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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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34/72

喚ばれた剣聖ー34



「ち、地竜を倒すなんて、む、無理だ。」



後ずさり、逃げ出しそうに震えるハイル。

気持ちは分かる、俺だって竜となんか戦いたくないし怖い。

だが、苦しそうに顔を歪めているスイを見つめる。

まだ会って一ヶ月も経っていないが、そんなこと関係ない、もう彼女は俺達の大切な仲間だ。


それなら、、、



「関係ねぇ、魔王だろうが竜だろうが相手してやる。」



仲間を助けるためだったら何だって戦う。例え勝てなくても、無理難題であっても挑んでやる。諦めてなんかやるもんかよ。


・・・そんな理不尽、認めない。



「わ、私も行きますよ。戦えないし、動けないかもしれませんけどついて行かせてください。スイが苦しんでいるのに、休んでなんかいられません。」



ミリアも怖がってはいるが、意を決したようにこちらを見る。その返答に嬉しくなって思わず笑みを浮かべるが、気を引き締めて次はハイルに向き直った。



「・・・ハイル、お前はどうする? お前は別に巻き込まれただけで俺達と一緒に戦う必要はねぇ。先に転移陣に向かって地上に戻ってくれても構わない。」



彼は俺達と一緒に落ちてしまっただけの他人だ。これから命を懸ける戦いに挑むのに巻き込めない。そう思っての提案だったのだが、彼は強く首を振った。



「こ、こここここここ、この状況で逃げるなんてしない! それに僕は彼女に助けられたんだ! せ、せ、正義の味方として恩義は必ず返す!」



めちゃくちゃどもってるけど彼は震える手を胸に当ててそう宣言する。

そういえば彼が何でスイとかといてどうやって逃げ出したのか知らなかったけどスイに助けてもらったんだな。



「気持ちはありがたいが、相手は竜だ。俺も周りに気を配る余裕はないと思うし、死ぬかもしれないぞ?」


「も、もももももももちろんだよ! でももうあまり言わないでくれるかな? 決意が揺らいじゃいそうだから!?」



・・・せっかくカッコよかったのにしまらねぇなぁ。



だが彼の素直な決意と気持ちは嬉しく感じた。

役に立つかは分からないが、今は一人でも手が欲しい。


方針が決まり、打倒ガイアデルガを掲げるが、まずはスイの応急処置をしたい。

そう思ってハイルを見ると、彼はポーチから一つの丸薬を取り出した。



「か、体に蓄積された瘴気は、ま、魔力と一緒に体に広がる。だ、だからその魔力を不活性にして進行を遅らせるんだ。ほ、本来は魔力が暴走した時に使う薬だけど、う、うまく作用するはずだよ。」



取り敢えず彼の薬を受け取ってスイの口に含ませる。飲み込みづらそうに顔を歪めるが、少し経つとゆっくり嚥下した。


それから数分後には呼吸が落ち着き、汗は変わらずかいているが表情は和らいでいく。


うまく作用して良かった。それにしてもハイルの薬剤知識は助かる。ミリアも病気には詳しいが治すのに魔法を使用するので薬とかの理解はないみたいだしな。 

うまく診断と見合わせて処置してもらえるのはありがたい。



「よし、一先ずは落ち着いたな。ハイル、ガイアデルガを見つけるにはどうすればいい?」



容態も落ち着いたので次はガイアデルガについて話し合う必要がある。

俺はこの世界の事柄にとことん無知だ。先ずは居場所と少しでも生態が知りたい。


そう思ってハイルに聞いたのだが、、、



「わ、分からない。」


「・・・は? 分からない? 来たことあるんじゃないのか?」


「き、来たことはあってもガイアデルガを見つけようなんて思ったこともなかったから。怖い音がしたらすぐ逃げちゃった。」



ハイルの返答に頭を抱える。


言われてみれば当然だ。自分からそんな化け物に会いたいわけないし、逃げるに決まってる。それなのに情報なんか得られてるわけなかった。


胡座をかいて座りどうするかを考える。



「・・・爪痕が縄張りを主張するためのマーキングだとしたら俺達は既に侵入してるのか?」


「う、うーん、ガイアデルガの縄張りは広すぎるから、、、。ただ眷属がいたってことはもう既に入っているはずだよ。」



よし、それなら俺達は既に縄張りに侵入した外敵である筈だ。縄張りが広いなら今は遠くにいるだけかもしれない、もう少し暴れれば会えるか?



ーーポタッ



すると、突然目の前に水滴が垂れてきた。崖上で雨でも降ったのかと思い、顔を上げる。


そこには、長い八本脚を壁に刺すように固定した巨大な存在がいた。



ーーゾワァっ!



一瞬で全身の肌が総毛立ち、喉が渇く。


形は蛇のようだが全体が鎧のような外骨格で覆われている。薄っすらと覗く赤い瞳と赤い牙はこちらを見下し、獲物を品定めしているかのよう。


見た目は竜やトカゲというより蛇っぽい。足は関節は見当たらないし、足というより触手かヒレか?


固まった俺の視線につられて全員が上を向いてしまう。そしてその圧倒的な存在感に指一本として動けなくなった。



・・・まさか、コイツが?



いや、違うわけなんかない、こんな化け物が他にいてたまるか。



「ガイア、、、デルガ。」



ガイアデルガは頭を少し引いて溜めを作る。

噛み付く前の蛇のような動作に攻撃の前兆を感じとった。



「ハイル!!!!」


「ーーっ!?」



辺り一帯に木霊する程の声量で怒鳴り、恐怖にのまれていた二人の意識を引き戻す。


俺は出来るだけ揺らさないようにスイを抱え上げ、ハイルはミリアを担ぐ。

示し合わせたかのように振り返って走り出し、そのまま隆起した岩の間へと飛び降りた。


その時にちらっと見えたが、ガイアデルガはその巨体からは想像がつかないほどの速度で岩を抉り喰らう。


あの硬い岩を豆腐みたいに食うんじゃねぇよ!



「お、重いぃ、、、。」


「失礼じゃないですか!? 律兎さんはいつも軽々持ってくれてますよ!?」



別に俺は軽いだなんて言ったことないけどね。

てか女性の平均的な体重でも担いで走るのは大変だと思うよ。むしろ、ハイルはよく頑張ってる。



ーーズズッ



「ーーっ!? ハイル! 後ろに跳べ!」


「え、う、うん!」



耳に不快な音が聞こえ、跳ぶように後ろへと後退。

すると、目の前を巨大な赤い口が通り過ぎた。



「な!? ぜ、全然分からなかった。」



・・・どういうことだ? あの巨体でこの狭い場所を音もなく?


未だ前を通っている体の一部を見ると、壁と接触している部分が蜃気楼のように揺れている。



「・・・透過? いや、地面を歪ませて無理やり押し通ってるって感じか。」



無茶苦茶じゃねぇか。

物理的な破壊力だけじゃねぇ、超常的な力も持ってんのかよ。


再び上から落ちるように開かれた牙をかいくぐり、前へと進む。少し開けた場所に出て距離をつけるように速度を上げる。そのスピードにもハイルはついて来ていて流石だなと思う。



「・・・っう?」



腕の中から動く気配を感じて覗き込むとスイが目を覚ました。



「スイ!? 大丈夫か!?」


「・・・・・だ、だい、、、じょう、、、ぶ?」



恐らく薬が効いてきたのだろう。

ただ、あれは魔力を不活性にさせるので意識がだいぶ朦朧としてしまうらしい。魔力というのは生命力と同じで底を尽きると命も尽きてしまう。その源たる魔力を抑えてるのだから今は夢の中にいるような感覚に陥っているはずだ。恐らく今の現状も理解できていないと思う。


・・・それでいい、知るのはすべてが終わってからで充分だ。



「・・・悪い、起こした。もう少し休んでろ、次起きたらまたしばらくは歩きっぱなしだからな。」


「・・・う・・・ん? ・・・わかった。」



そう言って微笑むと彼女は微睡んだままコクリと頷いて再び目を閉じた。



・・・さてと



「ハイル、ひとつ確かめたいことがある。一度二手に分かれるぞ。」


「え、き、急に!? ぼ、僕だけじゃ逃げ切れないよ!」



ハイルは慌ててこちらに振り向く。

相手は一体だから別れればどちらかが追われることになるだろう。今は何とか逃げれてるが、俺が要所要所でガイアデルガの音と気配から出てくる場所を教えていた。なのでもし、ハイルが追われる側になれば喰われる可能性が高くなるだろう。


ただ、恐らくガイアデルガが追いかけてくるのはこっちだ。


暗闇に生きる生物は光が届かないので目は退化することが多い。そしてあの巨体であの目の大きさならあまりこちらを見て判断しているとは思えなかった。


ならどうやって追いかけてきているのか?


匂いや音、皮膚で空気の流れを感じている可能性もある。


だが一つ思ったが、何故わざわざ俺たちを追ってくる?


俺達はガイアデルガの巨体に対して餌になるには小さすぎる。腹の足しにもならない筈だ。

縄張りに入ったとしてもわざわざピンポイントでここまで来たんだ。俺たちは外敵として認識された可能性が高い。どうやって判別されたか、心当たりは眷属を倒されて瘴気が蓄積された者。その存在を外敵として感知している気がしたのだ。



「よし、行くぞ!」


「ええぇえ!?」



丁度見えてきた別れ道で右と左に走る。

左右に分かれると、思惑通りにガイアデルガは俺とスイの方を追いかけてきた。


やっぱり瘴気持ちを狙ってきてるな。そうなると俺とミリア、ハイルは狙われはしてもそこまで追われることはない。


ただスイを囮にするなんて死んでもありえない。


ならどうするか、、、ま、簡単に俺が一番の敵であると認識させればいいだけだな。あいつは予想通り外敵を排除しに動いてるっぽいし。



そう理解できれば話は早い。



一気に足に力を込めて飛び上がる。

そして、そのままハイルの元へと再び合流した。



「え、はや!?」


「言ったろ、一つ確かめたいだけだって。先ずは距離を取りたい。ハイル、お前もっと速く走れるか?」



ガイアデルガは地中を進みながら追いかけてくるが、追われてるのと同じスピードで逃げているので距離は詰められることはなかった。


・・・いや、向こうも本気はだしてないか。


もし見くびられてるなら今がチャンスだ。ここで一度距離を開けたいと思うが俺一人で走れても意味はない。そう思ってハイルにスピードを上げられないか聞いておく。



「む、無理、、、。もう、既に足が棒になっちゃいそう。」



並んで走るハイルは息を切らし、何回か足がもつれて転びそうになっている。

呼吸の間隔も短くなり、汗も止まらず疲労が目に見えていた。



「逃げるのは一瞬でいい、距離さえ取れればあとは何とかしてみる。」


「そ、そんなこと言われても。」



既に虫の息な状態で最後の力を振り絞れって言われても難しのは分かる。気持ちに体がついて行かず、転んでしまったらそれこそ終わりだ。・・・担がれてるミリアが全力で守ってくれると思うけどね(死にたくないだろうし)。



「息を吸い込め、全身の血液を押し出すように強く、強く意識するんだ。力を込めるのも、地面を蹴るのも、全体重を乗せるのもすべて一瞬だけにしろ。その一瞬にお前の命を乗せろ。」


「い、命を?」



よくわかってなさそうだが、コイツは既に肉体の使い方を本能で理解している。何度も凄い速度で逃げ出す瞬間をみているんだ。だいたいの察しくらいつく。


ただ、まだ先があるはずだ。


知ってるからな。人間でありながら人間を超えた速さで走り、すれ違うだけで目に見えない無数の斬撃を浴びせる化け物をな。


俺はその場で振り返り、ガイアデルガに向き直る。

息を吸って目を静かに細めた。


ガイアデルガは巨大な口を開けて迫りくる。その僅かな隙に前へと出てそっと巨大な体に剣を添えた。



ーーグリンッ!



回すように頭をそらして後方へと攻撃を流す。流石に大きすぎるから投げ飛ばすことはできないが一度奴の射程圏内からは外れたはずだ。


そしてその隙を逃がすわけには行かない。


強く、圧を込めてハイルを睨む。



・・・は、や、く、し、ろ。



「ひっ! え、えーと、えーと、すーーーはーーー、すーーはーー・・・。」



僅かな隙にハイルも一度立ち止まって呼吸を整える。


一度切れた息を元に戻すには本来時間が掛かるが、それは担いでる荷物が何とかしてくれたようだ。



「すーーー、はっ!」



全身の隅々に行き渡った血流が勢いを増して加速する。すさまじい脚力で地面を蹴り、一足で遠くの崖上にまで飛び乗った。それを同じ要領で追いかけて、近くにスイを寝かしておく。


ちなみにハイルはたどり着いた瞬間に体がバキバキになったかのように崩れ落ちた。



「あ、あばばばばばばばば、い、痛すぎる。」


「・・・ミリア、ここで結界張ってこいつを治してくれ。」


「分かりましたけど、私じゃあの怪物の攻撃は防げませんよ? 多分、魔法が維持できませんので。」


「何とかしてみるよ。」



俺は一人、そう言って下へと飛び降りる。眼下には向きを変えてこちらに向き直るガイアデルガと目が合った。



「さぁ、蛇狩りと行こうか。」



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