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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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喚ばれた剣聖ー13



それからその日は死んだように眠った。

寝てる間にスイとスイナとミリアで順番に看病してくれていたらしいが、完全に寝ていたので一つも記憶がない。


くそっ! 美少女3人に看病される機会なんて二度とないかもしれないのに!


そして次の日、目を覚ますとその日は話してくれていた通り広場を使った酒宴となった。

見たこともない料理や独特な民族衣装のような物と踊りを見れて普通に楽しい。


ただ唯一面倒だったのはお礼にたくさんの村人が挨拶に来たことだ。

俺は気にしなくてもいいし、正直ほっといてもらって良いんだけど、嬉しそうにお礼を言われたら無碍にはできない。


そんなこんなでお礼と料理を交互に味わって、酒宴は終わりを告げた。




ーー次の日ーー




「あ、頭いてぇ。」



案の定二日酔いで辛い目覚めとなった。

ちなみに起きたのはゴザが敷かれた石畳みの上なので体はバッキバキで超いてぇ。


てか、傷まったく治ってないのに酒とか雑魚寝なんかするもんじゃないね。


俺はゾンビのように起き上がり、隣へと視線を滑らせた。



「・・・くかぁ〜〜〜」


「・・・。」



隣で美少女が大口を開けながら大の字で寝てやがる。こいつには恥とか危機感とかないんかな?


さて、完全に起きちゃったし何しよう。


周りでは俺たちと同じく、酔い潰れて寝てしまった者達が寝息を立てていた。

中には目を覚まして一日の始まりの用意をするものや周りの友人と話し込む者と様々。


俺はその光景を眺めながらぼーっとしていた。


だって流石に放置してどっか行くのは可哀想だし危ないからね。


そのまま座っていると近づいてくる足音が耳に入る。


首だけ向けると昨日何度も顔を合わせた顔ぶれが揃って、、、あ、スイナはいないや。

そういえばもう寝る時間だって昨日連れ帰られてたもんね。


てか、みんなきっちりしてるなー。俺とミリアとは大違い。



「おはよー、随分早いね。」


「・・・おはよう。いつもと比べたら全然遅い、今日はだいぶゆっくりした方。」



確かに、自主練行く時もっと早く起きてたなこいつ。



「昨日は楽しめたかい?」


「そりゃあもう、こんな石畳みで寝落ちするくらいにはね。」



でも今日はふかふかのベットで寝たい。

流石に体が痛すぎる。



「それはよかった。ところであんた暇かい? 起きたところ悪いんだけど、一度家に来てほしい。 少し話したいことがあるさ。」


「んー、二度寝したいところだけど目も冴えちゃったしいいよ。」



何かやろうにもやりたい事もないしね。

てか怪我人だし寝るくらいしかやる事もないか。



「・・・んじゃ、もう1人を起こしたら行くわ。」


「あぁ、じゃ、あたい達は先に行ってるさね。」



そう言ってオババ、スイ、トイスは去って行く。

残された俺は近くで水をもらってきてミリアの顔面に水をかけた。



「ーーガッホ! ゲホ! ケホケホ!」



あ、やべぇやり過ぎた。

大きく開けていた口に水が入ってしまい、ミリアは盛大にむせる。



「ーーこ、殺す気ですか!? 最悪な目覚めなんですけど!?」


「悪い悪い。あ、オババが族長宅に来いってよ。」


「用件までが早すぎる!?」



え、だってそれしか伝える事ないもん。

ミリアは体を伸ばしながら立ち上がり、浄化を唱えて服を乾かす。

本当に便利だよね、それ。


ミリアは不満そうにしながらも俺と一緒に族長宅へと向かった。




ーー




流石に数回も来れば慣れてくるな。


もはや案内も無しに迷わず広間へと向かい、扉を開けた。

一番奥の席にはオババ。その隣にはスイとトイスが控えている。


この村ではこの2人がオババに次ぐ権力者なのかな?



「よく来てくれたさ。席に座ってくれ。」



オババに促されて俺とミリアは並んで席に着く。

ちなみにミリアにはまだ許されてないよ。隣でちゃんと頬を膨らませてるからね。



「・・・喧嘩でもしてるのさ?」


「気にしないで下さい。」


「そ、そうかい。」



うんうん、気にしないでよ。今もちゃんと座る時に足を踏み抜かれたからさ。まったくもー、陰湿なんだから。



「それで話って何?」



俺がそう聞くとオババは申し訳なさそうにこちらを見つめる。



「・・・あんたに頼むのは筋違いだってのはわかってる。でも一つだけ頼み事があるのさ。」



それだけ聞いて俺は顔を顰めた。

てっきり賛辞を送られるかと思ってたのにそれはないよ。



「それって面倒?」


「面倒で厄介で実力が必要さね。しかも村の住人では手を打ちようがないのさ。だからあんたに手を貸してもらいたい。」



あ、やばい、嫌な予感がする。

俺はすぐさま隣のミリアに顔を向けた。



「ミリア、そろそろ旅立とうか、次は西の方に向かってみない?」


「律兎さんはまだ怪我してますし、安静にしないとダメですよ。・・・暇ならお仕事やるのも良いと思います。」



あ、ダメだ。

この人絶対俺に同調しないようにしてやがる。


くそ、素直に土下座しとけばよかった。



「・・・え、そういえば俺怪我人じゃん。厄介で実力が必要なことって無理じゃない?」


「治ってからで良いさ。」



よくねぇよ! やりたくねぇんだよ!

まじかー、村を救った英雄だよ? しばらくは休ませてくれても良いんじゃない?



「てか横に手練れが2人いるだろ。そいつらに任せれば良くない?」



そう言って横の2人を指差す。


そうだよ。なんで俺なの? 村のことは村人達でなんとかしないと成長しないよ。うん。



「そうしたいんだけどね。お願いしたい場所がどうもあたいらミスルルと相性が悪いのさ。もちろんあんたらにだけ任せるってわけじゃないけど、出来ればいる間に助けてもらえると助かるさね。」



・・・相性が悪いって環境的な話?



「・・・それって元々どうする気だったんだ?」


「元々は魔王軍から派遣してもらう気だったさ。だけど足元を見られるのはわかっていたから気が重かったのさ。・・・そう考えると今回の事件はそこまで悪くなかったとも言えるかもしれないさね。」



はっはー、そうだよね。

矛先がこの村から俺にシフトしましたもんね。そりゃあ、あなた達にとっては万々歳でしょうよ!



「・・・まぁ良いけどよ、別にやる事もないし。・・・ただ報酬は貰うぞ。」


「もちろん、とびきりのもんを用意しとくさ。」



へぇ、そいつは楽しみだな。

また酒宴でも良いな、楽しかったし。


そこで俺は隣で他人事な顔をしているミリアに話しかける。



「・・・・・もちろんお前も行くんだからな。」



俺がボソッと告げると、ミリアはピタッと動きを止めた。


何驚いてんだ。お前が誘導したんだから当然に決まってんだろ。



「私魔力が足りなくて。」


「大丈夫。俺が治してる間に回復するよ。」



魔力の回復速度とか知らないけどね。

てかこんなに元気なんだから大丈夫でしょ。



「・・・・・あ! 私、スイナちゃんと遊ばないと行けませんでした!」


「そうかそうか、んじゃたくさん遊んであげな。魔力なくても遊べはするだろうから。」



こいつ理由付け下手か。

てかそもそもあんまり離れると契約印が発動して激痛がはしるの忘れたのかな?



「うぅ、間違えましたか。」


「おう、一緒に頑張ろう、、、な!?」



笑顔で肩をポンって叩いたら足を踏み抜かれました。

案外暴力に抵抗ないんですね。今度狙われてたら放置してやろうかな。



「仲良いねぇー。・・・まぁ、それまではゆっくりしとくと良いさ。観光名所とかはないけど狩りについて行ったりしても面白いと思うさね。」


「えー、でも帰ってきたら魔王軍いるかもしれないしなー。」


「・・・うぐ。それは本当にごめんなさい。」



あ、響くのスイなんだ。

そう言えばスイが狩人達をまとめてたっぽいもんね。


でも冗談だからそこまで気にしないでほしいな。



「カカカッ! 幹部を倒した奴が何言ってるのさ。もう大概の連中なんざ相手にならないだろう。」


「あのなぁ、戦いに重要なのは質じゃなくて数だ。数で押し込まれたら流石にきつい。」



つっても数十人程度なら切り抜けられる自信はあるけどね。

でもこれが100とか200になると話は変わってくる。



「・・・そうかねぇ。魔王軍もそんなに人員をあんたに割くほど暇じゃないとは思うけどさ。」


「あ、そう言えば戦争の最中なんだよな。戦況とか聞いても良い?」


「ん? 知りたいのかい? ・・・あまり気分のいい話じゃないけど、まぁいいさね。」



あー、いい気分はしないか。

戦争なんて碌なもんじゃないからな。ただ知っといた方がいいのは事実だ。情報は盾にも矛にもなりうる。無知は自分の首を絞めるだけだ。



「ただあたいらの話を聞いてたならわかってるとは思うけど、今戦況は拮抗してるさ。」


「・・・あんな変な力を使えるやつがいるのにか?」



あの天能とかいう意味のわからない力。

今回はなんとかなったけど2回目は俺の奥の手はバレちゃったし、もう通用するとは思えない。


俺の幻渡りは長時間できるわけじゃない。集中が途切れればあっちか現世のどちらかに放り出される。

攻撃された瞬間に現界なら攻撃を受けるし、霊界なら戻れないっていいう最悪な展開も予想できてしまう。



「・・・あの力を使えるのは八ツ首だけじゃないってことさ。人間にも1人で一騎当千の化け物が潜んでる。だからこそ戦場は膠着、ピリピリした状態が長く続いてるってことさ。」


「なるほどー、嫌になるな。膠着すればするほど周囲が損耗するって言うのにね。」


「負けられないのだろう。どちらも譲れないものがあるからそうなるのさ。理由は様々、民、利権、矜持とな。」



ふーん。ま、お国柄とか知らないしどれもバカらしく感じるな。

民も被害者なのか加害者よりなのかわからないし、想像の余地から抜け出せないね。



「ちなみに発端ってなんだったの?」



俺が何が原因で始まったのかを問うと、皆が首を傾げた。


反応の悪さにこちらも首を傾げかねていると、トイスが答える。



「・・・誰も知りません。人族と魔族の戦争が始まったのはずっと昔の話ですから。時々停戦などはありましたが、いつかは人族が手を出してきて戦争が始まります。」


「人族では逆に魔族が手を出していることになってますね。」



トイスの意見をミリアが訂正。

特にトイスは反論する事もなく、普通に話を聞いている。

よかったー、出会った頃だったら逆上して斬りかかってきた気がするもん。


机に肘をついてため息をつく。



「ようは都合のいいように誘導されてるってわけか。」


「噂やお伽話なんて当てにならないものさ。やろうと思えばいくらでも作れる。」



世論の移ろいやすさはよく知ってる。

人なんて結局自分が信じたい事しか信じることはない。



「今は侵攻度合いで言えば丁度真ん中、120年前から始まってる9代目魔王による第九次侵攻から一切変わってないさ。」


「ん? 第九次ってそんなに変わってるのか?」


「魔王の代替わりで変わっているさ。魔界ってのは力こそ至上、みたいな考えもあるのさ。下の有力者に殺されたり、息子に継承したり、、、はたまた勇者に討たれたりとな。」



その言葉に俺は目を見開いた。



「どういう事だ? 勇者に魔王が討たれたなら人族の勝利なんじゃないのか?」


「そもそも戦いの勝利条件の問題でもあるのさ。魔王軍は大陸制覇を狙っているが、人族は魔神の瘴気を消す事。そうなると人族は瘴気の深くへと踏み込むことになるのさ。」


「・・・つまり魔王は関門の一つでしかないってことかよ。」



思わず口の端が引き攣る。

あんな化けギュリカを幹部として従えてる魔王を仮に倒せたとして、その後には魔神とやらの瘴気を抑え込めってか?


・・・何そのクソゲー。



「そんなの勝ち目なくない?」


「勇者なら可能らしいさ。ただ、封印の一歩手前で殺されたり、諦めたり、狂ったり、、、おそらく封印の前に何かある。、、、それはあたいら魔族すら把握してないのさ。」



裏ボスってことか。

RPGとかでは定番だよね。

そうゆう最後の戦いにはきっと戦った魔王とかが仲間になってくれるんだろうなー。


頑張ってね。まだ見ぬ勇者くん。


なんだかめんどくさくなったので、瘴気については未来の勇者に任せることにして俺は帰り方でも探しますか。


取り敢えず大雑把な目標が決まったので俺は目の前の紅茶を煽る。

相変わらず美味しい茶葉だな、旅立つ時はお土産としてもらっていこうそうしよう。



「・・・まいっか。別に魔王だ勇者だなんて争いに参加する気ないし。なるようになれってことで。」


「・・・・・・・・・絶対に巻き込まれる気がするさね。(ボソッ)」



不穏な呟きは聞かなかったことにして、ついでに隣の席に置いてあった紅茶もグイッと飲み干した。



「ーーあぁ!?」


「ヤンキーみたいな叫び声だな、、、。」



ゲシゲシッ


飲み干した後は頬を膨らませながら足を踏まれつづける。

はっはっは、んなもん痛くも痒くもねぇわ。



「・・・今度から勇者様って呼んであげますね。」


「本当にごめんなさい! 調子乗りすぎました!」



こいつ、酷いくらいのカウンターを隠し持っていやがった。

勇者なんて呼ばれたりしたらこの魔族領でも人族領でも致命的じゃねぇか!


俺が本気で謝ってきたことで溜飲が下がったのかミリアは腕を組んで鼻を鳴らした。


それを見てオババはおもしろそうに笑い、それに釣られてスイとトイスも微笑んでいる。

全く、人が謝ってるところを笑うなんて最低だな。



「じゃあ、よろしく頼んだよ。2人とも。」



俺とミリアが取っ組みあってる中、微笑みながらこちらを見つめるオババ。その目には決して嫌悪感や否定的な感情は存在せず、ただただ優しく見守ってくれていた。



「・・・おう、致し方なくな。」


「・・・・・・・・・・・・・え、私も?」



最後のミリアの呟きは完全に無視され、この場はお開きとなったのであった。




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