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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー43


連れられてきたそこはまさに地下の国。

様々な建造物が建てられ、天井にある巨大な水晶体が街全体を照らしていた。


巨大な街の中心には天井のないコロッセオのような競技場に石造りで煙突が立ち常に煙を吐き出す鍛冶屋らしき建物が散見される。


通りには様々な種族が見受けられるが、そのほとんどをジャユ族が占めていた。



「・・・ドワーフが、いない?」


「・・・ドワーフ族? ドワーフはこういう地底よりも山に炭鉱を作るからここにはいないと思う。」



そうなのね、俺の期待返してよ。

ロドが先頭を歩き、通りを歩いていた者たちは道を開ける。混雑していたはずの道に進みやすい通り道ができていく。



「なぁロド、あの上にあるでっかい水晶ってなんだ?」


「あれは明光奇石の塊だな。地中に流れる微量の熱を吸収して発光するよく分からん石だ。」


「てことはこの街は常に明るいのか?」


「いや、あれも熱を吸収するために一時的に発光しなくなる。そん時は暗くなるからあのでっかい明光奇石が発する熱を小さな明光奇石にチャージさせて夜になったら逆に発光させて街灯にさせるんだよ。」



ほぉー、なるほどね。

つまりここは地下でありながら朝と夜の概念が存在するのか。


そこで俺はハッとあることに気づいた。



「よ、よく考えたら俺達、ゆっくり休めるってこと、、、か?」


「はっ!? ま、まさか、柔らかい布団で朝から夕方まで寝ても大丈夫って事ですか!?」


「歓迎するって言ってんだから休めるに決まってんだろ!? てか、夕方まで寝てもいいが、せっかくなら街を見てみたらどうだ?」



ここまで成り行きで来てしまったのでイマイチゆっくりできるという実感が湧かなかったが、よく考えれば俺達は客人。豪華なご飯とふかふかのベットを用意してもらえるのかもしれない!



「・・・さっきの人はいいの?」



俺達がこれからの歓待とやらに思いを馳せていると、スイが後ろを振り向きながらロドに問いかける。

すると彼は笑いながら頭を振った。



「別にそこまで思い悩むような軟弱者じゃねぇ。それに言ったろ? 俺達ジャユ族の思想は弱肉強食、強ければ全てを許さる。逆に弱ければ意見する事も歯向かうことも、弱者を助ける事だって許されちゃいねぇんだ。」



傲慢と言えばそうだが、納得できる部分もある。実際にいくら声を上げた所でねじ伏せられたら言葉は届かない。助けるという事は助ける人の前に盾として立ち塞がることと同意だ、相手を倒せる力がなければ自分がやられるだけになる。



「つまり俺たちは何も言えないでダラダラするしか無いってことか。」


「それなら仕方ありませんね、自堕落な生活を送るとしましょう。」


「・・・この2人に安定を与えたら終わる。」



失礼な、終わりはしないだろ終わりは。

ただ家で適当に起きて適当にご飯食べて適当に寝る、、、最高だな!


絶対剣の自主練なんかしないよ。疲れることなんてしたくないもん!



「何を言ってんだ? お前は強い側だろうが。」



グッと手を握ってひとり目をキラキラさせていると、ロドはケタケタと笑いながら俺の背中をバシバシと叩いてきた。それだけで骨が軋むような音がするんだが、手加減して欲しい。



「はっはー、こんな貧弱な奴が強いわけないだろ。」


「誤魔化すなよ、お前が俺の腕を掴んだ時、この俺が寒気を感じた程だ。腕に覚えのある程度なんかじゃねぇ、お前は血を被ってきた匂いがする。」



そう言ってこちらを見るロドの目には猛禽類のような鋭い光が宿る。弱肉強食が思想とか言ってるこいつのことだから恐らく戦闘狂だろう。あわよくば一度戦ってみたいとか思われてそうだが、そうなったら勿論逃げよ。


てか失礼だな血の匂いとか、毎日ミリアに浄化してもらってるんだし匂いなんてするわけないでしょ(すっとぼけ)。



「お、話してたらついたな。ここが俺の住んでる屋敷だ。」



案内された屋敷には周りに堀が掘られ、そこを地下水が流れている。その中心に存在する屋敷、というより城はホラーゲームとかに出てくる様な暗い色合いをしていた。



「これどこから入るんだ?」



屋敷を囲う堀には橋が掛けられていなかった。堀の向こうに門は見えるが渡るための手段がない。


そう思ったが、ロドが踏み出すと岩の橋が即座に形成される。ただ端と端をつなげた岩ではなくちゃんと手摺と装飾もされている辺り芸が細かい。


ロドが門に近づいていくと、門が中から開いて多くの使用人たちが出迎えた。



・・・何で男の使用人は上裸なんだ? そういう正装?



全員筋肉ムキムキで暑苦しいなー、と感想を抱いていると一人の偉丈夫が前に出てくる。



「お帰りなさいませ、ログロド様。」


「ああ、今戻った。報せは来ているか?」


「は、ヒルゲロより既に。」



あ、あの入り口にいた人ちゃんと連絡してたのね。

元々ロドのことを探していたみたいだし報告はするか、そりゃ。



「後ろの方々がお客人で?」


「あぁ、丁重にもてなせよ。」


「仰せのままに。」



近くにそっと使用人が現れ、荷物を受け取ろうと手を差し出してくる。

2人は少し渡して良いものか迷っていたが、俺がスッと渡した事で2人も手渡した。


いやだって大切な物はほとんどボックスに入れてるから別に盗まれたところで構わないんだよな。


というか渡された使用人たちの方が荷物の軽さに首を傾げていた。軽すぎるもんね、旅に出るには不安すぎる重量だよな。


大きな岩でできた扉が開かれ豪奢な内装が出迎える。巨大なシャンデリアに絵画、高そうな壺に変な形をした鉱石などが並べられていた。



「うわぁ~、お城ですよ律兎さん。」


「おー、これは夕飯も期待できるな。」


「・・・ギラギラしてる。」



確かに装飾は華美で目に優しくはない。

どちらかというと落ち着くというよりは他者を威圧するような雰囲気を感じられる。



「こっちだ、ついて来い。」



勝手知ったる家主はドンドンと奥へ向かっていく。

それに3人でついていきながら、俺は首を回して軽く辺りを見渡した。



・・・へぇ、ちゃんとしてるな。



「ほぉ、気づいたか。」



興味深そうに建物の壁を眺めていた所をロドにギラリとした目で見られる。

俺は相手の視線を受けて「あ、やべ」と声を漏らしてしまった。



「・・・? 何にです?」



ミリアに聞かれ、誤魔化しても仕方ないかと諦めたように説明する。



「・・・あー、ここの家は魔法で作られてるんだよ。維持するために定期的な魔力補給が必要で面倒だが、利点も多くあるんだ。例えば、人が床を踏みしめたときの振動で位置を探知できるとかな。」


「ガッハッハ! マジか! そこまでわかんのかよ!」



面白そうにロドは笑うが、後ろついてきていた使用人たちは驚いて目を見開いている。

墓穴を掘ったかと少し後悔するが、すぎてしまったことは仕方ないし、気にしないでおこう。



「・・・確かに魔法なら魔力を込める時に強度も維持できるから合理的、色々考えられてる。」



スイは内装よりも魔法に興味があるのか触らないようにしげしげと観察している。


ミリアは「へぇー」とだけ言って変な壺に近づき「・・・いくらでしょう?」と不穏な事を呟いていた。



・・・頼むから割るなよ? お前は何だか割りそうな匂いがする。



すると、ある一室の前でロドが立ち止まり、自分で扉を開ける。中は柔らかそうなソファに大理石のような机が並べられていた。



「好きに腰掛け、、、」


「わぁー! ソファですよソファ!」



ーーボフッ



一直線に走っていってミリアはソファに飛び込む。

その様子にロドはポカンとし、俺はあまりの恥ずかしさに顔を押さえた。



「・・・律兎、ちゃんとマナーを教えないと。」


「俺か? 俺なのか? あいつにマナーを教え込むのは俺の役割なのか!?」


「・・・教育係。」


「お、おぉ、元気で何よりだな。」



気さくで小さな事を気にしなさそうなロドですら呆気にとられるとか相当だぞ。

一つのソファをミリアが占領してしまったので残りの空いているソファに座る。すると、すぐに使用人が入ってきて前に紅茶と焼菓子を並べた。



「好きにくつろいでくれ、今日はもうそろそろ暗くなるし、街は明日にでも案内してやるよ。」


「いいのか? そんなに良くしてもらって。」



助けたとは言ってもただ引っこ抜いただけだし、そこまでしてもらうのもどうなのかと思ってしまうが、気にするなと笑い飛ばされた。



「むしろ紹介してぇんだよ。自分の街を招待したやつらに気に入ってもらえたら嬉しいだろうが。」


「そういうもんか? ま、俺達としても嬉しいけどよ。」



紅茶を一口飲むと口の中に苦味が広がる。思ったよりも苦味を強く感じたのでハチミツか、砂糖でもないかと探したけど見当たらなかったので焼き菓子をもらうことにした。



「・・・し、塩味?」


「あぁ、俺たちは酒が好きな種族だからな。甘いのは罰ゲームでしか食わねぇよ。」



・・・相容れないかもしれない。

コーヒーも好きだがカフェオレ派でもある俺に甘いものがないのは正直きつい、、、。


酒のあてにはちょうど良さそうだなと思いながらポリポリ食べていると、横合いから手が伸びてきたのでガシッと掴んでおく。



「なんでですか!? 食べてもいいじゃないですか!」


「なら先ず座れ、流石にマナーが悪いぞ。」



怒られたミリアはしずしず座り直してクッキーをポリポリ食べだす。そして暇なのかずっと交互に飲んだり食べたりして静かになった。この後の飯食べれるの?



「どっかおすすめの場所とかあるのか?」


「一番有名なのは『ドリムスター闘技場』だな、真ん中にでっけえ建物あったろ?」


「あったなぁー、闘技場ってことは、まぁ戦いか。」


「おう、定期的に賭け試合が行われてる。」



だと思ったよ、明らかに闘技場の見た目だったもん。

ただ昨夜は一つも気配を感じなかったので何も行なわれてはいなかったみたいだけど。



「後は無難に武器とか鎧だな。着飾る装飾品とかも売ってはいるが剣とかよりは店数もすくねぇしあまり人気もねぇ。」


「へぇ、地下なら綺麗な宝石とか採れそうなのにな。」


「着飾るような種族じゃねぇからなぁ。見せるのは強さ、それのみだ。」


「一貫してるな。」



喧嘩上等過ぎて少し不安になってくるけど。

街中歩いてて絡まれたりしそう(ミリアが)だなー、と感じていたら、部屋に一人の使用人が入ってくる。



「ログロド様、ご夕食の準備が整いました。」


「ご飯ですか!?」



ミリアがバッとソファから飛び起きて目を光らせる。

呆れながらも相変わらずの様子に微笑えましく思いながら皆で食堂へと向かった。




ーーー




案内された大きな食堂に入って席に案内される。

勿論主であるロドは一番の上座に座り、その近くに俺とミリア、スイが横並びに座る。


席に座ると、横からドンドンと料理が出てきた。


そういえばマナーとか大丈夫かな? ジャユ族のマナーとか知らないけど、、、。


大皿に乗せられた肉、肉、肉、肉ばっかじゃね? いや美味しそうだから別にいいけどさ。


そして手元のグラスに並々と注がれた赤茶色の液体からは強いアルコールの香りがした。


思わぬ強い匂いに口を引き攣らせ、ミリアに注がれる前にストップをかける。



「え、どうしました?」


「いや、お前って酒強いの?」


「えーと、飲んだことありません。」


「あ、すいません、別のもの出してもらってもいいですか?」


「かしこまりました。」



ミリアがキョトンとしている間に新しく薄めの橙色のお酒が注がれる。別のでもお酒なんだね。


さっきのは香りが強すぎてお酒初心者には危ない気がした。てかスイは大丈夫なのか?



「あー、そうか、確かにハード過ぎるか? 俺たちからしたら水みたいなもんだが、他の種族からしたら劇薬とも呼ばれた事があるからな。」


「・・・あ、すみません、私も別の物もらっても良いですか?」



スイは今の話を聞いて自然と使用人にお酒を変えてもらっていた。いや、うん、俺も変えたくなってきた、でもせっかく出してもらったものを一人も飲まないのは失礼な気がして、、、。



「よし、全員に行き渡ったな。では、俺達の縁と助けてくれた事への感謝を、乾杯。」


「「「乾杯。」」」



ロドの乾杯の挨拶と共に意を決して手元の酒をあおる。カッと燃えるような熱さが喉を通って胃にわたり、思わず吹き出しそうになるのを必死にこらえた。



「嬉しいねぇ、コイツを飲めるやつはすくねぇからよ。」



結構ギリギリだけどな。

一気に回りだす酒を抑え込みながら息を吐き出す。

強い酒や毒物には耐性をつけるために散々飲まされてきた。このくらいなら何とか意識を飛ばすことはない。


ちなみにスイは普通に顔をしかめていた。

ミリアは大丈夫かなと視線を向けると、彼女は不思議そうに首を傾げているだけ。



「・・・?」



あ、もしかしてアルコールを毒物として認識されて勝手に浄化された?

なんだ、それならこれを飲ませても平気だったかもしれない。てか俺の方は自分から取り入れてるから直通でアルコールが体を襲って普通に酔っ払いそう。


好きに食べてくれ、とロドに言われたので口直しの意味も込めて目の前の料理に手をつける。


ロールのように丸められた肉の間に香草が挟まれ、周りを香薫された様に色が変わっている。一口食べてみるとふわっとした香りと濃くありながら残らない味が広がり、さっぱりとした印象を与える。



お、おぉ、本当に美味すぎる。



次に食べようとしたのは頭が4つあり、獰猛な爪を持っている豚の丸焼きで取ろうとすると使用人がスッとでてきて切り分けてくれた。

刃を入れた瞬間に広がる肉とスパイスの香り、断面からあふれ出る肉汁に思わず涎が垂れかける。


取り分けてもらった肉に赤みの強いソースがかけられて前に置かれる。ナイフで切り取って口に運ぶと、ピリッとした辛さとドロリと濃いソースがとても肉に合っていた。



「や、やべぇこれ。」


「律兎さん、律兎さん! 全部美味しいですよ! これ全部食べきれますかね!?」


「・・・ミリア、落ち、、、ついて、、、口の周り、、、汚れ、、、てる。」


「スイ、拭いてくれるのはありがたいですけど、そこ口じゃなくて目です!」



全てを食べる勢いでドンドンと料理を平らげていくミリアと酔いが回ったのか少しフラフラしてるスイが騒がしい。

興奮気味なミリアに少し引く、あの量の料理が一体何処に消えてるのだろう?



「いい食べっぷりだな。」



美味しそうにドンドン消えていく料理を見てロドは楽しそうに笑っていた。確かに爽快と言われれば爽快に感じる。


本当であればこう言う食事は会話をしながら相手の腹の内を探るが、俺達は全員が料理に熱中してしまい特にロドと会話を交わすことも無く食べ続けたのだった。



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