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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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24/72

喚ばれた剣聖ー24


間借りしている宿の一室。

俺はその中央で冷や汗を流しながら小さく正座していた。



「「・・・・・。」」


「い、いや、悪いとは思ってるけど、あの状況で見捨てられなくない?」


「・・・別に悪いとは言ってない。」


「まさか少し目を離した隙に拾ってくるとは、、、。」



宿へと帰ると、すでにスイとミリアは帰宅していて遅くなっている俺を迎えに行こうかで悩んでいたらしい。何かあったのか聞かれたので後ろにつれている少年を紹介しながら説明した。


で、説明をしていく中でどんどんと光を失っていく2人の目が怖くて自然と正座に座り直したのだ。

別に責めてはいないらしいが呆れてはいるらしい。



「・・・律兎さん、なんだかんだお人好しな貴方らしいですけど、今回のは難しいですよ。」



ミリアはそっと膝をついて少年と目を合わせる。

優しく微笑み治療を施すとそっと抱き寄せて膝の上に座らせた。


なんかもこもこしててぬいぐるみみたい。



「肩見えますか?」


「ん? 肩?」



ミリアがそう言ってそっと指し示す左肩には赤黒いヘビの紋章が刻まれていた。



「・・・闇魔法の一つである『隷属印』です。これを刻まれた者は刻んだものに逆らうことも逃げることも叶いません。光の神聖魔法なら消すことはできますが、問題として奴隷制度が違法とされていない事です。」


「この街は奴隷制度を容認してんの?」


「いえ、残念ですがこの街だけではありません。魔族、人族問わず違法として裁けないのです。人は魔族の奴隷を欲し、魔族は人の奴隷を欲するので。」



・・・お互いに便利な道具を欲してるわけか。


嫌な世界だ、そりゃあ争いが泥沼化するわけだよ。

どう使われてるかなんていくらでも想像できちまう。



「・・・でも今回は魔族同士だろ?」


「・・・同族で奴隷制度が適用されるのは犯罪者がほとんど。・・・あとは、例外として売られたり、、、えっと、、、。」


「騙されたりか。」



少年を見ると彼は悲痛な面持ちで俯く。

最後の言葉に反応したところを見ると、嵌められたか。


・・・なんかスイナ思い出すなー、会いたい。



「・・・んで、何で騙された?」


「弟が病気なんだ、あいつらは一緒に来れば治してくれるって、、、!」



それを聞いた瞬間に俺とスイは同時にミリアを見る。

彼女は自分を指さした後に慌てだした。



「えぇ!? まだ話の途中じゃないですか!」


「・・・いや、治して終わりなら手っ取り早くね? お前なら治せるだろ?」


「さすがに見ないと分かりませんよ!」


「・・・可能性はあるんだ。」



ミリアの言葉を聞いて少年は目を見開く。



「な、治せるの!?」


「多分ですよ、多分! それで治せなくても私のせいにしないでくださいね!」



おいこら、そのとおりではあるけど子供にいうセリフじゃないだろ。さっきまでの優しそうな態度はどこいった。



「それに、先程の話が終わってませんから! そもそもこの子どうするのですか? 兵士に渡してもおそらく引き渡されますよ。」


「なるほど、合法だから引き取り手が来たら渡さなくちゃならないのか。」


「・・・はい、まずはこの隷属印を何とかする必要があります。」



じゃあ、この子を匿った場合捕まるのは俺たちか。


ま、仕方ないかとしゃがんで隷属印とやらを観察する。赤黒く光る刻印は今なお生きていることを意味していて、無理に壊せば術者に察知されるだろう。

そもそも彼は逃亡しているわけだしもう追手はこの宿に近づいていると思う。



「もう犯罪者なら今更か、、、。」


「な、何する気ですか?」


「ん? 壊す。」


「・・・へ?」



手元に意識を集中して厄羅を一部だけ顕現。刻印に向かって振り抜き刻印の機能のみを殺す。

刻印は輝きを失い、薄くなって消えた。



「・・・よし。」


「よし、、、じゃないですよ!? な、何をしたんですか?」


「ん? 刻印の基盤だけ斬った。」


「そんな事出来るのですか!?」


「できるー。」


「・・・二人ともおかしかった。」



そこまで変なことはしてないけど、詳しく話すと魔力はなんなのかとか難しい話になるからそこら辺は省く。お相手さんも刻印が壊されたことに気づいたろうからあまりここに長居できないしね。



「え、壊、、、れたの? じゃあ、僕は?」


「自由だね。でも感傷に浸る暇はないかなー。」



ーーガラッ



窓を開け放ち俺は少年とミリアを抱えて飛び降りる。

スイは何も言わずに俺の後をついてきた。



「・・・悪いな、面倒事に巻き込んで。」



スイに申し訳なさそうに言うと、彼女は微笑んで首を振った。



「・・・そんなことない。律兎がどんな人かは短い間だけど少し分かったし、ついていくって決めたから。」 



そうまっすぐ言われて気恥ずかしさと嬉しさが混じりなんとも言えない感情が湧くが、今はこの場を離れよう。

日が傾き始めているが、すでに刻印は壊されているので追跡はできないはずだしな。



・・・悪いが、痕跡を消して逃げるのは得意でね。





ーーー





今さっきまでいた下層より更に下の最下層付近。

陽の光は一切当たらず、少し端やフェンスを覗き込むと光の当たらない崖下、深い深い闇が顔を覗いていた。



「うぅ、すっかりお尋ね者じゃないですかぁ、、、!」


「元々じゃない?」


「それもそうですね。」



魔王軍幹部倒してるからね。狙われないほうがおかしい。てか、捕まったら俺達真っ先に隷属印つけられそうじゃない?笑うんだけど。



「・・・う、うぅ、、、ん? こ、ここどこ?」


「俺も知りたい。」



走り出してあまりの速度と平然と飛び降りる恐怖で気絶してしまっていた少年が目を覚ます。

彼は目をこすりながらここはどこかと訪ねてくるが、ただ飛び降りただけなので俺もここがどこなのか知らないのだ。



「・・・パルパンク、最下層 『盲目の底』。・・・上に住めなくなった犯罪者や、殺し屋、違法道具商に人身売買が横行する犯罪の温床。」


「うわぁ、悪のごった煮かよ。」


「美味しそうな名前ですね。」


「・・・本当にお前はよく食い物に反応するな。」



グッと親指を立ててドヤ顔されるが別に誇らしくないわ。


周りを眺めると、怪我人か暗い顔して歩くもの、完全に目が逝っちゃってる奴とか様々。完全な裏世界、この街は随分とはっきり明暗が分かれているようだ。



「・・・・・お前さんらも落ちてきたんか?」



周りを眺めていると近くで露店をしていた黒い目のおっさんが話しかけてくる。

店先には明らかにヤバそうな錠剤が詰められた瓶が売っていた。俺は近づいてそれを一つ手に取る。



「・・・これは?」


「・・・・・おい、素人が触るもんじゃねぇぞ。この掃き溜めの最後の親切心で教えてやる。とっととそれを置きな。」



軽く睨まれ、責めるように言われたのでそっと瓶を戻す。なんだ、地下に落ちたけどはじめに会えたのがとても優しいおっさんじゃないか。



「なぁ、ここって元締めとかいるのか? そいつに会いたいんだけど?」



きやすい笑みを浮かべながら聞くと、相手は露骨に顔をしかめる。



「・・・っち! なんだ、面倒事を持ってきたやつかよ、、、。俺は知らねぇ、他を当たりな。」


「プラズ商会って知ってるか?」



そういいながら相手の前に硬貨を1枚置く。確かこれには1万ミルの価値があるはずだ、いい賄賂にはなるだろう。

相手はそれに目を開いてこちらを見つめ、少し声を落とした。



「明後日にあるオークション、、、どうやら主催をどこぞの商会がやるようだ。どうも今回は良い代物が手に入ったらしい。」


「へぇ、そのオークションってのはどこでやるんだ?」


「もっと中央、5本柱付近だな。」



5本柱というのはこの下街、更に最下層を繋ぎ止めている巨大な柱のこと。4方を囲む柱から一番から四番、その中央に位置する最も大きい柱のことを5本柱と呼ぶらしい。



「そうか、ありがとう。」



聞きたいことを聞いて俺は立ち上がる。背を向けて少し進むとおっさんから呼び止めれた。



「・・・・・おい。」


「ん?」



もう用はないだろうし、彼も関わりたくはないだろうと思っていたのだが、彼は最後に瓶を一つこちらに投げ渡してきた。



「・・・なんだこれ?」


「飲むなよ、廃人になりたくなかったらな。だが飲んだら最高に狂えるぜ。」


「そう言われて飲めるかよ、、、。なんでくれたんだ?」


「あげてねぇよ、釣りだ。受け取ったもんが多すぎるんでな。・・・あのオークションにまっさらな奴は近づけねぇ、少しは染まってることを見せてやんな。」



なんだこのおっさん、親切すぎない?

今まで結構運が悪かったイメージだけど、今回のコンタクトは大当たりだな。


軽く腕上げて皆のもとへ戻る。

皆感心したような面持ちでこちらを見ていた。



「・・・・・なんだよ。」


「いや、やけにこなれてるなと。」


「・・・まさかあんな簡単に情報をとって帰れるとは。」



まぁ、元々裏と切って切り離せないことしてたからな。仕事柄そういうことに慣れてしまっていた。その経験からしても今回のおっさんはいい引きをだったね。



「お兄さん、なんでプラズ商会の場所を?」



やりとりを聞いていた少年が不安そうにしている。なので安心するようにとてもにこやかな笑みを返してあげた。


 

「もちろん、ぶっ壊すためだよ?」


「ええぇ!? む、無理だよ! プラズ商会はこの街最大の裏商会だ! し、死ぬ、、、だけだ、、、。」



少年は徐々に語気が弱くなり、俯いてしまう。どうやら彼らに心底強く恐怖を刻まれたようだな。



「言われてもなぁ、もう俺達も関わっちまってるしこれ以上追跡者を増やすのも面倒なんだよ。だったら潰しちゃおっかなって。」


「な、なんでそれでプラズ商会の方になるんだよ! だったらもう一つの方にしたほうが!」



えぇ? 魔王軍潰せと? もうそれ勇者じゃん。

てかこの少年もとんでもないこというなー。ほら、スイとミリアも乾いた笑みを浮かべてるよ。まぁ、何が追っかけてきてるのは教えないけどね。




「まぁまぁとりあえず少年、君の弟さんはどこにいるんだい?」


「・・・か、顔が怖い。」



できるだけ優しそうに笑って話しかけたつもりなんだが怖いらしい。ミリアに言われても別に気にしないけどスイに言われると傷つくな。



「・・・弟のカキラは、プラズ商会に捕まってる。いや、俺達は元々捕まってたんだ。」


「それで逃げ出したのか?」


「うん、結局あいつらはいつまでたっても治してくれない。最悪一匹で良いとまで言いやがったんだ。だから逃げ出して薬を取ってこようとーー。」



説明をしている少年の声が遠くなるような感覚で思考する。この少年は気づいていないのだろう。もし、2人で捕まった際の片割れが逃げ出し、残された方がどんな目に遭うのか、、、。


頭の後ろを掻きながら心がざわつくのを感じる。

それを落ち着けるように息を吐き、心の奥底にしまい込んだ。



「ーーそんな感じなんだ。だから俺は戻らないといけない。」


「・・・律兎さん。」


「言うな、可能性はゼロじゃない。少年お前の名前は? 後なんで売られそうなんだ?」


「俺はギータ、売られそうなのは月獣族だからだと思う。確か、高値がつくって連中が言ってたのを聞いた。」



スイに視線を送って説明を求めると彼女は一つ頷いた。



「・・・月獣族は獣人でも特殊な一族。彼等は月の昇る満月に真の姿を現すと言われてる。」


「狼男かよ。なら買い手は観賞用か、使い捨ての兵士として求めてそうだな。・・・よし、だいたいわかった。」



カバンを背負い直して鉄剣を握る。

2人を見渡して決めた事を伝えた。



「あまり時間がない。先ずは様子見として今日には下見しときたいな。」


「・・・潜入?」


「そうだな、相手が抱えてる戦力も知りたいし先ずは情報を盗りに行く。」



2人とも急ぐ必要性を感じていてくれているようで無言で頷いてくれた。

ギータは少しキョトンと首を傾げていたが、俺たちは商会に向かって行動を開始する。




・・・・・。

・・・・。

・・・。




巨大な柱の根元に存在するドームのような建物。

色は黒で見づらく目立たないがオレンジ色の炎が建物を怪しく演出する。

周囲には正装を着こなした金持ちっぽい魔族や荒々しい者たちが散見された。


今、俺たちはその建物を遠巻きに屋上から眺める。



「・・・あれがプラズ商会のオークション会場か。」


「大きいですね。たくさんお金持ってて羨ましいです。・・・ついでに奪えませんかね?」


「盗賊にジョブチェンジすれば? まぁ、状況次第だけど潰すなら奪うくらい平気だけどさ。」



周りにはただのチンピラにしか見えないが妙に周囲を警戒している連中がうようよしていた。雇われた傭兵かプラズ商会の一員だろう。


近くには隣接する建物などはなくそこから侵入は無理。思ったよりも警備が厳重で驚く。



「それだけ出品されるものが高いのかな? それならこの厳重さも頷ける。」


「・・・潜入は難しそう?」


「・・・・・ほ、本当に忍び込むのかよ?」



どうしようかと考えていると、震えた声でしゃがんでいたギータが止めないかと少しの期待を込めながら聞いてくる。それに俺はとてもいい笑顔で答えた。



「当たり前だろ、先ずは下見とついでに弟さんの発見及び確保。終わり次第内側から暴れてやろうぜ。追っかけようなんて思えないほどにな。」



返答を聞いてギータは諦めたように覚悟を決める。

彼も弟を助けたいという気持ちに変わりはない。後は恐怖に打ち勝つだけだ。



「スイ、水滴になってなかに入ることは可能か?」


「・・・いける。」


「よし、スイは俺と別々に中に入ってもらう。それで中の構造を把握してもらおうかな。ミリアとギータは外で待機しててくれ、それで敵に変な様子が確認されたら合図してもらいたい。」


「わかりましたけど、どうやって合図します?」



聞かれて俺はポケットをまさぐる。

3つの小さな笛を取り出してそれをそれぞれ3人に持たせた。



「・・・魔物避け? なるほど、確かに音も大きいし分かりやすいかも。」


「でも音結構大きいですよ?」


「あぁ、吹いたら俺やスイが異変に気付けるが自分の居場所を敵に教えることになる。」



店主から聞いた話だと大型の魔物でさえも驚かせる程の音が響くらしい。そんな音を近距離で鳴らして平気なのかと思うが音は前方に広がるように発せられるようで吹く人の横と後ろはうるさいはるうさいが耳が潰れるほどではないらしい。



「笛の音が聞こえたら作戦は中止だ。笛の音の方に全員で向かおう。スイは即座に隠れながら撤退。ミリアはギータと一緒に障壁を展開しながら逃げてくれ。お前ならしばらくは平気だろ?」



ミリアの防御の腕は確かだ。

彼女が全力で展開すれば仮にハツ首が来ようと時間は稼げるだろう。


俺はミリアに確かな信頼を向けると彼女は誇らしげに胸を張った。



「はい! 任せてください! 逃げ足だけは自信があります、逃げおおせてやりますよ!」


「あぁ、頼むぞ。」



作戦と呼べるかも怪しい大雑把な計画を立てて建物を見据える。強敵がいないとは限らない、油断はしないように行こう。


初めまして! どのくらいの方が楽しんで読んでくれているかわかりませんがたんぽぽ3号といいます。

私事で申し訳ないのですが、タイトルは仮につけたものになりますのでもう少ししたら変わるかもしれません。


タイトルを変更するときは再び前書きか後書きでお伝えしますので、これからもご愛読いただけるとありがたいです!

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