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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー14


ーー数日後ーー



やっと怪我が全快しました。

いやー長かったな。こんなに治癒に時間がかかったのなんて久しぶりだもん。


でもなぜかみんな治り早すぎるって言ってくるんだよ。魔法で治せるお前らの方が異常じゃい。


あと、ミリアも魔力は回復したみたい。

何回か無理矢理狩りに連れてって瞬時に障壁を張っていたのを確認したからな。

あれだけ何回も張れるなら問題ないっしょ。



というわけで、、、。



「・・・・・今から脱走しようと思う。」


「・・・・・クソ野郎ですね。でも果てしなく同意です。」



同じ穴の狢じゃねぇか、なら初めに罵倒入れんじゃねぇよ。


なんとかまだ痛むとか言い訳してここまでダラダラしてこれたけど最近は言い訳するのも徐々に厳しくなってきた。


だからこそ俺は決心したのだ。そっと旅立つと。


ミリアのやつは冷めた目を向けてきやがったが、自分も仕事を任されるのは嫌みたいでこちらへ同意してくる。

だったらそんな目でみるんじゃねぇ。



「でもどうします? 旅立とうにも物資が不足していると律兎さん言ってたじゃないですか。」



そう、問題はそこだ。


旅立ちたいのは山々なのだが、スイやスイナが余りにも現世ご飯を求めてきやがるのでもうボックスの中は底をつきかけていた。



「異世界生物の肉はそれなりにあるけど未知のものを調理する勇気はないなー。」


「私がやりましょうか?」


「・・・何故だか黒焦げにする未来しか見えないのはなんでだろう。」



別にこいつが料理するとこを見た訳ではないのだが、何故か信頼できないんだよな。

だって普段からポンコツの片鱗を見せられてるからさ。



「ならどうするのですか。食料も無しに旅立つなんて嫌ですよ。ご飯は絶対3食食べたいです。」



なんだこいつ。わがまま過ぎるだろ、今俺たち逃避行中だぞ? 本来なら泥水啜って生き抜くレベルだから。


でも俺も過酷な旅なんてする気はない。


あ、そうだ、、、



「・・・盗むか。」


「最低です! 見損ないました! 族長の家では美味しいご飯が出てきましたから盗むならオババ様の所がいいです! 頑張ってきて下さい!」


「お前、目を見張るくらいクズだな。」



あれ? こいつって一応聖職者じゃなかった? 俺もうそのことを嘘だと思いはじめてきたわ。

しっかりと呆れた視線を送ってやったが普通に目を逸らされた。


・・・まぁ、こいつ連れてったら秒でバレそうだし置いていこうとは思ってたから別にいいんだけどさ。



「・・・仕方ねぇ、決行は今日の晩だ。そんでそのまま旅立つ、スイナには挨拶しとけよ。」


「・・・わかりました。とても寂しいですが致し方ありませんね。」



本当俺たちってクズだね。

ま、一度村を助けてやったんだからトントンでしょ!!





ーー次の日ーー





「・・・よし、行こうか。」


「「・・・。」」



目の前にはバッチリと旅支度を終えたスイさんが立っていた。

俺はそっと袖を掴まれて何故か勢揃いしてるミスルル族連中が聞こえない程度の距離まで連れて行かれる。



「・・・律兎さん。どうして深夜に声かけてくれなかったのですか?」



そう、今は早朝。


本来であれば俺は夜に族長宅に忍び込んで食料を掻っ攫ってミリアと村を飛び出してるはずだった。


なのに何故俺たちはまだ村にいるのか。


それは、、、



「・・・だってスイナが布団に潜り込んできて動けなかったんだもん!!」


「・・・・・ダメだこの人。」



いや無理だろ!!


だってそっと枕を持って近づいてきて、目を潤ませながら上目遣いでお願いしてくるんだよ!? それを断れるのは人間じゃねぇよ!



「そんな遠くで何を話してるのさ?」



遠くで言い争っていると怪訝な顔をしたオババに声をかけられる。


・・・仕方ない。


俺は諦めてため息をついてミリアとそちらへ向かった。



「・・・ちょっとしたスキンシップだよ。・・・にしても、わざわざ村の奴ら全員でお見送りかよ。暇ならみんなで行ってくれば?」


「ひねくれたことをいいなさんな。みんなアンタらに感謝してるから集まってるんだろ。」



知るかボケェ!


だったら英雄に対して仕事押し付けんじゃねぇよ。

まぁ、正直療養期間中は怠惰の限りを過ごしはしたけど、もう少しダラダラしたかった。

そのままここで余生を過ごすのもさもありなん。



「てかさ、俺たちいまだに何をするのか教えてもらってないんだけど?」


「それはスイから説明させるさ。・・・あまり他の奴らに聞かれたくないからね。」



え、俺たちなにやらされるの?

心から不安になってきたんですけど。


助けを求めて横を見るとすでに諦めた表情で遠くを見つめるミリア。

何その面白い顔、笑う。



ーートコトコ



俺がミリアの諦観した顔に笑いを堪えてたらそっと近づいてきたスイナが袖を掴む。



「・・・お兄ちゃん。ご、ごめんなさい。スイナ、、、ミリアお姉ちゃんからさよなら言われて、、、寂しくて、、、お兄ちゃんに居なくなってほしくなくて、、、。」



・・・ははぁーん。


なるほど、なんで突然スイナが俺のところに来たのかこれで謎が解けた。

俺がスイナに挨拶しとけって言ったことが原因だったんだねごめんなさい。



「い、いや、俺達が悪いんです、、、本当にごめんなさい。」



潤んだ瞳で見上げられ罪悪感で心臓が破裂しそうになる。


・・・でもスイナさん、、、結局しばらく会えなくなることは変わらないよ? 帰ってくるか帰らないかの違いがあるだけで。



「・・・早く行こう。明るいうちに進めるだけ進みたい、沼地を抜けるだけでも数日はかかるからできるだけ急ぎたい。」


「「・・・はい。」」



俺とミリアはもう諦めてスイについて行く。

その時に振り返った村はとても眩しく見えたのだった。





ーー





村を旅立ち数日。

俺たちはいまだに沼地にいた。



「・・・無理だよ〜、もう歩けないよ〜。」


「どうして数ヶ月森の中を走り続けた人が私より先に根を上げるんですか。」


「だって自分で足場固定してるわけじゃないからいつ沈むか不安だし、それに雨音がうるさすぎて鬱になりそうなんだよ。耳が吹っ飛ぶ。」


「・・・これでも魔法で抑えてる方。ストレスはかかると思うけど我慢して。」



俺はだるそーに先導してくれている2人の後を追う。

ぶっちゃけ足場が安定してれば抱えて走って先を急いでも良かったんだけど俺、沼地歩けないからなー。


まぁ、先を急ぐわけでもないのに走りたくない。てかぶっちゃけ行きたくない。



「・・・そろそろ休まない?」


「・・・後、半日もすれば沼地を抜けられるからもう少し頑張って。」


「そうですよそうですよ、私にいつまで魔法を維持させるつもりですか、もういい加減解放感を持ってだらけたいので頑張って下さい。」



完全に自分のためじゃねぇか。


でも力を抜いてだらけたいのはわかる。

何のしがらみもなくだらけるのって最高だよね。


てか、こいつマジで魔力量どうなってんだよ。


実際俺達が休憩をした時は全部スイが魔力切れを起こしそうだったからであってミリアが魔力切れで休もうって提案した時は一回もない。


つーか、辛そうだった素振りすら見なかったんだけど、、、。



「お前って本当は魔族だったりする?」


「なんですか突然に、人間生まれ人間育ちの聖職者ですよ? そもそも白魔法は人族にしか使えませんから。」


「俺もうお前が聖職者って信じてないけどね。」


「これだけそれっぽい格好してるのに!?」



いや格好なんて誰でもそれっぽく出来んだろ。

それ本当はコスプレなんでしょ? 大丈夫、趣味は人それぞれだから。



「・・・雨音が弱まってきた。後数時間もすれば泥沼を越えられる。」



俺たちの前でボソッとスイが呟く。


・・・え、全然弱まってる気がしないんだけど。


ちなみに大雨の中俺達が会話できるのも魔法らしい。

これもスイが魔法を組んでミリアが魔力を代替わりしてらみたいよ。今度から魔力タンクって呼ぼうかな、、、。




ーー




「夜!!」



ようやく沼地を抜けてから3時間。

やっと踏みしめることのできる大地で休息を取ることができる。


荒れた大地であることには変わりないけど、地面が固いってサイコー。


長らく見ることができなかった、夜空を見上げながら大地に足を広げる。

開放感がすごくて少し泣きそう。



「律兎さん!律兎さん! 早く椅子出しましょう! もう一日中歩いて疲れました!」



・・・確かに、今回は頑張ってくれたか。



俺は特に反論もしないでキャンプチェアを出してやる。

ミリアはそれに深く腰掛け「ふぃー」と息を吐き出した。

おっさんかな?


まぁでも気持ちはわかる。

沼地での休息は休めたもんじゃなかったからな。

不安定な足場、沼から飛び出す魔物達、何より耳障りな雨音が辛かった。


でもようやくその過酷な環境とおさらばだ、荒地がこんなに落ち着くとは思わなかったよ。


かと言ってずっと座ってても仕方ないので重い腰を上げて野営の準備を始める。

ボックスからポンポンっとキャンプ道具出すだけだけどね。



「・・・相変わらず便利。」



でしょ?


前に一回狩人達の野営についていかせて貰ったけど、めちゃくちゃだるかった。

テントはでかいし持ち運びに荷車。

食料はしょっぱいし、寝具は嵩張るからほぼ布のみ。



・・・それに比べると、現代のキャンプ道具ってめっちゃ優秀だよね。進化ってすげぇー。



「ミリア、休んでててもいいけど火見といてくれ。」


「はーい。」



ミリアにコンロとボンベを渡してお湯を沸かさせる。

もう手慣れたもので最近は自分でコンロつけて勝手に沸かしてくれるようになったよ。レベルアップだね。



「・・・私は?」


「スイは料理担当。食材は渡しとくからおすすめを頼むよ。俺はテント用意しとくから。」


「・・・わかった。」



スイには謎肉と調味料を渡して料理を任せる。

何回か一緒に野営した時に俺が料理してるところを見て使い方を理解したらしい。



「・・・ミリア。何かリクエストある?」


「野菜抜きの串焼きがいいです! 味濃いめで!」


「・・・んー、健康に悪いからダメ。」


「えぇー。」



ほんとジャンクっぽい感じ好きだな。

まぁ、疲れてはいるから濃い味付けが欲しいのはわかる。でも野菜は欲しいよ、、、胃もたれするから。



ーー数分後



ジューシーな串焼き(野菜付き)とスープを作ってくれました。



「おぉ〜、ちゃんと肉の味が引き立ってて美味い。スープにはコンソメ入れた?」


「・・・うん、あのちっちゃい四角でちゃんと味つくの面白い。」



確かにね。

そういえばスイはどちらかと言うと料理より調味料に興味持ってたな。

やっぱ料理する人は見る目線が違うね。



「野菜入ってる、、、。」


「わがまま言わない。てか、それで体調崩したりしたら置いてくぞ。」


「・・・まぁ、嫌いじゃありませんから食べますけど。」



だろうね、雑食な気がするもん。

結局美味しそうにモリモリ食べてる。ま、健康的でいいけどね。



「それで? いい加減今回の仕事内容を教えてくれるか?」



俺は足を組み直し、スイに問いかける。

流石に沼地は環境が過酷すぎて、ゆっくり聞ける雰囲気でもなかった。


スイは紅茶を飲んでから話し出す。


「・・・お願いしたいのは焔壺族との交渉。彼らは火山に住んでる魔族で私たちミスルル族が生きる為に必要な資源を交易させてもらっている。・・・だけど、最近その資源が送られてこない。」


「へぇー、喧嘩でもしたの?」


「・・・そんな事はない、、、はず。」



なら考える理由としては焔壺族に何かあったか、資源が取れなくなったかの2択かな?

確かに厄介な気配がプンプンするね、こわぁー。



「・・・てか、じゃあ実力云々ってなんだったんだよ。」


「・・・その地域に生息している原生生物がだいぶ危険。」



・・・よし、帰るか。


そう思って横を向くと無言でサムズアップするミリアさん。

通じ合ってる〜。



「・・・欲しいのは燃焼石って言って、たった一つで1日は燃え続ける。・・・湿気が多くて火がつきずらいミスルルにとって必需品。」



・・・逃げづれぇー。


チラッと横に視線を送るとすぐに目線を逸らされる。

使えな。



「・・・私達が向かってる燃焼石が獲れる山はバボック山。常に燃えてる活火山ですごく熱い。・・・熱に弱い私達にとってまさに天敵。」


「え、人族は燃えないとでも思ってんの? 話を聞いた限り生きて帰れる自信が皆無なんだけど?」



常に燃えてる山をどうやって登れって言うんだ。

あ、そうか、ミリアか? ミリア1人に行かせればいいのか? 流石我らがタンク!



「・・・大丈夫。私が2人に魔法で薄い水の膜を張るからそれである程度は緩和できる。・・・それでも熱いけど。」


「よし、行ってこいミリア。」


「・・・・・熱を遮断するのって難しいんですよ?」



え、そうなんだ。

まぁ確かに衝撃とかと訳が違うのかな? 魔法は専門外だから知らないけど。



「・・・(ジッー)」



俺がどうにかして逃げようと考え出すと無言の視線が突き刺さる。

その視線には「お前やるって言ったよな?」と込められてる気がした。



「・・・OK、冗談だ。やれるだけはやるよ、やれるだけね。」


俺は観念したように両手を上げた。

ごめんなさい。俺が悪かったのでそんな目で見ないで、、、。


彼女は納得してくれたのか無言の圧力をかけるのをやめてくれた。



「それより寝るのはどうしますか? テントは一つしかないですよね?」



ミリアは気怠そーにしながらこちらに問いかける。

そして、その問いかけに対してスイは首を傾げた。



「・・・? 交代で1人ずつ見張りして2人が寝ればいいんじゃ?」


「そーですけど、律兎さんが嫌がるので。」



2人から同時に見つめられる中俺は腕を組んで目を閉じた。



・・・いやさ、俺の気持ちも考えて欲しい。



前を向くと眠たげな半目でコテンと首を傾げるちょっと不思議そうで面倒見の良い美少女。

そんでまた横を向くと今はムカつく顔してるが、まさしく清楚、10人すれ違えば10人振り返るような絶対美少女様。


別に何かする気はないよ?

でも緊張するし、落ち着かない。

だったら充分に休めるようにしましょうよ。



「・・・旅の野宿でそこを気にすると大変。慣れたほうがいいと思う。」


「平気だ、先にお前らが2人で寝て次に俺が寝れば万事解決だ。」


「まぁ、正解っちゃ正解ですけどね。結界張れば3人とも同時に休めますけど。」


「馬鹿野郎! もし八ツ首みたいな奴らがきたらどうするんだ!」



そうゆう油断が命取りなんだ!

万が一は必ずある!



「・・・あんな化け物クラスがポンポン来られても困る。」


「でも、律兎さんがそれでいいならそうしますか。わざわざ無理する必要もないですし、その分広いです。」


「おう、ぶっちゃけたな腹黒。」



こいつ俺が否定するのを待ってやがったな。

でも俺に利があるからそこまで批判はしないでおこう。



「・・・なら、とっとと片付けて休もう。」


「そうしますか。」




ーー





2日後、遠目にでっけえ山が見えてくる。

スイが言うにはあれがバボック山らしい、、、。



「・・・にしては燃えてねぇなー。」



俺は率直に思った感想を口に出した。

遠目から見ても山はただのゴツゴツとした岩山にしか見えない。

熱そうには一切見えないんだよなー。



「・・・おかしい、バボック山は常に赤く赤熱してた筈。」



スイもただの岩山を見てそう呟く。


その様子から察するにやはりこの山は普段とは様相が違っているみたい。

俺からしたら別に違和感ないけどね。



「ちなみに焔壷族の村ってどこにあんの?」


「・・・山の中腹。」


「そか。」



疑問は残るがここに留まっても仕方ない。

俺たちは迷いを残しながら山へ歩を進めた。


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