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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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33/72

喚ばれた剣聖ー33



取り敢えず目的も定まったので動こうとしたがミリアがおずおずと手を挙げた。



「・・・あ、あの、すみません。もう少し休みませんか?」


「あー、確かに朝から動きっぱなしだからな。あんな崖から落ちて生き延びたんだし精神的にも疲れたか。」



あれ程命をすり減らす経験をして疲れないほうがどうかしてる。俺は慣れてしまっているがミリアは元々恐怖に過敏だ。疲労感は遥かに多いだろう。


それに今置かれてる現状をもう少し理解しておきたい。


まだ詳しく周囲の状況を調べられてないからな。



「レジャーシートも出したし、後マットと布団でも出すか。気温は、、、寒くないが一応かけとけ、落ち着くと思うぞ。」


「・・・お母さん?」


「誰がだ。」



まぁ、今回はよく動いてくれた。甘やかしても別にいいだろ。



・・・あれ? マットがあるならやっぱり宿で俺が床に寝れば良かったんじゃ、、、。ムキになってたし、しゃあないか。



スイとハイルの分も出しておいて並べる。

なんかキャンプみたい。周囲が真っ暗だから生まれる感情は恐怖しかないけどね。


場を整えたら手持ち無沙汰になったので適当に聖衛結界の端まで歩き、隆起した岩を触ってみる。

だいぶ落ちたので岩の硬度も相当高く、切ったり壊すのは難しい。さっき思いっきり力を叩きつけた時も陥没というより割れた感じだったしね。


周囲はあまりに暗く、光が一切ない。どれだけ暗闇に目が慣れようと存在しなければ見通せない。気配で大体の位置関係は分かるが、動きづらいことは確かだ。


いろいろ考えながら壁伝いに歩いていると、ふとある一箇所に目が留まった。



・・・そこには、岸壁にできた巨大な爪痕?が存在した。



そっと爪痕をなぞって乾いた笑みを漏らす。



「・・・怖すぎるだろ。」



切られたような傷でも上から降ってきた岩がぶつかってできた傷でもない。明らかに何かで抉り取られたような跡。しかもこの硬い岸壁をだ。


これが生物によってつけらたなんて想像したくないが、見て見ぬ振りをするわけにもいかないか。



「そ、それは此処に住んでる原生生物のマーキングだよ。」



後ろから声をかけられて振り向く。

何故か若干汗かいてるハイルがぎこちない笑みを浮かべていた。



「ん? どうした、休めないか?」


「・・・・・む、無理。」



何が無理なんだと思い、真ん中を見ると適度にくつろぎながら楽しそうに談笑する2人。


・・・うん、確かにあの空間にいるのは気まずいわ。



「ちなみに何か知ってるのか?」



仕方ないので話し相手になってあげますか。

てか、この爪痕の正体知ってるなら、是非とも教えてもらいたい。



「こ、ここ、パルク大峡谷に生息する『地竜 ガイアデルガ』のマーキングだよ。」


「えっと、地竜ってパルパンクにいた小型のトカゲみたいなやつじゃなくて?」


「う、うん、同じといえば同じだけどその大型種だね。」



街で見た地竜はトカゲのような見た目をしていたが、その大型ってどのくらいだろう? でもこの爪痕を見ると相当大きい感じするけど、、、。



「ちなみに大きさは?」


「え、え、知らないよ? だって見たことないから。」


「ん? ここに来たことあるんじゃないのか?」



さっきは何回か来ているような口ぶりだったのに知らないのか? 今は眠ってたり行動範囲が広いのかもしれない。



「て、転移陣がある部屋から少ししか出たことないから、、、。こ、怖い声が聞こえたらすぐに逃げるし。」



・・・そうだった、こいつビビりだった。


見た目が厳ついだけの魔族から逃げたのに地竜なんかと対峙したり見たりなんか出来るわけないか。



「竜か、いい思い出がないな。」



戦ったことがあるのは竜ではなくて龍だけど格は同じくらいだと思う。

うん、会わないに越したことはないね。ぶっちゃけ俺も怖いし。



・・・何かフラグっぽいなー。



若干の嫌な考えが頭に浮かび遠い目をする。

もう何回戦うんだよ、ダラダラ休みたいよ(切実)。


憂鬱になっても仕方ないのでミリアとかのもとに戻る。


程よく休めたようで2人とも落ち着いていた。

この環境は簡単にパニックになりやすいだろうし落ち着けるのは良いことだ。さすがに寝てはいないみたいだけど。


近付くと2人とも顔を上げてこちらを見上げる。



・・・思ったよりも上目遣いの破壊力が高くて動揺するが何とか平静を保てた。



「落ち着いたか?」


「はい、皆がいますし落ち着いてきました。」


「・・・私も。」



や、やばい、吊り橋効果か?

にへらって笑うミリアと軽く微笑みを浮かべるスイがとんでもなく可愛い。

思わず顔をそらして横を見ると、同じく顔を赤くして目を逸らしたハイルと目が合った。



「「・・・?」」


「(ちょ、ちょっと不味くない? こ、怖くて何もできないけど、抱きしめたい。)」


「(お、おう、俺も理性を保つのに必死だわ。)」



意見が合致した2人で固く握手する。

良かったよ、ハイルがいてくれて。今はコイツを見てるのが一番安心するわ。


何故か美少女に見つめられてる中、熱く見つめ合う男二人という謎構図が出来上がってしまったが、割と本気で油断できないので致し方ない。だってなんかお泊りで寝る直前みたいな危うさあるもん。



「どうする、少し寝るか? 動けそうなら移動してもいいけど。」


「あ、私次第ですよね。はい、移動しましょう、流石にこの環境に居続けるのは怖いですし、動きたいです。」



今は平気でも居続ければ不安がぶり返す可能性が高い。それほど暗闇というのは人の根源的な恐怖を呼び起こすのだ。

確かに動けるなら今かもしれない、ミリアの気が変わらない内に動くべきだな。


そう思って全員で動く用意をしていざ出発。

意気込んだ途端にミリアがこちらに両手を広げてきた。



「ではお願いしますね。」




・・・・・知ってた。





ーーー






【クロロロロロ!!】


「スイ! 右前方に一体と後ろに2体だ! 前はそのまま振り下ろしてそのまま上げるように回って横薙ぎしろ!」


「・・・了解。」



頭の上半分がない毛むくじゃらのテナガザルみたいな魔物に囲まれながら走り続ける。

荷物(ミリア)を背負っている俺は戦わず戦闘はすべてスイに任せていた。


視界が悪く、スイは魔力のドームで地形と敵の位置を把握しているが、まだ精度と形が安定しておらず見逃しが多い。それを庇うように指示を出しながら対処してもらうが、群れが起きてしまったのか数が多く、捌くのにも一苦労。

ちなみにミリアは揺れていないが何か大変なことが起きてるなーと困惑し、ハイルは速攻で前に逃げた。後でブチギレようとも思うが、ちょくちょく戻ってきて遊撃みたいに倒してくれるのでまだ許しても良いかな。



「くそ! めんどいなスイ、ジャンブしながら剣を斜め下に刺し込む。」


「・・・・・・うん、少し魔法を飛ばすからしゃがんで。」


「おう。」


「・・・『水刃連波』」



薄い水刃がスイを中心にして周囲から放たれる。スイに近づいて地面スレスレに並走することでそれを回避。それによって数体の魔物が息絶え、ようやく他の魔物も勝てないと理解し始めたのか逃げ始めた。



「ふぅ、一息つけそうだな。」


「お、お疲れさま。」


「戻ってくるのは早いな?」



立ち止まって息をついた途端に横に降り立つハイル。

呆れた半目を向けると何故か照れたように頬を掻く。 



「は、速いだなんてそんな、、、。」


「そこに照れんのかよ、あと褒めてねぇ。」



油断してたり、奇襲をかけようとしてた魔物を間引いてくれていたからそこは褒めるけどあんなに離れる必要ないから。一体倒すごとに豆粒くらいの大きさにしか見えないところまで逃げるのはやめて欲しい。


ちなみに背負っているミリアは常に魔法を発動して重力負荷を緩和させてくれていた。


結界はその場に固定なので聖衛結界ではなく『不転障壁』とか言う新しい障壁を個人個人に付与してくれている。

なんかその当人の自然な環境を維持する代わりに防御性能とかは一切ない障壁らしい。



「転移陣のある場所まであとどのくらいだ?」


「ちょ、ちょっと待って『灯火』。」



ハイルは壁に近づいて魔法で明かりを灯す。

壁には矢印のようなものが刻まれていた。



「え、えーと、まだ半分も来てないね。」


「まじか。まぁ、高低差も多いしまっすぐ進めてないから時間かかってるとは思ってたけどさ。」



それにハイルは1日と言っていたが足の速さはダントツで速い。彼のスピードで1日と言っているのなら普通に進んでいるだけではもう少しかかるだろう。


また何日かは野宿かな。


一度立ち止まって全員の顔を見渡す。



「この暗がりじゃあ朝と夜の区別はつかない。ちゃんと疲れたら言ってくれ、休息を取ろう。」


「うへぇー、暗いしガチャガチャしてて疲れますね。あと何が襲ってきてたのです?」


「・・・。」



・・・見た目結構グロかったからね。


スイは暗くてもあんなに近距離で戦っていれば少しは目に入るだろう。ちなみに俺は片手でミリアを押さえて片手でランタンを持っている。


流石にこの状態では戦えないよ?



「落ち着いたならご飯にしましょう、ご飯!」



相変わらず元気だなー。


確かにお腹は空いている。

今食べておくか。



「・・・ガスの匂いもしないし、酸素が限られてもいないなら火を使っても平気か?」



下手に明かりをつけると暗闇に慣れた魔物を引き寄せるが、それはランタンをつけている時点で今更だし、火くらいなら問題ないかもしれない。ただ、匂いは避けたいな。

暗闇に生きてる生物は他の五感が優れてる。匂いや音等を出すことは避けた、、、なんか全部今更じゃね?



「んー、野菜類を調味料で味付けるか? くそ、もう少しパルパンクで食材とか調達しておけば良かったな。」


「すぐ下層に行っちゃいましたからね。食材の品質も良くなさそうでしたし仕方ありませんよ。」



ミリアの言う通り下層の食材はくたびれているというか、色味が薄かったりしている物が多かった。

そういうものと言われれば元世界から来た俺は納得するしかないけどミリアが言うならそうなんだろう。


まぁ、こういうのはスイの出番でしょ。



「・・・・・・・・・・・・。」



そう思って期待を込めてスイを見ると彼女は無言で汗を流していた。息は荒くフラフラしていて明らかに様子がおかしい。



「・・・スイ? どうした?」



ーードサッ



「え、スイ!?」



ミリアの叫びが木霊する。

先程まで肩を並べて走っていたはずのスイが突如として倒れた。なぜ、どうしてと疑問が浮かぶがまずは対処をしないと。



「ミリアっ! 魔法で治せないか!?」


「やってみます!」



すぐにスイの隣にしゃがみ込んで魔法を発動させる。手から広がる淡い光がスイに近付くと、、、



バチィッ!



「ーーっつ!」



弾かれたように光が明滅。

赤黒い光が跳ねてミリアは痛みに涙を浮かべた。



「な、なんで?」



動揺して手を治すのも忘れてスイを見る。

その異常事態に俺もついていけていなかった。


すると、ハイルが近づいてスイの横にしゃがむ。



「ま、待って、少し体を上に向けるよ。」



そう言ってスイを仰向けに返す。


なんだ? と疑問に感じていると、一つおかしな場所が目に入った。



「・・・なんだ、この黒い染み。」



スイの首元には今までなかった黒い染みのようなものが根を伸ばす様に広がっていた。


それを見てハイルは顔を険しくする。



「『加虐の反禍』、そ、そっか、僕は今までここで戦ってない。だから気づかなかったんだ。」


「どういうことだ?」


「ち、地竜、ガイアデルガの呪いだよ。眷属たる魔物を殺すと蓄積された瘴気が殺した人物を蝕む。」



は? それなら何で俺には、、、。


いや、そうか、俺が最初に殺した蟹は眷属じゃなかったのかもしれない。そうすると、あの猿たちは眷属で、それの戦闘をこなしていたスイに瘴気が蓄積されたと言うことか。



「いや、待てよ? それならお前はどうして呪われてないんだ?」


「た、たぶん、精霊の加護の影響だと思う。僕たちエルフ族は産まれながらに精霊と契約するんだ。その影響で病気とか呪いにかかりづらい。」



それで一番にスイに罹ったのか。俺とミリアはそもそも自分から受け入れない限り呪いにかからない。

仮に瘴気を吸っても呪われることはなかっだろう。



「で、でも、呪いの浄化なら私の専門分野です! どうして治癒が効かないのですか!?」


「え、そ、それは治癒と浄化は違うんじゃ?」


「そうでした!」



馬鹿なのコイツ!?


指摘されたミリアは即座に別の詠唱を唱えだす。



「聖なる光よ! 不浄なる汚れを払いたまえ『浄化』!」



バチィ!



「うわぁぁーーーん!」


「な、泣くな泣くな泣くな! は、ハイル説明を頼む!」



再び弾かれてしまい泣きながらスイを指さしてこちらを見る。見られても困るからこっち見んな、子供か。



「え、えーと!? な、何で教会の神聖魔法が効かないんだろう? あ、もしかして地竜は大地と繋がってて霊獣とされているから呪いとして認識されないのかな? 大地の自然現象を異物と分類できていないとか、、、。」



ど、どういう事?


やっぱり浄化の浄化されるものとされないものの区別が分からない。大地の機能の一つであるから浄化できないって事か?



「そ、それならどうするのですか!? このままじゃスイが!」


「ま、待って、少しなら薬を持っているから効果を遅らせられる。もし、治すなら、、、こ、根本を、た、絶た無いと。」



ハイルは青い顔をしながら口元に手を当てる。ミリアが震えているハイルに首をかしげるが、彼の青い顔と怯えた様子、そして根本を絶つという発言に俺は一つ覚悟を決める。



「・・・地竜 ガイアデルガを倒す、、、か。」




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