肉は全部ボックスに収納してある。食えるかわからないけど肉処理してくれる人に持ってけば買い取ってくれるかもしれないし。


ただやっぱり異世界肉に元の世界の表記が適用されるわけもなく、ボックスには『謎の肉S』と表記されていた。

自分で打ち直して肉の名前を変えられるけど、俺もこの生物たちの名前がわからないので放置しておく。



適当に名付けてもしゃーないし、、、。



・・・さて、音に反応して集まってきた獣はあらかた狩ったな。

だけど今度は血の匂いに惹かれた獣が動き出しそうなのでそろそろ移動したほうが良さそうだ。



そう思って2人のところへと帰る。

そろそろ泣き止んでるといいなー。



「あ、おかえりなさい。」


「・・・おう、ただいま。」



生い茂る背丈の高い雑草をかき分けて戻ると、ミリアが笑って出迎えてくれる。

スイナは疲れていたためかミリアの膝を枕に落ち着いた寝息をたてていた。



「その子が寝てからどのくらい経った?」


「だいたい5分くらいですかね。」



5分か、、、。


本当ならもう移動を開始したかったが、それしか経ってないなら無理に起こすのは忍びない。


ミリアはまだ障壁を張り続けており、決して魔物が近づかないように周囲を警戒していた。

それをもっと普段の見張りでも活かしてもらいたいのだけど。


俺は地べたに胡座をかいて座る。



・・・ま、ある程度は狩り尽くしたし、しばらくは平気だろう。元々急ぐ必要があるわけでもないし慌てて移動する必要はないか。



俺は寝てるスイナを優しく撫でているミリアに話しかける。



「・・・なぁ、その子はどこからきたと思う?」



正直この暗い森で人と会うとは思わなかった。

少し浅くなったとはいえ、まだまだ森は鬱蒼としてるし魔物はうじゃうじゃいる。

とてもじゃないが子供が1人でいていい場所じゃない。



「・・・魔大陸側からだと思います。そもそも森を渡れる人なんて滅多にいません。・・・それにこの子は魔族ですしね。」



・・・え?



俺は思わずぐっすり寝てる少女を見つめる。

今まで戦ってきた魔王軍の魔族と違って完全に人にしか見えない水色髪の可愛い少女。この子があの魔族と同じには見えなかった。


あれ?いや待てよ。



・・・そういえば魔族と人の違い知らないや。



「どうしてこの子が魔族だと思ったんだ?」


「髪色です。人族に青色の髪を持つ人はいません。」


「絶対?」


「絶対です。」



確固たる自信を持って返される。

なんでそんな断言できるの? 特殊な髪色の人とか普通にいると思うんだけど。


俺が納得してないとわかったのか彼女は説明を始めた。



「この世界を創造したとされる光神『フェリス』様と魔神『ヴォルザ』は何万年の間、この星を奪い合い争っていたと言います。」



・・・え、何宗教の話?


突然の神様同士の争いを話されるとは、、、。

全然流れが掴めないんだけど。



「何万年もの争いの後、光神フェリス様は魔神を討ち倒し、魔神の四肢を分断して封印しました。」


「やることえげつねぇー。」



要は倒してバラバラにしていろんなところに埋めたって感じか。

神様もやることやってますな。



「・・・ですが、魔神の魔力は強大でいつの日か北の大地に封印されていた頭部から瘴気と呼ばれるほど濃い密度の魔力が溢れ、世界を覆いました。」


「ほんほん。」


「・・・・・なんか適当じゃないですか?」



いやだって結構ありきたりな内容だったから先が読めるんだよな。

どうせあれでしょ? そんで勇者が魔力を晴らしたとかそんな感じでしょ?


ミリアは少し適当な返事をされて頬を膨らませていたが説明を続けてくれる。



「あとはパーッとなってガーッとなったのでした!」


「ごめん、俺が悪かったから適当にならないで!!」



そうとうお怒りでした。

せっかく頑張って説明してたのに適当に返事されたら嫌なのは分かる。

反省するので許してください。


ミリアはため息ついた後、ちゃんとした説明を続けてくれた。



「魔神の魔力に応じ、世界に魔族や魔物と呼ばれる存在が生まれたとされています。彼らはとても残虐で世界を支配しようと侵攻を始めました。」



・・・残虐、、、ね。


俺はミリアの膝上で可愛らしく寝息を立てる存在を見つめる。

とてもではないが魔王軍のように嬉々としてこちらを殺しにくるようには感じられないな。


てかこれなんの昔話。



「フェリス様により創造された人族は魔族の圧倒的な力によって劣勢へと追い込まれます。そしてフェリス様も魔神との戦いの際、多くの魔力を失ってしまったため世界に干渉できず、深い眠りについているとされており、人々は絶望に顔を暗くしました。」


「ひとつ聞いていいか? なんで光神と魔神は争ってたの?」


「元々フェリス様が管理していたこの世界を魔神が奪おうとしたみたいです。」



え、横取り?

そんなガキ大将みたいな感じで喧嘩売られたの女神様。



「・:・少し戻します。人類は数を減らし、絶望に暮れていた頃にフェリス様から神託が1人の神官に降りました。」


「へー、なんて?」


「勇者を召喚せよって。」



え、急な人任せ。

なるほど、魔力なくて人族も守れないし、ピンチだから他の世界から呼び込んだ人間に界を渡らせ、渡らせる際に色々持たせようってことか。



「召喚陣も神託と共に頭に浮かんだみたいですね。それを書き出して召喚、、、みたいな感じって聞きました。」


「界渡りには結構な魔力を使いそうだけどな。結構大規模な召喚になったんじゃないか?」



界渡りなんて人の身で行えるものじゃないからね。

熟練の魔法使い100人は必要だったんじゃない?



「いえ、1人で可能らしいですよ。実際私も1人でしたから。」



あれ、そういえばそうだな。

召喚された時はこいつ1人だった。

てことは魔力は女神様が立て替えてくれてるのか、確かにそれなら界渡りという神技を成せるのも頷ける。


・・・あれ? なのに俺は女神様に会ってないんだけど? ま、いいか。



「・・・・・合理的なんだかお人よしなんだか。」



俺は頭をかきながら目を細める。



・・・女神の真意が読めない。



仮に界渡りをさせる程の魔力が残っているなら魔神の魔力の上澄から生まれた魔族なんて楽に蹴散らせるとおもうのだが。


まさか、女神は魔神と同等の力は無い?


それとも長期的な侵攻を危惧して人族に力を与えようとしたのかな。

守り、餌を与えるだけでは生物は成長しない。

希望と共に暴力に抗えるようにした可能性もあるのか。



・・・なんにせよ、俺に思いつくことじゃ無いか。俺はこの世界にいる時間も知識もない異世界人。それが世界の意思を読もうなんて烏滸がましいにも程がある。



「少し話がそれましたね。そして召喚された勇者は信頼する仲間と共に魔神の恩恵を強く受けた魔族の王、『魔王』を討ち取り、世界に平和が訪れたのでした、ぱちぱちぱちぱち〜。」



ミリアは擬音を声に出しながら手を叩く、紙芝居を読み終えたお姉さんみたいだな。

てかそれで結局、髪色どうこうって話とさっきの昔話なんの関係があったの?



「で? それと髪色がなんの関係があるの?」


「あれ、なんの話でしたっけ?」


「おいこら。」



どうでもいい昔話を長く語ったせいで本題を忘れてるんじゃねぇよ!

ぶっちゃけこの世界の神話とか歴史に一個も興味ないわ。



「冗談ですよ。女神様であるフェリス様が人族を創造する際に与えた髪色は赤色、茶色、金色、白の4色。そして魔神ヴォルザは差別化するように青色、緑色、銀色、黒を持つ者達を創り上げたそうです。・・・なので、人族に青色の髪を持つものはいないのですよ。」



はー、なるほどねー。

確かに元の世界でも主な髪色は限定されてた。だいぶ奇抜な髪色とかになると染めたりしていたくらいだし、髪色は結構わかりやすい判断基準なんだな。


・・・あれ?


俺は自分の髪を触って引き攣った笑みを浮かべる。



「・・・・・も、もしかして、俺もこの世界の住人にとっては魔族に見えるのか?」



冷や汗を垂らしながら聞くと、ミリアはいい笑顔で答える。



「はい、もちろんです。」



いい笑顔!!

まだ投げ飛ばしたこと根に持ってるな。

そうだね、ちゃんと説明しなかったのは悪かったと思う。今度はちゃんと投げるって言ってから投げよう。


てか、それなら俺って人族の街とか入れないんじゃないか?


嘘だろ、運悪く召喚されたのに異世界でご馳走を食べられないのかよ。

突然喚ばれたと思ったら洞窟でトカゲと戦い、外に出れたと思ったら燃え盛る街に連戦、、、本当ついてないな。



俺が軽く絶望していると、ミリアはクスクス笑ってこちらを見つめた。



「・・・っふふ、冗談ですよ。黒髪だけは例外の部分もあります、初代勇者様が黒髪でしたからね。少し風当たりは強いですけど、、、。」



長年争ってきた種族同士だから警戒しない方がおかしいけどさ〜。

てかじゃあ初代勇者様すごい大変だったろうな。


そこでふと思う、


勇者は黒髪だっ、、、た?



「・・・・・てことは俺って人族の黒髪だから勇者だって思われない?」



否定をしてくれと願いながら恐る恐るミリアの顔色を窺う。

ミリアは少し考えた後に答える。



「おそらくそうなりますね。」


「・・・ガッデム!!」



俺は絶望に膝を屈っした。

どうして俺にはこんなに試練が与えられるんだ。


てことは人間の黒髪なんて人族に行けば祭り上げられ、魔族に行ったら吊し上げられるってことじゃん!!


なんでこの世界は俺にハードなんだよぉー。



「・・・・・・・・・・んぅ。」



打ちひしがられて地面に向かって啜り泣いていると、スイナが軽く身じろぎした。


少し騒ぎすぎたか、、、最悪な状況なのは最初からだし、気にするのはやめよう。


胡座をかいて座り直しボックスから水筒を取り出して水を飲む。

ある程度気分を落ち着けると、一つ気になることがあった。



「・・・その残虐な種族って認識してる割に随分と優しいんだな。」



俺がそういうとミリアは少し寂しそうに微笑んだ。


ミリアは今も優しく手を添えてスイナが不安にならないように気を使っている。

その目には恐怖や敵意などは浮かんでいない。


だが、先ほどの話は魔族を否定する内容を多く含んでいた。

それならミリアも魔族に対して忌避感を抱いてもおかしくないはずなのだが。



「さっきの話は人族に伝わる伝承ですから。・・・実際の魔族が残虐かなんて会ってみないとわかりません。」



寂しげにそう言ったあと、乾いた笑みを浮かべた。



「・・・ま、最近は残虐な方にしかあってないですけどね〜。」



殺されかけてるもんね。

あいつらは全員血の気が多かったし、手柄を求めてた所があるから狙われたのだろう。

戦場の空気は人を一瞬で狂わせる。


それが快楽なのか、絶望なのか、、、いずれにせよ欲望に支配された人なんて碌なもんじゃない。



憂鬱だな、思わずため息が漏れる。



「仕方ないと無理やり納得するしかないな。・・・とりあえず、今は逃避行中だ。ゆっくり休めるのはまだしばらく先だと覚悟を決めといた方がいいだろう。」


「・・・え、えぇ、そ、そうですね。」



おいこら。

なんで目を泳がせてんだ?

最近は見張り中寝るなって言い聞かせておいたけどまさか寝てたかこいつ。


俺は改めてミリアを観察する。

今は初めから着ていた白いローブをスイナに掛けているので下に着ていた修道衣のような服の全貌を初めて見た。

肌の露出を最低限に、豪華でも貧相でもない清潔な服装。てか、あれだけ野宿してるのに汚れも見当たらないってどゆこと?


ミリアはそんな俺の視線に気づいたのか、軽く服を持ち上げて見せる。



「これは教会に住み込みで働かせてもらっていた時に頂いたものです。定期的に『浄化』の魔法が発動されるように刻印が刻まれてますので汚れなくて便利ですよ。」



そう言ってドヤ顔するミリアさん。ちょっとむかつく。

でも確かにその機能はすごいな、洗濯がいらないとか世の中の主婦大助かりじゃん。

道理で全く汚れないし汗の匂いもしないわけだ。



「それに私も浄化を使えますので、お風呂に入らなくても大丈夫です!」


「そうか、、、俺だけ泥臭く汚れてて悪かったな。」



俺は流石に森を長く走っていたので裾は汚れ、靴も泥だらけになっている。後で着替えようとは思っているけどそんな便利な魔法があるなら教えてもらいたかった。


若干攻めるような視線を送るとミリアは慌てて視線を逸らす。



「だ、だって全然匂いとかしませんでしたから必要ないかと、、、。」


「気分の問題なんだけどなー。今度有料の浴場とかあってもお前は外で待機な。浄化使えるなら必要ないだろ?」


「わわわ! ごめんなさい! 聖なる光よ! 不浄なる汚れを払いたまえ『浄化』!」



ミリアは慌てて魔法を発動する。

俺の体を青白い光が包み、こびりついた泥や埃を消していく。


・・・すごいな、どうやって汚れと違うものを選別してんだろ。



「へぇー、本当に便利だな。」


「これで許してくださいね? お願いしますよ。」



別に許すも何もそんなにキレてないけどね。

さっきのも本気8割の冗談だし。



「ほとんど本気じゃないですか!!」



あれ? 口に出てたか、気をつけよ。


すると、膝の上で寝ていたスイナが大きく動く。



「んぅ、、、? くぁ、、、。」


「あ、起こしちゃいました?」


「ほら〜、急に大声出すから。」


「誰のせいですか!?」



いやいや、俺は静かだっただろ。


スイナは軽く身じろぎした後、ゆっくり上体を起こした。

寝起きで状況が掴めなかったからか、一度ミリアを見て驚くがすぐに状況を思い出したらしい。


今はミリアの袖を掴んで落ち着いている。



「・・・・・あ、あの。」


「スイナちゃん、お腹空いてない?」


「え?」



スイナは何か聞こうと口を開くがミリアがそれを遮る。

戸惑いを見せるがお腹は空いているらしく、スイナ恥ずかしそうに頷いた。


ミリアはそれに笑みを見せて手を叩く。



「ではまずご飯にしましょうか。律兎さん、お願いします!」


「俺かい。」



ブラックボックスを持ってるのは俺だし仕方ないけど、せっかくいい感じだったのになー。


俺は小さくため息を吐きながらポケットからボックスを取り出すのだった。




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