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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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18/72

喚ばれた剣聖ー18



唸るような暑さに身悶えした後、俺は目を覚ました。

すると目の前には黒い岩が見て取れる。



・・・あれ、デジャブ?



なんかつい最近も同じことがあったなー、と思いながら体を持ち上げようと近くに手を置くと、、、



ジュッ!



「あっっつ!!」



火傷しそうな熱さに飛び起き布団から転げ落ちる。

下は水が張ってあったのかバシャンッと濡れた。



「・・・ごめん、冷め切ってなかった。」



隣から聞こえる澄んだ声に顔を向けると、座りながら剣を磨いていたスイと目が合う。

彼女はそう言った後にベッド(岩)にそっと触るとシュワーッと言う音と共にベッド(岩)が冷やされていく。



「わりい、助かる。」


「・・・ううん、このくらいはさせて。」



そう言って笑う彼女は少し気まずそう。

んー、まだ見捨てる発言したことを根に持たれてるのかな?



「ーーあっつい!! 寝れるわけないじゃないですか!!」



対面から叫び声が上がってミリアが飛び起きる。

その叫びに俺は呆れた視線を向けた。



「お前なぁ、このくらいでうだるなよ。」


「律兎さんはいいんですよ! 隣でスイが冷やしてくれてますからね!! 私はサウナにいるようなものですからね!?」



え、そうなの?

確かに横にいるスイから微かに冷気のようなものが感じられた。

なるほど、これのおかげで涼しいのか、助かるなー。



「・・・え、大丈夫? キツくない?」


「・・・流石にきついから定期的にミリアから魔力もらってる。」


「そーですよ! 定期的に魔力あげてるのに交互に冷やすんですよ!? 私優先でいいじゃないですか!」


「お前どこに優しさ捨ててきたの?」



スイを助けに行った優しさは火口に捨ててきたようだ。

てか、ずっと冷やしてもらってたのか、、、。


こいつだって瀕死の怪我を負ったはずなんだから休めばいいのに。


俺の考えが顔に出たのかスイは苦笑する。



「・・・この暑さだと、冷やさないと休めない。」



そんなにか、、、。


チラッと岩かまくらの外を見ると燃え上がる大地が目に入る。

眩しくて目が潰れそう。


ただこの岩かまくらに周囲だけ炎が避けるように空間ができていた。



「冷やされてないとずっと蒸されてるのですからたまったものじゃありません。もう早く山から降りましょう。」



ミエリがだらんと力なく言った。

確かにこんな山、人がいていいもんじゃないし、さっさと帰るに限るな。


ミエリは真っ白な肌を汗で濡らしながら辛そう。



「そのローブ脱げば?」


「いやですよ。これがなかったら私のアイデンティティが消失しちゃうじゃないですか。」


「・・・それでしか保ててないことには気づいてんだな。」



そうだよね、白を着ないと腹黒さが隠せないもんね。

冷めて視線を送っていると、入り口から焼けるような熱が入り込んできた。



「どうした!? 灰みたいな顔になってるぞ!! にしてもここは寒いな!!」


「テメェらが燃えすぎなんだわ! 水でも被ってこい!!」



壺のような頭から髪のように炎が巻き立ち熱を発している。

火が出てない時は弱々しかったくせに今ではめっちゃハキハキ動いて元気そう。


・・・寝起きにこの熱さは鬱陶しいな。



「はっはっはっ!! 俺の炎が水なんぞに負けるものか!! そうだろう、スイくん!?」


「・・・うん、負けでいいからもう少し離れて。・・・と言うか療養中は入ってこないでって言った。」


「うぉ!? つ、つめてぇ! 出てくから水を纏わせて押さないでくれ!」



シューッと水が蒸発する音をさせながらそっとスイがファジーだっけ?を家の外に追い出す。



「あれ? ここってあいつの家じゃないの?」


「・・・違う、端の方にある空き家を提供してもらった。村の中心部はここより熱いから。」



え、ここより?

これだけ熱いのにさらに熱いのかよ、、、。



「・・・よし、山降りるか。」


「・・・賛成だけど、村長が挨拶したがってたよ?」


「しらん、降りるぞ。」



それだけ言って俺は布団から起き上がる。

そばにかけてあったほっかほかのコートを羽織ってさっさとこの場から立ち去ろうとする。



「え、ま、待ってくださいよ!」



ミリアも慌てて起き上がる。

スイはゆっくりと立ち上がって準備を終えた。


俺はその事を確認してから一歩外へ出る。


すると、、、



「ーーあっちぃ!!」



少し外に出ただけで肌がヒリヒリと焼け、空気を吸い込むと肺が焼けそうな気配を感じ、後ろに転がりながら距離をとった。



「・・・え、詰んだ?」


「・・・詰んだ? まぁ、魔法で換気と冷却しないと立っていられないと思う。」


「先に言ってよ。」



監禁気分で待つこと数分。

燃える岩肌を眺めていると黒い肌に頭以外に顎にも空いた穴から火を噴き出させた焔壷族が現れた。



・・・あっち〜



「すまない、随分と不便をおかけするお客人。」


「そう思うんなら出てる火消してくれない?」


「ぬふぉふぉ、それは難しい申し出です。この炎は儂らの源、完全に消える時は命が消える時。」



へぇー、その火って命の灯火なんだ。

ファジーも初めてあった時は火が消えてるように見えたが、芯の底の部分では燃え続ける火が灯っていたらしい。もし山が燃えなければ凍っていたみたいよ? よくあの爆発で生きてたよな。


まぁ、今回の事件は、それほど焔壷族にとって死活問題だったのだろう。



「では改めて自己紹介をいたしましょうか。儂は焔壷族の長であるジュカンと言う。そしてこっちのは儂の実子ファジーだ。」


「ファジーだ!」



それは知ってる。

てか相変わらず声デケェな。


元気に自分を指差すファジーに3人で冷たい視線を送るが本人は気づいておらず誇らしげなままだ。


別に燃えてるからって熱血である必要はないよ?



「今回の件は改めて礼をしよう! 俺達を助けてくれて感謝する!」


「お礼はスイに言ってくれ、スイが行かなけりゃ俺が行くことも無かったからな。」



本当に行く気はなかったよ。

てか普通に死にかけたし、マジで行ったこと後悔したもん。



「勿論スイさんにも深く感謝を、しかし貴方がたの協力なくしては勇者には勝てなかったとお聞きします。礼無くしては一族の恥、お受け取りいただきたい。」



そう言われると断りづらい。

でも多分だが俺達がここに来なくてもフロートが勝手に剣を引き抜いていったと思うから事態の収束は時間の問題だったんだよな。


ただ俺達がめちゃくちゃ運悪くブッキングしたので怪我人が増えただけだし。


ジュカンはそんな俺のなんとも言えない表情を察したのか目を伏せて口を開く。



「彼の者は魔族に対して強い敵意を抱いています。もしあなた方が居なかったら私達が皆殺しされていたかもしれません。・・・感謝するのは当然のことです。」


「・・・わかった、大人しく受け取っとくよ。」



これ以上押し問答しても仕方ないしね。

ぶっちゃけ俺としては厄羅を取り出しておいて倒しきれなかったのは痛恨の極み。


まぁ、異世界だしバレないとは思うけど、、、いや、どうだろ、剣帝にはバレてる気がする。

あの人の彗眼は未来予知レベルだからな。



「スイさんにはお礼として今後ともミスルルと良い取引を、、、。いえ、やはりそれと私達が誇る秘石『ファロミナ石』、これはミスルルの戦士であるあなたにふさわしい力を秘めています。受け取ってください。」



丁寧な仕草で渡された透明度の高いオレンジの中に落ち着きを感じる蒼が揺らぐ綺麗な石。

傍目からみても強い力が秘められていることを感じられた。


だが、スイはその石を困ったように見つめる。



「・・・受け取れない。私は助けるなんて身の程を知らずに手を出して、勝手に負けただけだから。」



そう言ってスイはコチラに一瞬視線を向けた。

申し訳無さと不甲斐なさ、こちらに対する気まずさが見て取れる。


ミリアはそんな視線を受けて立ち上がる。



「もしスイが居なかったら私達2人も殺されていました。それにスイが行かなければ私達が山頂に行くこともなかったですし、あんな化け物相手に生き残ったので大勝利ですよ。」



ミリアは嬉しそうにそう言った。

実際スイが居なかったらヤバかったのは事実だし、生き残れたのは奇跡に近い。

もしあの場で誰か一人でも生きる事を諦めてたら負けていただろう。

だからスイがいたから生き残ったという言葉は何一つ間違っていない。



「・・・それでも、これは私が貰えるものじゃない。お礼は2人が貰うべき。」



まだなお言い募るスイにミリアもどうしようかと少し困った顔。別にほっといてもいいのだがいい加減暑いし早く山を下りたい。


少し口を挟むか。



「別に納得できなくてもいいけどその秘石はミスルルの戦士に適してるなら貰うべきじゃない? 俺達が貰っても宝の持ち腐れだしな。」



見た目はすごい綺麗で高値で売れそうだけど、通貨も知らんしね。



「てかなにを遠慮してんだ? 今回は俺たちの勝利だろうが。・・・ジュカンさん、お礼はスイだけではないですよねぇ?」



最後にジュカンに嫌らしい笑みを浮かべながらなんかくれと催促すると彼は笑いながら頷いた。



「勿論ですとも、ではミリアさんにはこちらの魔晶石はいかがでしょう? この山地下深くで採れる希少鉱石なのですが魔力を込められる性質があるのです。もし陣を刻印いただければ魔法石と成り得ますよ。」


「え!? 魔晶石って高値で取引されてる鉱山深くでしか採れない石じゃないですか!」



へぇー、魔力が込められてれば魔法をストック出来るんだ、便利そうだね。



「ち、ちなみにランクはいくつで?」


「恩人に惜しみません、Sランクを用意いたしましょう。」


「ーーっひゅ! ご、豪邸建てられる。」



え、そんな果てしない金額で売れるの?

後でミリアから奪うしかないかな?



「ただ、申し訳ないのですが魔族領ではあまり価値はありません。売られるのであれば帰ってからのほうがよろしいかと。」


「ひ、ひぃ、お、王都の端に小さな家建てて遊んで暮らせますかね、、、。」



ミリアはトリップしたようにブツブツ呟きながら自分の世界に入ったので気にしないでくださいと伝えて無視することにする。

ジュカンさんも引き気味だったし。



「あと、律兎さんにはこちらを。」


「・・・なにこれ?」



焼き焦げた黒い石ころのようなものが渡される。

先程の魔晶石とやらは白透明で綺麗だったのにこれはマグマが固まった後の石ころにしか見えない。


ゴミかな?



「シュプトールの火加護石というものです。このバボック山には昔、フェニックスが住まわれておったのですがフェニックスは不死鳥でありながら卵を産みます。その際に卵を温めようと大陸を火の海に変えてしまうのでフェニックスの産卵は大災害であると恐れられているのです、、、。」



こっわ。

フェニックス側に悪意はないだろうけど他の生物も生きるために必死に止めるだろうね。



「それを止めるためにフェニックスを追い出そうと戦った火の戦神『シュプトール』様が力を宿した石です。身代わり石とも言いますね、命を失うような出来事に合う時、一度身代わりになってくれるのです。」


「・・・命の保険か。」



それはなんとも助かるな。

これから戦うことがないわけないし、命の保険が持てるなら嬉しい。

俺は騎士の精神とかないから死にたくないしね。



「見た目はただの石ですが目を凝らすと赤が見えるのがわかりますか? 判別するときはここを見て判断してください。」


「わかった、貰っとく。」



貰った石はボックスに入れないで胸ポケットに入れておこう。無くしたりしたら嫌だからね。


あと残るのは、、、


4人の視線を受けてスイは固まる。

その視線を受けて観念したのか渋々秘石を受け取った。



「・・・いただきます、ありがとう。」



お礼を述べたスイにミリアとジュカンはホッとしている。俺はぶっちゃけ帰りたいのでどうでもいいから早く話を進めてほしいだけだがな。


帰りてぇーって顔をしていたらジュカンがこちらに振り向き一つの紋章が刻まれた石を渡してくる。



「なにこれ?」


「簡単に言えば保証書のようなものです。私達焔壷族が彼の者を保証するときに渡すものになります。・・・まぁ、そこまで発言力があるわけではないので街に出稼ぎに出た焔壷族にでも見せてください。親切にしてくれますよ。」



なるほど、族長に認められたって証明してくれるのか。こういう保証とかは裏切られれば相当な深手を負うことになる、、、。


つまり彼らはそれを理解してでも認めてくれるってことか。


その事実に律兎は嬉しい気持ちと少しの重圧を感じて真面目な顔になる。



「・・・いいのか?」


「えぇ、勿論です。貴方達がいなければ私達が生き残れていなかったと思うなら、これから先、味方の少ない魔族領を進む助けになれるはずです。」



・・・どこが残虐な種族なのだろうか?


彼らからは暖かさと義理堅さを深く感じる。

それを真に受けて裏切られるなんて考えは浮かばなかった。・・・熱すぎるくらいだけどな。



「助かる、ありがたく使わせてもらうよ。」



律兎は笑顔でジュカンに手を差し出す。彼はそれに一瞬驚き、笑顔を浮かべて握手した。



「ぜひとも役立たせてください。」



握り返された手からは確かな熱を感じ、、、



ジュワ〜〜〜



「あっついわ!」



普通に本人からの熱で片手を火傷しました。

手が真っ赤に腫れ、めちゃくちゃジンジンする。手をフーフーと冷ます仕草をしているとミリアが慌てて近寄り、手を取って魔法で治してくれた。



「めちゃくちゃありがとう。」


「・・・・・こんな馬鹿な怪我が起こるとは。」



驚きと呆れのため息をつかれ、ヤレヤレと首を振られました。ただ何も否定できないので甘んじて受け入れることにして、ジュカンに向き直って咳払いを一つ、、、。



「ーーゴホン。」


「え、えっと、大丈夫ですか? す、すみません、配慮が足らず握り返してしまって。」


「いや、俺が悪いのでフォローしないでくれ。」



流石に恥ずかしいので大人しく石をもらってポケットに突っ込んだ。ジュカンは大丈夫そうな俺と受け取ってもらった安心で柔らかい表情をした後に姿勢を正した。



「では、山の麓までお送りします。ファジー、送って差し上げなさい。」


「はい! 任せてください! 安心してくれ、魔法で火が届かないように配慮して送ってやるからな!」



ファジーから助かる提案をされて俺たち3人は頷き集落を後にするのだった。





ーーー




火が通り道を避けるように割れ、熱気すらも上に逃されて真夏のアスファルトの上くらいの気温まで落ちた道を歩く。



「・・・お前、こんな事出来たんだな。」


「勿論だ! 我々は火に耐性があるがそうでないものを招くこともゼロではない。既に燃えている火の制御術くらい心得ているとも!」



一から火を生まれさせて操るのは魔力消費が多いらしいが、火を操るのは息をするように簡単なんだとか。

ミスルルも水を操る事は簡単らしいし種族特性みたいなものなのかな?



「・・・これができるなら空き家で休む時もやってもらえばよかったんじゃ、、、。」



少し後ろでブツブツと俺も心で思った事を呟きながらついてくるミリアの後ろに少し曇った顔をしているスイが目に入った。

楽しそうに火を払ってテンションが上がって歩いていくファジーからそっと離れてミリアの後ろに下がる。



「・・・まだ気にしてんのか?」



俺が隣に来たことに声をかけられてから気づいたのかスイは少し驚き、その後に少し苦笑いを浮かべた。



「・・・少しだけ。・・・私は村では強いとされていたけど、少し外に出てみればこの通り、、、。2人に迷惑もかけた。」



どうも実力不足と迷惑をかけてしまったことに対する自責の念が強いらしい。俺は少しその横顔を見つめた後、前を向いて呟くように口を開いた。



「・・・強くなれる、お前ならきっとな。」



俺の声にスイは顔を上げてこちらを見た。

その目は少し見開かれており、励まされたことに戸惑っている感じもある。


視線を受けて俺はニヤリとした笑みを浮かべた。



「俺が最後に見せた技を覚えてるか?」


「・・・あの爆発を流したの?」


「そうそう、お前が鍛え続けば多分アレと同じことができるぞ?」



そう言うと彼女は目を見開いて驚き、何を言っているだと首を振る。



「・・・レベルが違いすぎる。あんなの、、、出来るわけない、流れが複雑すぎ。」


「そうだな、それを理解できてるお前だから使える可能性があるんだよ。おーい、ミリアー。」



どういうことか分からずに首をかしげるスイに俺は前を向いてミリアに声を掛ける。


俺の呼びかけにミリアは何事かと振り返った。



「なんですか?」


「最後の技、どんな感じだった?」


「・・・えぇ? なんかパーンって弾けた感じでした。」


「おっけー、わかった。ありがとうな。」


「???」



突然の問答に戸惑うミリアを無視してスイに向き直る。俺は欲しかった感想を聞けて笑みを浮かべながら教えるように語りかけた。



「いいか? 常人なら流れなんて知覚する事も難しいんだ。まぁ、ミリアはバリバリの戦士じゃないから分からないだけだと思うけど、そこらの剣士でも流れは理解できない。」



そもそもあの技は魔力の流れと剣の動きを完璧に一致させることが最重要になる。少しの乱れや技量の不足で自分へと全てが降りかかるピーキーな技だ。

剣の達人でも剣の動きや魔力の使用は感じられても流れるような魔力と動きは分かりづらい。


普段から水を感じ、流れるような剣技が根幹にあるミスルル族の剣士だからこそ理解できたのだ。



「・・・でもあんな動きと魔力制御はできる気がしない。」


「そりゃあ、相当頑張んないと無理だな。でもお前にはそこに到達しうる才能の芽がある。」


「・・・どうしてそんなことわかるの?」



下手な慰めなんじゃないかと思われてそうだと思い、俺は少し昔を思い出しながら語りだす。



「昔にな、俺よりも年下で別に強くもない奴がいたんだ。」



一人の軍服を着た、ツインテール眼帯といった属性モリモリの異常者との出会いを振り返る。



「でもそいつの剣技は恐ろしく綺麗でな、初めは綺麗すぎて対策されやすく、何度も大怪我を負っていたもんだ。」



訥々と語りだした俺にスイは静かに耳を傾ける。



「昔のあいつは俺の従者として付き従っていたが、俺との任務は過酷で、俺も面倒を見きれないことが多かったんだ。・・・彼女はそんな中、自分のせいで何度も任務が失敗しかけたのをとても苦しく感じていたらしい。

それでも彼女はその剣技を極め続け、少ない魔力を器用に使い、相手の力を流して纏い、返すという離れ業を身に着けた。

ひたすらに練習し、血反吐と修羅場を超え続け、彼女はいつの間にか俺すら超えて剣舞へと至る。・・・今では俺すら届かない領域に行っちまったもんだ。」



俺の話にスイは顎に手を当てて何かを考えている。

そして、俺に恐る恐る小さく呟いた。



「・・・まさか、私とその人を重ねてるの?」



そう言われて俺は満足げに笑った。



「その通り、お前の剣は綺麗で見切りやすい。だがそれを極めちまえば誰も流れについてこれやしないんだ。・・・もし、実力不足だって嘆くんなら極め抜いてみろ、過酷な道だがお前ならあいつに近づける気がする。そしたら誰もお前に勝てやしない。」



そうさ、届きなんてしないんだ。

全てを返し、全てを倍にする剣技に対応できる術なんてない。


スイはこちらを見つめて思わず立ち止まっていた。俺も立ち止まりその視線を受け止める。



「・・・強く、、、なれる? 守りたいものを守り切れるくらい。」


「・・・あぁ、受け売りだが道のりくらい示してやる。お前の綺麗な剣ならいずれ至れるさ、理不尽を斬り抜ける剣に、、、。」



俺の剣技はただの不完全の真似っ子で完成形には程遠い。しかし、こいつならいずれたどり着ける気がしたのだ。


スイは少し目を閉じた後に目を開く、その目に影はなく、強い光を宿して微笑んだ。



「・・・ありがとう。もう少し、、、ううん、精一杯やってみる。貴方が期待してくれた自分を信じてみる。」


「あぁ、是非とも超えてくれ、その時を楽しみにするよ。」



正直、言っては見たが道のりはあまりに険しく壁は高い。ただ、前を向く意思を持てたなら良かったと、律兎は笑みを返すのだった。





ーー蛇足ーー




「え、俺の剣を教えてほしいってなんでまた?」


「・・・私の剣じゃこれ以上よくなれない。貴方の足を、引っ張り続けたくない、、、です。」


「そんな悲観することも無いと思うぞ。てか、良いじゃねぇか綺麗な剣で、俺はお前の剣技好きだぞ?」


「・・・う、で、でも、これじゃあ勝てない。」


「はは、まだ訓練不足なんだよ。極めて極めてたどり着いてみろ。それが至技だしな。むしろそういうものだよ。」


「・・・見ててくれます?」


「ん? おー、いいぞー、お前の剣は『舞』を観てるようで飽きないからな。」


「ありがとう、わかった、、、絶対に辿り着いてみせる。あなたが褒めてくれたこの剣で、、、私なりの至技に、、、必ず!」


「おー、がんばれー。」





(律兎はこの一幕を全く覚えていません。)



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