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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー44


出てくる料理を全て平らげ(主にミリアが)て高い幸福感に浸る。ミリアは最後のデザートを丁寧に、丁寧に味わいながらニコニコしていた。



「・・・お前ら、よほど腹減ってたんだな。」



そりゃ長い事、緊張感を持ってたからね。

腹減りというより幸せを満たしたい、みたいな?



「てかめちゃくちゃ美味しかったんだが、、、。」


「最高でした、後このアイス美味しいですね。何がかかってるのです?」


「たぶんお酒だが、お前の自動で浄化されるそれ、便利だな。」



ミリアはアルコールを感じないらしく、苦味の強い飲み物を飲んでいる様な感覚らしい。なので苦味の強いソースと甘いアイスがよく合って美味しいのだとか。


流石に俺は結構飲まされたので体が熱いというか、ポワポワする。



「・・・てか、ミスルルの娘は大丈夫か?」



ロドに言われてスイを見るとテーブルに突っ伏して寝息を立てていた。普段からきっちりしているスイらしくない姿に悪戯心を抱いていると、ロドに話しかけられる。



「そういえばお前が持ってた剣だが、あれ刃が潰してある鍛錬用の剣だろ。」


「・・・よくわかるな。」



特にこいつの前で剣を抜いた記憶はないが、どの辺りで予測されたんだ?

別に隠してることでもないからバレたところで何も問題はないけど普通に怖い。



「剣、変える気はねぇのか?」


「んー、別にこだわりはないし、変えてもいいけど金もないしな。」



あの剣も最近馴染んできたし、今更変えてもしかないかなと思い始めてた。あと単純に金がない(切実)。


すると、ロドがこちらに向かって1枚のコインを投げ渡してきた。・・・金か!?



「本当は俺が案内してやろうと思ったが、別件が入っちまってな。それを見せればどの店でも融通を利かせてくれる。好きに使え。」



・・・あぁ、うん。



凄い高い金貨かと思ったんだけど、、、。

ま、いわゆるパスか、この街で贅沢できそうだしバシバシ使お。



「失礼いたします。」



使用人がひとり、音もなく入ってきて頭を下げた。

長い緑髪を腰まで伸ばしたジャユ族の女性は芯のある佇まいで顔を上げる。


隙が全く感じられない。

ブレることのない重心とさりげなく情報を得ようとする目配りは歴戦の兵士を彷彿とさせた。



「ログロド様、お客人の皆々様、湯浴みの用意が整いました。」



それだけ告げて、彼女は下がる。

最後にチラリと向けられた視線の意味には気づくことはできなかった。




ーーー




ーーザパァ



「・・・まさか、こんなにゆっくりお湯につかれる日が来るとはな。」



大きな浴場に浸かりながら息を吐く。

つい最近も温泉を腐る程浴びたが、適切な量と温度で管理されたお湯に浸かるのは大分落ち着くな。



・・・あ、事故ってお風呂でブッキングとか無いよ?



ちゃんと酔いつぶれて寝てしまったスイは客室のベットに放り込んだし、ミリアにはちゃんと言いくるめた。

これで入ってくることはないだろうし、俺も居場所は大体把握している。


よくある漫画や小説のラッキースケベなど存在しないのだよ。


と、ひとり意味もなく勝ち誇っていると、、、



ーーガラッ



「失礼します。」


「何でだよ!?」



いや知ってたよ? なんか近づいてくる気配はするなとは思ってたけど入ってくるとは思わないじゃん。


入ってきたのは先ほどお風呂の用意が整ったことを伝えてくれた強そうな使用人さん。

前をタオルで隠しただけの彼女は相変わらずの凛とした表情のまま、頭を下げた。


下げるな! 見えるだろ!



「ログロド様よりお背中を流すように仰せつかりました。」


「い、いや、見ず知らずの方に、急に背中を流させてって言われても。」


「私の名前は『ペリナ・ジャユ』と申します。これで見ず知らずではありませんね。」



んな訳あるか、全く知らない人から名前だけ知ってる人になっただけで背中流させるわけないだろ。と、言いたいが、どうせロドは良かれと思って、彼女は仕事でここに来たのだろう。頭ごなしに帰してはかわいそ、、、何て思うかぁ!



「いや帰れや、お呼びじゃねぇから。ロドにも何とか言っとくからよ。」


「・・・下卑た目で見られるのも嫌ですが、そこまで頭から否定されるのは傷つきますね。」



知らねぇよ。

こちとらいい加減ゆっくり休みたいんだ。


関わるのも面倒になったので背中を縁につけてくつろぐように目を瞑る。


相手にしなければ大人しく帰ってくれると思ったが、彼女はため息をついて体を流し、お湯につかった。

何で対面に座ってんだよ、どこ見たら捕まらずに済むの?



「監視なら外からでもできるだろ。」



呟くように相手に伝えると、驚いたような雰囲気が伝わってくる。



「・・・どうして監視だと?」


「・・・・・合ってんのかよ。まぁ、流石に露骨すぎだ。客人の俺を不快な目に合わせてまで下がる事もしないで居座る。命令を下したのがロドなのかどうかまでは知らんが、実力の高いお前をつけた時点で万が一を想定していることくらい予想つくだろ。」



そんでワンチャン手を出してくるようなら籠絡して内に引き入れようって感じか? こいつは見ず知らずの相手に裸体をさらけ出せるし、街のために尽くす覚悟がありそうな感じがする。



「なるほど、ログロド様がお目にかかるのもわかりますね。」


「そりゃどうも、別に何にもしないから帰ってどーぞ。」


「それを判断するのは私達です。」



当然と言えば当然だけど信用はされないか。

てか、人間を簡単に中に入れたロドのほうが問題だと思う。やっぱこれ罠だったのかな?



「一つだけ訂正しておきますが、この監視にログロド様は関与していません。これは私達の独断です。」


「・・・だと思ったよ。」



俺は呆れたように肘をついてため息を吐く。

なんとなくだがロドはそんな回りくどいことをするとは思えない。監視するなら直接聞く気もするし、手を出してくるなら正面からひねり潰そうとするんじゃないか?俺もあって1日くらいだしそこまで理解してるわけじゃないけどさ。



「正直に言います、私達は貴方の強さを測りかねている。貴方からは強者の気配も、弱者の気配も感じられない。でも貴方にはログロド様が感じた何かがあるはず。」



まっすぐにこちらの目を見てくる彼女の目を、こちらも真っ直ぐ見返す。


・・・てか、それより下を見れない。



「だから、見定めたいのです。貴方が敵なのか、味方なのか。」


「はっ、勝手にしろよ。俺も好きに過ごす、お前らの街だ、好きにしろ。」


「・・・勿論。」



ーーザバァ



立ち上がんじゃねぇ!



振り返って彼女は出口に向かった。

え、思いっきり、、、いや、これ以上言うのはやめよう。


一人肩まで浸かり直してめんどくさそうに顔を歪めた。



「・・・めんど。」




ーーー




次の日の朝、昨日の酒が残ることもなく朝を迎える。

夕方まで寝ようかと思ったのだが、朝早くにスイの特訓に付き合っていたので自然と目が覚めるようになってしまっていたのだ。


・・・目が冴えちまった。


ここまで覚醒してしまえばまた寝ることは難しい。

諦めてベットから起き上がって軽く伸びをする。


久し振りにちゃんとした柔らかいベットでねられたのでよく疲れが取れていた。



「・・・飯は好きに取ってくれって言ってたよな。」



取り敢えず小腹がすいたので部屋のドアを開ける。



「おはようございます。」


「・・・おはよう。」



そこには昨日監視しますよ宣言されたペリナが毅然とした態度で立っていた。好きにしろとも言ったし、扉の外から気配は感じてたから驚きはしないが、さすがに朝からこれはテンションが下がる。



「・・・取り敢えず軽くなにか食べたいんだけど?」


「ご案内致します。」



スッと一歩下がって昨日夕食をいただいた食堂まで案内される。中に入るとすぐに使用人が現れ、目の前に料理が置かれた。



・・・なんか貴族にでもなった気分。



出されたのはなんかピンクのデロデロしたやつが挟まれたBLTみたいなサンドイッチ。

何でピンクなの? ちょっと、、、いや、かなり気持ち悪い。


意を決して持ち上げて見るとでろっとしたやつが持ち上がり、ポタポタと謎の液体が滴り落ちる。



「・・・これなに?」


「・・・? テンタコー族の触手ですが?」


「なんてものを食わせるんだ!?」



え、彼奴等って一応人権が認められた種族じゃないの!? 何で普通に触手が食卓に上がってくんだよ!?



「・・・どうされたのですか? ぶよぶよしてますが栄養豊富で水分も補給できる希少な食べ物ですよ。このドリム地下街でも大変人気のある食べ物です。」


「い、いや、同じ魔族だろ? い、いいのか?」 


「彼らは自分たちの触手が再生する事を利用して食材として提供しているのですよ。彼等は儲かる、私達は食材として食べれる、どちらにも損はありません。」



そ、そういうものなの? もうわかんないよ、魔族というものが。


手元のサンドイッチを見つめながら意を決してかぶりつく。グニュゥと押しつぶすような食感の後に、口の中にトマトのような肉汁が口いっぱいに広がった。味は貝っぽい? 独特の臭みを感じるが、美味しいと言えば美味しいかもしれない。



「ご、ご馳走様でした。」



朝から大半の体力を失い、めちゃくちゃ疲れた。

もう部屋に戻って寝ようかな、、、。




ーーー




軽く身支度していると、ミリアが起きてくる。

スイと同じ部屋にしたはずなので、スイはどうしたのか聞くと、まだお酒が残っているのか気持ち悪いらしい。

無理させても仕方ないので出掛けるのは俺とミリア、、、あとペリナさんね。



「広い街ですね、どこから見ます?」


「おすすめは?」



どうせ引き剥がせ無いしだったら案内してもらお。

街広すぎて迷子になっちゃいそうだしね。


ちなみにミリアにも引き合わせたけど普通に「・・・え、誰?」って言われました。取り敢えず監視していることは隠して案内人と言っておいたら納得してくれたとさ。



「そうですね、律兎様は剣を買われたりしますか? もしそうであれば調整とかあると思いますので最初のほうがよろしいかと。」


「あー、そうか、入り用ではないけど見ておきたいことは確かだな。よし、最初に鍛冶屋でも行くか。」


「では、浅層側におすすめの場所があります、そちらへ案内いたしますね。」



ドリム地下街では地上への出口に近い方を浅層、中間の大きめの建物が多い場所が中層、いまだに採掘を続けている薄暗い所を深層と呼んでいるらしい。


今回は浅層らしいので明るくて店が多い場所になる。



「今いる場所が中層になりますが、浅層まで距離があります。なので先ずは駅に向かいまして魔導連結車に乗りましょう。」



この街は斜めに掘られた場所に作られていることもあって上に行くには体力を使う。

なので魔導連結車に乗って上に行くらしい。


駅に着くと、武骨な看板と磨かれた岩でできたホームに多くの人たちが並んでいる。その人たちの多くは荷物を抱えており、周りの人と話したりボーっとしてたり思い思いに時間を潰していた。



「もうすぐ来るのか?」


「はい、決まった定刻から十数分の誤差内で到着するはずです。今が2分前ですのであともう少し待てば、、、あぁ、もう来ましたね。」



ーーギギィイイイイイイイイッ!



遠くから金属の擦れる音をさせながら向かってくる3両程が連結した路面電車みたいなトロッコが走ってくる。


てかすごい轟音だな、さすがに元の世界の静音性の高い新幹線とかと比べるのは酷だけど、これは結構辛そうだ。


自動で開かれた扉から全員が乗り込み、連結車が発進する。最初はまだ静かだったが、速度が上がっていくにつれてドンドンと音は大きくなっていく。てか何で窓とかないんだよ、石とか飛んできたら危ないだろ。


風圧と音で特に会話もできずに目的地に着いた。



「・・・着いた、、、。一瞬だったけど遠く感じたよ。」


「帰りは律兎さんに背負ってもらって良いですか?」


「ふざけんな、街中で背負われて恥ずかしくないの?」


「・・・あれ程静かで揺れない乗り物はないですが、、、。」



ペリナからはさも情けないものを見るような目で見られる。

ええ、あれで静かって、、、。


なるほど、これが感覚の違いか?



「あ、そういえば言い忘れてましたが駅で待ち伏せしてるチンピラには目を合わせないようにして下さい。金目の物を奪おうと絡んできますの、、、」


「おいおいおい! テメェ! 何ガンつけてんだ!?」


「えぇ!? ど、独特な髪型だと思っただけですよ!?」



早速リーゼントみたいな飛び出した髪型をしたガタイの良いジャユ族の男め見つめてしまったミリアが詰め寄られている。


俺は呆れたような目でそれを眺めた。



「・・・へぇ、人間にしては綺麗な見た目してんなぁ、よし、テメェついて来い。」


「い、嫌です。」


「ああ!? テメェに拒否権があると思ってんのか!?」


「見ただけじゃないですかぁ!?」



うん、ミリアの方が正論ではあるけど、あれはただの絡むための建前であって理由なんてないんだよね。

取り敢えず面白いからもう少し眺めてようかな?

そう思っていたが、それよりも先にペリナがチンピラとミリアの間に入る。



「・・・貴様、この方はお客人だぞ? この街の住人のくせに絡む相手すら選べないのか?」



崩れた言葉遣いで圧を出しながらチンピラを睨みつける。男はビビった様に後退り、「うっ」とうめき声を漏らした。



「で、でもよぉ、俺達にもプライドが、、、」


「ほぉ?」



ーーズガァンッ!



尚も男が言い募ろうとすると、地面を踏み鳴らして魔法を発動させた。現れた無数の岩でできた棘が男の至る所に突きつけられる。



「それは、命よりも大事なのか?」


「わ、悪かったよ! も、もう良いだろ!?」



謝罪を口にした瞬間に棘は砂となって崩れ落ちる。男がそれにほっと息を漏らすがペリナの回し蹴りが側頭部にヒットしてそのままふっとばされた。



「・・・そもそもログロド様直下の私になんという口の利き方か、殺されなかっただけありがたく思え。」



ペリナは吐き捨てるように言い残して歩いていく。


その背中を俺とミリアは無言で見つめるのだった。





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