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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー48


まるで消化試合かのようにあっさりと終わった律兎の試合を見た後に自分の番が再びやってくる。

入場口まで降りて名前が呼ばれるまで待っていると、、、



『さぁ! 次の試合は期待の一戦、ジャユ族が誇る最強の近衛騎士! ペリナ・ジャユ様と、流れるような美しさに心打たれた方も多いのではないか!? ミスルル族の剣士、スイー!』



・・・なんか盛られてる?



観衆からの歓声からは「いい試合見せてくれー!」「付き合ってくれー!」「めちゃくちゃかわいいぞー!」と言った熱烈な表現が増えてて困惑する。

若干怖くなって律兎を探すと声が届くくらい近くに居たことに気付いて驚く。



「・・・びっくりした。」


「んー、また上に戻るけどな。一応激励だけ。」



それだけ告げて彼は頬杖を突いて煽る様な笑みを浮かべた。



「スイ、技を隠したりなんかしなくていい、負けんなよ?」



・・・それって激励?


励ましているのか良く分からないが、少し悩んでいた事を見抜かれて目を見開く。律兎が前に言った通り、エルフ族と亀裂が入っている今、助けに行こうとしている自分たちとぶつかる可能性がある。その際に、少しでも相手に有利になれるよう、ある程度は手の内を隠した方がいいか悩んでいたのだ。


でも彼が負けるなと言った。相手は手加減して勝てる相手ではない。技を隠して負ければ自分にも後悔が残る。



・・・そうだ、別に見られたっていい。何を隠す必要があるのか、もっと上に上り詰めればいいだけの話。



前へと向き直って静かに相手のところへ向かう。

律兎が、ミリアがハイルが見ている。かっこ悪い所は見せられない。



響く歓声の中、スイとペリナは中央で見つめ合う。ペリナは軽く笑みを浮かべて鋭い眼差しを向けてきた。



「迷いは消えましたか。ではこちらも油断はできませんね。見た限り貴女と私の実力は近しいものを感じています。」


「・・・見劣りしないように頑張る。」


「えぇ、私も観てくれている方がいますからね。無様な姿は晒せません。」



ペリナは今までの試合と違い、両手にガントレットをつけていた。魔力を帯びている気配を感じるので魔法器だと思うが、能力が分からない。警戒をしたほうがいいだろう。


静かに睨み合い、始まりの号令を待つ、、、。



『初め!』



合図と共に走り出して魔力を練る。

即座に練られた魔力を固めて魔法を形成、放つのは水槍激。


一度見せてはいるが相手の出方を調べるために魔力を周辺に展開しようと撃ち出した。



「警戒はしている!」



相手は笑みとともに足をその場でタンッ!と踏み鳴らしながら後退する。地面から現れた土でできた棘が槍を貫く。ペリナはそのまま両手を地面に当てた。



「土造 阿邪徒。」


「・・・!」



展開された魔法陣から一度見た鎧の騎士が現れた。鉱石を身に纏った騎士に進路を阻まれてしまう。

金属音を響かせながら相手の剣をいなしていると奥から魔力の高まりを感じた。



「土造 二鐓撃槌(にとんげきつい)!」



形成されるのは巨大な岩で出来た大槌。


周囲に影を落としながら押しつぶすように迫る大槌に焦りと思わず笑みが浮かんだ。



「・・・ワクワクしてきた。」



ーーズドンッ!




ーーー




ズドンッ!



魔法生成した阿邪徒で足止めを行いながら大槌を振り下ろす。戦場での阿邪徒は本来この様な運用をされることが多い。トロクラの様に連携を極めている方が稀だ。


最初に使われた水槍激はリザード族との試合で見せたように散らせた瞬間にその場に滞空していた。どうやっているのかは分からないが、リザードが隠し持っていたナイフの位置を正確に判断出来ていた事からこちらの動きは把握されていると思っていいだろう。


そう判断を下し、対応しなくてはならない攻撃を増やして隙を与えないようにする。



ジャユ族の種族魔法『土造』。

その中でも威力の大きい二鐓撃槌を振り下ろし、辺りが土埃に包まれる中、相手の動きをペリナは深く観察した。



・・・油断はしない。



思ったと同時に隣に透明な水球が地面と平行に走っているのが見えた。すぐに質量が増していき、現れたスイが体を捻りながら剣を振るってくる。



ーーガキィンッ!



即座に左手に着けたガントレットで剣を防ぐ。空いた右腕を振り上げて魔力を込めるとポゥと光がともって空気が振動を始めた。



魔法器『ハウリングガントレット』。

内蔵された魔法石に込められた魔力を利用する魔導具と違い、魔法器は使用者の魔力を吸い取って威力を増幅する。



ーーブゥウウウウン



振り抜いたガントレットから振動波が放たれて地面を削るが、スイには魔法が込められた瞬間に兆候を読み取られて下がられてしまった。



・・・随分と魔力感知の精度が高い。



「・・・危ない。」


「よく言うな、もし私が魔法器を発動してなければ別の角度から展開されていた水刃に斬られていただろ。」



そう、スイはこちらを斬ろうと剣を振るうと同時にもう一つ別の角度から魔法を発動させていた。もし、視界に映らず、こちらが攻撃をしていなければ私は負けていただろう。



・・・まずい、血が沸き立つ。



思わず素の口調に戻ってしまっていることも気づかずに構えを取る。


近衛になってから前線に出る事が少なくなり、戦いの高揚感を感じることが減っていた。

元々ジャユ族は戦闘を好む種族だ、戦いは性に合っている。


地面を蹴って再び腕を引き絞って放つ。

拳に乗る衝撃波をスイは大きくかわす。衝撃は範囲が読み辛く、相手は大きく避けるしかない。



ーーパンッ



手の平で手を擦り合わせて魔法の起動を省略し、地面に手を当てた。



「土造 土下落(どげらく)!」



近づいてきたスイの眼の前に地面が割れて穴ができる。それを水滴になって空中に漂い回避するスイにガントレットで追撃。


水滴は衝撃を与えられてそのまま弾けた。



・・・いない!?



嫌な予感を感じてすぐ地面に両手を当てる。



「土造 円土(えんど)防壁!」



土が円状に自分の周りに形成されて、防壁となる。

同時に硬い音が真後ろから鳴り、背後を取られていることに気付いた。



いつの間に、、、?



スイの反対側にあたる防壁を薄くして壊しながら外へと出る。恐らくだが既に魔法が展開されていたのだろう。まるで息をするかのように自然と展開される魔法、運用が器用すぎるな。


後ろを見ると剣を構えたスイが写る。ガントレットを振り抜くとバシャンッ!と再び水が散り、姿を見失う。


その光景に一つの勘を信じて足で地面を叩き、棘を正反対に生成した。



「ーーっ!」



堪えるような微かな声を聞き取って拳を振るうと、その場で腕から流れる血に気を取られたスイが衝撃が当たった。



ズガァンッ!



吹き飛ばされた彼女は地面を何回か転がるが、最後にタンッと飛び上がって着地する。

口からは血を流し、見るからにダメージを受けていた。



「初めて捉えられたな?」


「・・・まさか対応されるとは。」


「なに、ただの勘だ。」



ツーっと服の下を伝う血の感覚を感じながら、再び拳を構える。さあ、楽しもうか!




ーーー




相手に対応された動揺をバレないように剣を構え直す。

水刃や水槍激、弾かれた魔力のこもった水を全てその場に滞留しておき、範囲を広げてこちらの姿を投射。

完璧に背後を取ったと確信してしまい、踏み込みすぎたが為に避けきることができずにダメージを負ってしまった。


内蔵ごと揺さぶられるような衝撃に吹き飛ばされて血を吐きだし、視界は揺れて、足は軽くふらつく。



・・・不味い、今のは2度も食らえない。



口元の血を拭いながら、呼吸を整えようとするが、相手はそんな暇を与えてはくれない。


踏み込んで放たれる拳は常に衝撃を纏っているのでこちらは大きく避ける必要がある。相手の魔法には間があるのを感じるが、それでも練度と使いどきが上手く、隙を突くのが難しい。


力も入らなくなってきたし魔法に集中が出来ない。恐らく脳が揺すられたからだろう。


意識が疎らになっていることに気づかれていたのか、相手は一歩遠くに離れていた。それに気づいたときには相手は両手を合わせて、魔法を完成させる。



「土造 峨蛇峨蛇羅。」



一度聞いたことのある嫌な響きと気配を感じて大きく下がる。相手の足元には大きな魔方陣が展開されてそこから岩で出来た巨大な蜥蜴が現れた。ロドに比べて大きさも威圧感も劣ってはいるが、強い存在感をひしひしと感じさせる。



「さぁ、どう崩す!?」



・・・なんかテンション高い?



心の底から戦いを楽しんでいるような弾んだ声に隙を伺うがここから飛ばせる有効な攻撃手段は思いつかなかった。


どうしようかと悩んでいると、相手が少しふらついたのが見える。



・・・なるほど、そういえば彼女は魔法器に魔力を込めながら何度も魔法を発動させている。ミリアでもないし、流石に魔力切れが近い筈。



私の方はどちらかといえば魔力は残っている。

出来るだけ少ない運用で効果が出せるように心掛けているし、戦闘中の魔力切れは致命的だからだ。


相手もそこは理解しているだろうが、今負けそうなのは自分。短期決戦を狙われたのが痛かった。



満身創痍で集中力も疎ら、相手の蜥蜴を崩す方法も思い浮かばず、力が抜ける。

その力を抜いたままだらんと両手を下げた。




薄い、薄い魔力膜を張り巡らせるていることに自分ですら気づかずに、、、。




ーーー




スイがダランと腕を垂らしたことを諦めたのかとペリナは落胆。せっかく興が乗ってきたというのに残念という意味を込めて峨蛇峨蛇羅の腕を振り上げさせた。


そしてそのまま押し潰そうと振り落とす。




ーーバゴオオオオォンッ!



「・・・は?」



振り落としたと同時に予想よりもはるかに大きい轟音が響いて峨蛇峨蛇羅の足が吹き飛んだ。

その光景に理解ができず、汗を垂らしていると、真横にスイが迫っていることに気づく。



「くっ!?」



苦し紛れに腕を横に振るが、こちらがどう動くのか分かっているかのように下から剣で弾かれて、胴体がガラ空きになってしまった。


不味いと思い、お腹に峨蛇峨蛇羅の岩を利用して鎧を形成、そこに放たれた突きを何とか防ぐが、突かれた場所から強い衝撃が放たれて吹き飛ばされる。



・・・これは、ハウリングガントレットの衝撃!?



今度は自分が血を吐き出しながら地面を転がる事になる。何とか起き上がった時には眼の前にスイが居たが、それを峨蛇峨蛇羅の尻尾で振り払う、、、筈だった。



スイは横薙ぎに迫る尻尾を流すように少し上方に逸らして勢いを増幅させる。その勢いのまま、制御ができなくなって峨蛇峨蛇羅の尻尾は本体に当たって巨大な体を破壊した。



・・・流された? あの威力を?



されたことの理解が難しくて思わず固まってしまう。気付くと相手は首に剣を振り抜いており、こちらは魔法を発動させようと力を込めるが、その瞬間に体がふらついた。避けることがかなわず斬られたことを理解した瞬間、腕に着けた宝石が砕け散った、、、。




『しょ、勝者、ミスルル族の剣士スイー!』




一瞬の静寂の後に、司会が壊れた腕輪に気づいて相手の勝利を宣言する。

会場は名試合にとてつもなく大きな歓声が湧き上がった。


それを聞きながらスイはふらつきながら剣を収めてこちらに手を差し伸べてくる。



「・・・私の勝ち。」



勝ち誇った笑みには嫌らしさなど微塵も感じさせず、ただただいい試合だったと言う労いを感じさせる。

私もそこまで感じてようやく現実を理解し、その手を取った。



「あぁ、負けた。まったく、まだ手の内を隠していたとはな。」


「・・・隠してない、前から練習してたのが本当に少しだけ形になっただけ。」



それをこの土壇場に完成させたことのほうが驚きだが、、、いや、土壇場だからこそか?



称え合うように手を取った2人を会場は大きな歓声で包み込むのだった。





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