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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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17/72

喚ばれた剣聖ー17



とは言ってもどうしましょう!?


前を見据えてよーく考えてもいい作戦が思いつかない。

結界でも連続で構築してバックしようかな、、、あ、そういえばさっき壊されたな〜、、、じゃあどうしろと!?



・・・あれ? と言うかどうしてフロートは結界を壊さなかったの?



こちらの視線に気づいたのかフロートは肩をすくめる。



「・・・流石に自然構築の『不確定魔法陣』に手は出せませんよ。それを書き換えられるのは魂の基盤が解るものだけです。」



・・・?? 不確定魔法陣? 魂の基盤? よくわからない単語を羅列されても困るから頭いいアピールはやめてほしい。


でも相手が私の魔法を破れないのはわかった。

それが分かっただけでも大きい。



「ふっふ〜♪ ではどうしましょうかスイ!!」


「・・・え、それを私に聞くの?」



だって解決策なんて思いつきませんもん。

粘ります? 相手が諦めるまで。


すると、スイはこちらの耳に口を寄せる。



「・・・ミリア、賭けに出よう。私達2人じゃ、アイツには勝てない。だから、貴女は律兎のもとに走って。」



・・・え、鬼? あの人多分生きてても瀕死ですよ? 治癒魔法も効かないみたいだし絶対安静だと思うのですが?


でも確かにそれしかないですね。



「でもどうやって?」


「・・・私が時間を稼ぐ。」



そんな無茶な、、、私は即座に否定の言葉を口に出そうとしたが、こちらを見るスイの力がこもった目からは先ほどのような悲壮な気配を感じさせない。


できることは少ない、なら信じよう。



「頼みましたよ?」


「・・・任せて。」



スイは走り出してフロートに向かっていく、フロートは特に表情も変えずにどうでも良さそう。

完全にナメくさってるけど、スイは気にせず進み続けた。



「結局自殺志願ですか、、、。」


「・・・そう思ってて。」



そのまま結界を飛び出し、スイは無防備な状態に陥る。その瞬間に周りの魔法陣が発動し、無数の光弾が放たれた。



「消えろ。」


「・・・『水霧』。」



魔法の構築と詠唱が完了した瞬間にスイの体から水の霧が噴き出した。

水霧は私も知っている、確か目眩しの魔法だが姿を隠すには結構な魔力量を消費する魔法だったはずだ。


本来であれば持続して展開しないと意味がない魔法だが、今は環境が味方し、ミストが一瞬で凍り視界が真っ白に染まった。


私もその瞬間に律兎さんに向かって走り出す。


光弾で霧に穴は開くが、スイは見つけられない。



「・・・ごみが。」


「・・・飛んで、『水槍激』!」



放たれた水の槍が凍りながら飛来する。

鋭さと強度が増した水槍だが、相手はすぐに障壁を展開し防ぐ。

が、障壁にぶち当たった水槍は粉々に砕け散り、さらに相手の視界を閉ざしてゆく。


逃げるための魔法、ここで突撃でもすれば一瞬で殺される。先ほどとは違った今を生き残るための戦い。



今は必死に逃げ続けるしかない。



「・・・無駄な足掻きです『炎焔恒星』」



すると、フロートの近づけた両手の中心に真っ白に光る光球が作られる。

その瞬間に猛烈な熱気と輝きで周りの氷の霧が一瞬で蒸発した。



私はその魔法が完成すると同時に律兎さんの元に辿り着いた。


焦りながらも軽く状態を観察する。


切り傷は多く、裂傷だらけだが血は流れていない。おそらく環境が味方したのだろう。血が凍り、止血の役割をこなしていた。



「律兎さん! お願いします! 起きて下さい!」



悪化しないようにそっと体を揺すりながら呼びかける。



すると、、、



「・・・・・え?」





ーー






フロートの魔法が発動した時にスイは本当にたまたまそこにいなかった。



・・・危なかった。



なんとか空中に身を投げ出し、安全圏から下を見据える。

もし先程のように水霧から攻撃を繰り出していたら高火力に焼き尽くされていただろう。

嫌な予感を感じて体を水滴に変えて空へと飛ばしたのは正解だった。



でも状況はさらに悪くなった。

今は周囲の温度が上がり、水を凍らせることは不可能。



だがまだ気づかれていない、私はこのまま落下の勢いに乗せて剣を振るう、しかしまるで攻撃の来る場所がわかっていたかのように手を上げたフロートから火で形作られた鳥が飛び出す。


それをなんとか両手に多く纏った水を当てて方向を逸らす。それでも火力が強すぎるのか手がズキズキ痛んだ。


なんとか転がるように地面へと着地した私は自然と距離を取れた。



「・・・本当にしつこいですね。」



相手の顔からは嫌悪感が感じられる。


・・・ここまで持ち堪えられただけでも上出来では?


どうしてもチラついてしまう諦めを首を振って振り払う。

私は頬を伝う汗を拭いながら必死に息を整えた。



「・・・はぁ、はぁ、はぁ。」


「それなりには頑張ったとは思いますよ。不快でしたが無駄のない魔力運用は素直に賞賛致します。」



一応褒めてくれているらしい、しかし、表情は極めて不機嫌。

フロートは適当に拍手しながらゆっくりと歩み寄る。拍手のたびに私の周囲には小型の魔法陣が展開され、包囲が完成していく。



私はその中心でも剣を握り、相手を睨みつけた。



「・・・まだ足掻きますか。」


「・・・死ねないみたいだから、まだ頑張る。」



・・・結構頑張ったとは思う。



もう魔力も限界だし、体力もギリギリ。

一度瀕死になった段階で限界だったし、もう握力もなくなってきた。



でも約束した、助けると、それなら勝手には死ねない。



ーートントンッ



相手がつま先で地面を叩くと、その瞬間に光弾が射出される。

前に踏み出そうと一歩前に出たが、足がもつれてその場に転んでしまった。


眩い光に全身が包まれ、その眩しさに目を瞑る。



ーーシュガガガガガガガッ!



弾かれる音と遠くに着弾された音が耳に響く。

光が収まりゆっくりと目を開けた。


白銀の剣を構えた傷だらけの青年。


一度置いていかれた。

だが、その背中にはとても安心感がある。



「・・・助けてくれるの?」


「おう感謝しろよ、この状況をまとめて返してやる。」



彼は傷だらけの満身創痍、しかし目だけは鈍く輝く。





ーー





ゆったりとした動作で再び剣を構える。

剣を向けられたフロートはとても不愉快そうに顔を歪めた。



・・・ギリギリまだ動けるな。



さっきまではダメージを受け過ぎてしまい、体の疲労がピークで集中力がだいぶ乱れてきていた。

なのでどうしても一度体を休めたく、あの2人(特にタンク)が時間を稼いでくれることを信じて体力の回復に努める事にしたのだ。


ま、相手からタイミングよく大振りな攻撃を浴びせられたのでその瞬間に自分の気配を消しきってさも死んだかのように見せかけただけなんだけどね。


その後は正直賭けであったが、スイが大分上手くやってくれた。


あれほど無駄のない魔力操作できるなんて器用だな。

ミリアなんて無駄だらけだもん。



「・・・はぁ、まだ生きてるのか。」



ため息と共に半透明の剣が周囲を旋回。

フロートは手をかざすと全ての剣がそれぞれの軌道で襲いくる。


迫り来る剣に対して俺はだらんと力を抜くように剣を下方に構えた。



「・・・スイ、手本を見せてやる。お前の目指すべき到達点、提示できるのは道標だけだが、参考くらいにはしてみろ。」


「・・・え?」



シュオオオオッ!!



凄まじい勢いで迫り来る剣撃。

肉薄し、後一歩で肉が断ち切られる寸前まで脱力し、ギリギリで始動。



ーーヌルリ



滑るように剣を流し、全ての剣の軌道を逸らす、一本の見逃しもなく後方へ。


流れるように全てを受け流した後、剣を逆手に持ち直し一本の魔法剣を受けながらクルクルと回し、勢いを加速させ相手に投げ返す。



ーーギュンッ!



一瞬の金切り音を響かせ、相手に迫った剣は障壁によって砕かれる。

その向こう側には目を軽く見開いた男の間抜けづらが写った。



「・・・すごい。」



後ろから感嘆の声が聞こえる。

反応を返そうかと思ったが、前方からの魔力の高まりによって視線を無理やり惹きつけられた。



「流火旋扇」



渦巻く炎が扇のように立ち並ぶ。

勢いよく射出される炎。


俺は迫り来る形のない炎に合わせるように剣を置いて炎すらも受け流した。



「・・・・・は?」



先ほどよりも口を開いて相手が驚きをあらわにする。

非物質すらも受け流し、銃弾も、魔術も、理不尽すらも、全てを流し弾き返す『剣舞』が至った最強のカウンター。



・・・の、パチモン。



一本の炎を巻き取るように剣に追随させ、大気中の酸素を巻き取りながら火を増幅させて、放つ!!




ーーズガァアアアアン!!




ヒュンヒュンッ、風を切りながら剣を回し続けたのち腰の辺りに再び構える。まぁ、相手の障壁は強度も高そうだし無傷だろうな。


上手くいかねぇな、アイツだったら最初の魔法剣の時点で威力を何十倍も引き上げて打ち返すのによ。



『あは〜、そー簡単に真似できないよ〜。したければ〜、兵魔大戦で一切攻撃を仕掛けないくらいじゃ〜ないと〜。あれは〜、いい修行に〜なるよ〜。』


『いやいや、レールガンとかの最新鋭の兵器とか呪いとか召喚魔獣が跋扈する戦場を修行場扱いできるか。』


『あは〜、雑魚〜。』


『お前が異常なんだよ!!』



なんて頭のおかしい眼帯金髪ツインテールの同僚とした会話を思い出して軽く笑みが溢れる。

本当にアイツらは規格外ばっかりだよな、俺も結構頑張ってるのにアイツらには後一歩及ばない、、、。



煙の奥からチカッと魔法陣の輝きが見えると赤黒い血のような槍が飛んでくる。

それを巻き取るが、弾くので精一杯。

どうやってこんなの返せんだよ。


しばらくすると煙が晴れてフロートが姿を表す。

彼は顎に手を当てて何かを思案げに考えていた。




「・・・ふむ、やめましょうか、これ以上は無駄になりそうです。」



すると、フロートは急にそんなことを言い出し、両手を上げて振り向く。



「・・・・・は?」



急な展開に今度はこちらが面を食らう。

確かに今からはどちらかの体力が尽きるまで攻撃し合う泥沼の攻防になるだろう。でも、俺の体力は限界値ギリギリだし、負けるのは俺だから相手がやめようとする必要はないはずだが。



「・・・急になんだ?」


「そもそも僕の目的は君たちではありません。そこに目障りなゴミがあったから消そうとしただけです。」



スタスタと歩きながら凍りついた火口の真ん中へと向かってゆく。

体には一切の霜が降りることはなく、寒気すら感じてはいなさそう。


フロートは平然と剣を握り、そのまま引き抜いた。


・・・ん? あの剣って、たしか。



「その技を突破するのは時間かかりそうです。・・・この後、やる事もあるのにジリ貧の削りあいをする気はありません。よかったですね、命拾いしましたよ。」



さも自分が勝つことは確定で、決して実力を疑わない。

まぁ、実際俺とこいつは相性が悪すぎる、下手に時間をかけても不利になっていくのは俺だろう。


諦めてくれるならそれに越したことはない、、、か。



「それでは、失礼します。」



フロートは恭しく礼をした後、霧のようなカーテンに包まれて姿を消した。動きの一つ一つが鍵となり魔法を使う、違和感のない自然な魔力運用からは長年の研鑽が見て取れた。



「・・・命拾い、ってところか。」



力を抜いて空を見上げる。

まだまだ上には上がいるもんだな、めんどくせぇ〜。



ーーゴゴゴゴゴゴゴッ!!



「・・・ん?」



すると、突如として地面が大きく揺れ始める。


はっは〜、まさかそんなベタなー。


いくらなんでもあの剣が溶岩を抑えつけててそれが抜かれたから噴火とかないよね?

錆びついた動作で振り向くと、顔を引き攣らせながらこちらを見つめるスイと目が合う。



「・・・逃げるぞ!」

「・・・(コクコクコクッ!!)」



弾かれるようにその場から飛び出し、ミリアを拾いながら火口の淵へと登る。

スイは自分の姿を流体へと変えて俺より早く山の淵に辿り着いていた(なにそれ便利ー。)



ーービキンッ!!バキバキ!!



透明だった氷にヒビが広がり真っ白に染まっていく。




「・・・掴んで!!」



言われるがままスイの手を掴み、引っ張ってもらう。

その瞬間全身を冷たい水に包まれた。



「ーーコボッ!?」


「・・・大丈夫、息はできる。ゆっくりと吸い込んで。」



本当かよと疑いながらもゆっくり口を開いて水を吸い込む。

すると、決して苦しくなく自然と呼吸ができた。

不思議な感覚に浸っていると、急に下方に向かって加速しながら落ちてゆく。



「のわわわわっ!!」

「・・・っ!」



ミリアの悲鳴を聞きながら歯を食いしばって勢いに耐える。

揺れはどんどんと大きくなっていき、ついに、、、!




ズガァアアアアアアアアアアアンッッ!!




大気中を震わせる轟音を響かせて一気に熱気が広がってゆく。

そして、吹き上がった溶岩が山の一部に触れた瞬間。



「ーーッ! スイ!! 俺を一度外に出せ!!」


「ーー!!?? わ、わかった!!」



嫌な予感を全身に感じとり、スイに追い出させるよう命じて外に飛び出る。急激な気温の上昇に顔を顰めるが、全神経を集中させながら剣を下に構えた。



ーードガァアアアアンッ!!



油分の満ちた岩に火が触れた瞬間燃え上がった熱により爆発が生じる。



ーー狙え、集中しろ、斬り抜けろ!!




抜刀、『縲縲円天』!!!




全てを受け流し、全てを返す『剣舞』の最高防御!

と言っても俺には跳ね返すことは不可能なので受け流すことのみに集中する。

手が焼け、熱気に肺が焼け焦げそうにならないよう息を止めながら必死に剣を振るう。


その時間わずか0.1秒、だがその0.1秒で周囲の炎は吹き飛ぶ。取り敢えず初めの爆発は乗り越えたな。


しかし、地面は油分を含んだ岩であることは変わらない、すぐにここまで火の手が及ぶであろう。

だが、火に包まれることはなく俺の体は水に包まれた。

冷たく、とても心地よい。


心地よさにそっと目を閉じようとすると、後ろからふわっと伸びてきた両手に包まれた。



「・・・ごめんなさい。」



真上から声が降りてくる。

軽く上を見上げると、瞳に涙を堪えたスイがいた。


その謝罪は何に対してか、心当たりはたくさんあるが深追いはしないよ。



「そうだなよく反省してくれ、でも泣き顔って苦手だからやめてくれない?」



こっち見るなとも取れるノンデリ発言を口から発しながら相手の顔を見つめる。

その言葉を受けてスイは目を見開いた後、フワリと笑った。



「・・・ありがとう。」



笑顔で見つめられた俺は気恥ずかしさを感じて顔を逸らす。



・・・ほんと、美人の笑顔は絵になるなぁ。


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